不動産投資を考える際のポイントと失敗事例
ファイナンシャルフィールド / 2019年4月4日 9時45分
資産運用にはさまざまな方法があります。その中でも近年、良くも悪くも注目が集まった不動産投資。不動産投資には魅力もありますが、失敗すると大きな損失になることもあります。 ここでは、不動産投資を考える際のポイントを失敗事例も交えてお伝えしたいと思います。
不動産投資の魅力とは
不動産投資は投資手法の一つであり、大きく二つの収益が得られる可能性があります。ひとつは「キャピタルゲイン」、もう一つは「インカムゲイン」です。
「キャピタルゲイン」
不動産投資でも株式投資などと同様、買ったときよりも高い値段で売却できれば「差益」を得ることができます。これが「キャピタルゲイン」です。
バブルがはじけるまでは「不動産は上がり続ける」という不動産神話が信じられていました。この頃は「投資しないほうがおかしい」と言われるほどの状況。
しかし、当時は金利も高く、銀行に預けていても年利5%くらいの利息がついたことと、不動産投資にはある程度自己資金を投じる必要もあったため、一般の人は不動産投資にはほとんど参入しませんでした。
「インカムゲイン」
不動産投資は「大家さんになる」ということです。大家として、入居者から得る「賃料収入」が「インカムゲイン」です。株式投資の「配当収入」と似ています。
厳密には、賃料として得られる収入から、不動産取得時にかかる不動産取得税や登記のための登録免許税、印紙税、毎月かかる管理費や修繕維持費、借入金の返済(元本+利息)、毎年かかる固定資産税などを差し引いた残りがインカムゲインでの収益となります。
景気の変動に強い
住宅の賃料は景気の影響をあまり受けません。約10年前のリーマンショックの時、株価は約1.5ヶ月で40%以上も下げましたが「家賃が4割下がった」などという話は聞いたことがありません。
不動産の場合、貸主と借主との間で2年ないし3年程度の契約を締結しており、物件によって契約期間がずれています。
底堅い周辺相場も形成されており、短期間の景気変動には影響されにくいと考えられます(事務所など、企業を相手にする不動産の場合には企業業績の影響が広がり、空室が増え、結果として数年で大きく下落することがあります)。
不動産投資の大きな魅力は、「軌道に乗れば、長期間安定的に収益を得られること」だといえます。
相続税対策として
相続が発生した時、投資用不動産は一定条件の下、実勢価格よりも低い「相続税評価額」で計算します。相続税はこの評価額を積み上げた資産の総額を元に算出するため、現金で持っているよりも圧縮が可能になり、相続税額を低く抑えられます。
一時期話題になった「タワマン節税」はタワーマンションの特に上層階で実勢価格と評価額の差が大きいことを利用した節税策です。
生命保険の代わりになる
個人で不動産投資をする場合、多くの人が「アパートローン」などの融資を受けます。この際、住宅ローン同様「団体信用生命保険(団信)」に加入します。
ローン返済期間中にローンの借主が亡くなられた場合、残債を生命保険から返済する保険ですので、借入金はなくなりますが、不動産は相続人に相続されます。相続人のそれ以降の返済はなく、賃料収入は得られることになり、生活費などに充てることができます。
不動産投資の失敗事例
不動産投資では「立地」の選定は非常に重要です。「立地選定」でのポイントは「周辺の状況」です。
交通機関や生活利便施設の状況だけでなく、住環境、周辺に住む人たちの属性から考えられる入居者像がイメージできること。周辺の競合物件の数の推移、賃料相場、災害予測(地震、津波、火災等)など様々なチェックポイントがあります。いくつかの失敗事例を見てみましょう。
物件価格が周辺相場よりも高かった…
■2500万円で購入したワンルームマンション。購入後よく調べてみると周辺の同様の条件のマンションの相場は2200万円程度だったという事例。
投資用不動産の場合、物件の価格よりも利回り(投資資金に対しての収入の大きさ)の方が重要になってきます。
例えば、2500万円のマンションで家賃が10万円/月だった場合、表面利回りは
10万円/月×12カ月=120万円(年間賃料)
120万円/2500万円=4.8%(表面利回り)
となります。
もし、賃料が下がってしまった場合は利回りも悪化します。
あまり収益が上がらないから売ろうと考えた場合、物件の周辺相場並みの2200万円でしか売れない可能性が高いでしょう。短期間での売却の場合、ローン残債が売却価格よりも高いことも想定され、追加でお金を払わないと売ることもできません。
結局、しばらくの間持ち続けるしかない状況になってしまっています。
新築も一度人が住めば中古
■新築の投資用ワンルームマンションを購入したが、2年で入居者が退去。次の入居者がなかなか決まらず、家賃を下げてやっと決まったが、キャッシュフローが悪化してしまった事例。
新築の場合、周辺相場よりも高い賃料での入居者募集が可能なことがあります。ワンルームマンションやアパートでは新築に人気が集まるため、強気の賃料設定が可能です。
しかし、保有しているうちに住人が入れ替わることもあります。一度退去すると次に入居者を募集するときには「築○年の中古」。近くに同じような条件の新築があれば、そちらから埋まるでしょう。
周辺に空室が多いエリアでは次の入居者が決まるまでに時間がかかる可能性も高くなります。結果として、しばらく入居者が決まらない、家賃を下げないと入らないということも起こります。
新築の物件を購入する場合も周辺の適正な賃料相場を確認しておくことが必要でした。
サブリースなら安心?
■サブリース契約から2年後、賃料改定となり、収益悪化。キャッシュフローがマイナスになった事例。
入居者が抜けると賃料収入がなくなりますが、ローンの返済はあり、支出だけが増えていくことになります。サブリースの場合、サブリース会社と賃貸借契約を締結し、入居者が抜けている期間も賃料が支払われるため、空室リスクを回避できます。
ただし、サブリース会社は入居者が支払う家賃から1割ないしそれ以上のサブリース手数料を引いた残りを家賃として大家さんに支払いますので、収益は下がります。
さらに気を付けなければならないのは、サブリース会社との契約には賃料見直しに関する条項が入っているのが一般的です。見直しの時期は通常、2年程度毎に設定されています。
賃料見直しに合意できない場合は、解約になることもあります。契約内容によっては合意できなくても解約できない内容になっているケースも見受けられます。
仮に契約解除できる場合でも、入居者との契約を大家との直接契約に変更する手間や、その後の賃料収受の方法の変更、物件の清掃やその後の入退去管理をどうするかなどについても検討する必要があり、かなりの手間がかかることが予想されます。
周辺の賃料状況や予測などをしっかり行わなかったのが失敗でした。
まとめ
ここにお伝えした以外にもさまざまな失敗事例があります。
不動産は文字通り、動かせない資産ですが、流動性が低いという側面もあります。軌道に乗れば、長期間安定して収益が得られますが、物件の立地を含めた「個性」を見誤ると大きな損失を生む可能性もあります。
投資は「自己責任」が基本。
特に不動産投資では、借り入れができるメリットはありますが、借り入れを含めると多額の資金を投入することになるため、しっかり勉強し、比較し、検討することが重要です。
執筆者:西山広高(にしやま ひろたか)
ファイナンシャル・プランナー。宅地建物取引士。
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