住まいを考える時に、総支払額の比較より重要な判断材料とは
ファイナンシャルフィールド / 2019年3月28日 10時20分
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憩いの場である住まい。あなたは賃貸派ですか?それとも購入派ですか? 住まいに関する費用が高額であることを考えると、判断が難しい問題です。一定の前提条件を設けて、賃貸の場合と、購入の場合の総支払額を比較するだけでは、満足のいく回答は得られないでしょう。 より的確に判断するには、住宅価格の変動の背景にある構造的要因や、経済政策に目を向けることがポイントと考えます。
住まい選びを的確に行うには?
「人生100年時代」と言われる中、豊かで満ち足りた人生を支えるのは、健康とお金と言えるかもしれません。病気、ケガ、介護に備えた資金や、老後資金の準備を考えると、住まいにかけるお金にも限度があります。
住まい選びの指南書では、賃貸の場合と、購入の場合の総支払額を比較していることが多くありますが、前提条件となる家賃やローン金利、諸費用などの不確実性によって、どちらが優位かはまちまちです。
無論、総支払額の比較だけではなく、その他のメリットやデメリット、将来的な自身のライフスタイルを勘案した住まい選びが求められます。これらを考えるうえで、住宅価格の変動の背景にある構造的要因や、経済政策に目を向ければ、より的確な判断が可能となります。
住宅価格変動の長期的な影響要因を重視
具体的には、住宅価格変動に影響を与える要因を短期、中期、長期の各視点から分析すると、自身のライフスタイルやステージに応じて、購入か賃貸かの判断材料が得られます。
短期的には、需給バランスや税制、銀行の融資姿勢、中期的には、日銀の金融政策や建築費、長期的には、人口・世帯数や働き方の変化、再開発を始めとする経済政策などが、影響要因となります。
中でも、購入か賃貸かの判断で最も重視すべきは、長期的な影響要因に関するものです。
働き方改革が住まいのあり方にも構造変化をもたらす
それではなぜ、長期的な影響要因である人口・世帯数や働き方の変化、再開発を始めとする経済政策などが、有効な判断材料となるのでしょうか。
まず、不動産市場における原理原則として、住宅の資産価値が上がる地域の条件は、流入人口の増加に加えて、商業的に新陳代謝が起こり活性化していることです。
しかし、そうした地域は、再開発などの後押しもある東京23区内や、コンパクトシティ計画が進展する一部の中核都市に限られることは、多くの市場データからも明らかです。
また、不動産業者側から見ると、こうした資産性の高い地域に加え、資産価値に占める立地のウエイトが高いマンションでなければ、ビジネスとして成立しにくいという現実があります。
こうしたことに鑑みて、この条件に見合わなければ、賃貸という選択肢が優先されるでしょう。ただ、資産性の高い地域の多くは、一般的なサラリーマンには購入しづらい水準まで価格が高騰しています。
今後のヒントとしては、政府が提唱し始めた働き方改革よって、ライフスタイルや住まいのあり方に大きな構造変化がもたらされる可能性があるということです。
長期的には賃貸を志向する人たちが増えていく
現在、働き方改革や、通信機器の進化に伴い、多くの企業でテレワークが導入され始めています。
テレワークとは、会社に来ることなく自宅やサテライトオフィス、コワーキング施設で仕事をするといった柔軟な働き方を指し、企業側にとっても、無駄なオフィス経費を削減できるメリットがあります。
こうした状況が進展していくと、住まい選びの価値基準が、現在の「職住近接」優先から、「環境や教育、経済的な暮らしやすさを重視する」形に変わってくると思われます。
そうなれば、人口減少で全国的な不動産価格の下落基調が続くと予想される中、資産性が高いながらも高額な住まいを購入する必然性は、今より確実に薄れていくと予想されます。
また、賃貸における家賃は、消費者物価指数及び給与との相関性が高く、生活に急激な悪影響を及ぼす可能性は低いことが考えられます。
その点も勘案すると、長期的には「環境やライフスタイルの変化に合わせて柔軟に対応できる」賃貸のメリットを志向する人たちが着実に増えていくと思われます。
執筆者:青沼英明(あおぬま ひであき)
ハッピーライフ・未来ラボ代表、CFP(R)、日本証券アナリスト協会検定会員、 宅地建物取引士、 トータル・ライフコンサルタント(生命保険協会認定FP)、第1種証券外務員
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