もし日本銀行の「インフレ率2%」が実現したら嬉しいのは誰?
ファイナンシャルフィールド / 2019年3月23日 11時15分
![もし日本銀行の「インフレ率2%」が実現したら嬉しいのは誰?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_39911_0-small.jpg)
日本銀行のホームページには『2013年1月に、「物価安定の目標」を消費者物価の前年比上昇率2%と定め、これをできるだけ早期に実現するという約束をしています』とあります。 つまり、日本銀行は「インフレ率2%」を目標に掲げているのですが、この目標の実現を心から望んでいるのは、どこのどなたなのでしょうか?
日本銀行の目標が実現したら、私たちの預貯金は目減りする?
今、マイナス金利の影響で、私たちの預貯金はとんでもなく低空飛行な利率になっています。つまり、「預貯金では、お金が増えない」ということです。
その一方で、日本銀行は自らの目標、すなわち「物価を2%上げる」ために「マイナス金利を導入した」と言っています。なので、「預貯金では、お金の額面(=金額)は守られても、お金の実質的な価値は目減りする」のです。
ところで、預貯金にナンで利息が付くの?
読者の皆さんは、「銀行にお金を預ける」という感覚だと思いますが、「預けている」わりに「保管料」のようなものは要求されませんよね(最近では、さまざまな付加サービスを提供する代わりに手数料を取る預金もありますが)。
保管料を取られないどころか、利率によるホントにわずかな「利息」が預貯金に付くことがあります。銀行にお金を預けると、なぜ利息が付くのか、考えたことはありますか?逆に、「利息を払う」時って、どんな時でしょう。お金を借りると、利息を付けて返しますよね。
実は、銀行にお金を預けるのは「(皆さんが)銀行にお金を貸し付けている」ことになるのです。だから、利率による「利息」が預貯金に付くのです。
ところで、日本一、お金を借りているのは誰?
芸能人が「実は巨額な借金を抱えていたが、〇年で全額返済した」というニュースが、たまに流れることがあります。今、日本で一番お金を借りているのは、他ならぬ日本政府でしょう。
日本政府は国債を発行することで、お金を借りていますね。そして、マイナス金利の導入のおかげもあってか、日本政府は超低空飛行な利率か、ゼロ金利でお金を借りることができるようです。
ところで、日本政府は借りたお金をキチンと返しているのでしょうか?ニュースを聞いている限りでは、日本政府の借金の残高は減るどころか、どんどん増えているような気がします。
デフォルト
国債を発行することでお金を借りた国の政府が、「借金を返せません!」と宣言することを「デフォルト」と言います。
「え、政府が借金を返せない、なんてことがあるの?」と思う方もいらっしゃるでしょう。日本政府は過去にデフォルトを起こしたことはありませんが、例えばアルゼンチン政府は2001年と2014年に、ギリシャ政府は2015年にありました。
日本ではデフォルトが起きることなど無いようにしていただきたいものですが、日本政府の借金は減る気配すら感じられず、どんどん増えていますよね。
ここで、おさらい
ここで、先述の「日本銀行の目標の実現」の話を思い出してください。日本銀行の目標は「物価を2%上げる」ことでした。そして、日本銀行の目標の実現のために「マイナス金利を導入した」のです。
その結果、私たちの「預貯金では、お金の額面(=金額)は守られても、お金の実質的な価値は目減りする」ことになります。そして、銀行にお金を預けるのは、私たちが「銀行にお金を貸し付けている」ということなのだとお話しました。
いかがでしょうか?ここまで、お読みいただいて、ピンと来ましたか?
政府にしかできない(?)借金の返し方
日本銀行のマイナス金利とは、「(日本政府が国債の発行を通して)お金を借りやすく」し、「物価を上げることで、お金の価値を目減り」、つまり「日本政府の借金の残高も目減りさせる」ことにもなるのです。
もし、日本銀行の「物価を2%上げる」という目標が20年に渡り、毎年、実現したとしましょう。1万円の額面(=金額)は、20年後も1万円です。でも、1万円で買い物することができる範囲は、20年後には「今の価値」で6729円になってしまうのです。これがお金の価値の目減りです。
日本政府が20年満期の1万円の国債を発行したとします。マイナス金利の今ですから、20年の間に払う利息、利率は超低空飛行かゼロでしょう。そして、20年後に1万円の額面で返済するとしても、実質的には6729円の返済でOK、ということになるのです。
「もし日本銀行のインフレ率2%が実現したら嬉しいのは誰ですか?」の答えは、少なくとも本稿の読者の皆さまご自身では無さそうですね。
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
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