「はたちになったら、国民年金の手続きを忘れないでね」手続きを忘れるとどうなる?
ファイナンシャルフィールド / 2019年4月11日 23時30分
![「はたちになったら、国民年金の手続きを忘れないでね」手続きを忘れるとどうなる?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_41600_0-small.jpg)
4月は多くの大学や専門学校で入学式が行われ、初々しいスーツ姿の若者を目にします。そんな姿を見ると、「はたちになったら、国民年金の手続きを忘れないでね」と一声かけたくなります。 20歳の誕生日を過ぎて、国民年金の手続きをしていないと、大変な悲劇を招く可能性があるからです。ほとんどの人はそのことを知らずに、つい「うっかり」危険な状態になっています。
はたちになったら、国民年金
2022年4月から、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられます。ただ、国民年金への加入は、今までと同じ20歳からで変更はありません。
高校を卒業してすぐに就職した人は厚生年金に加入しますので、20歳になった時点での国民年金加入の手続きは不要です。厚生年金に加入しているということは、同時に国民年金にも加入していることになります。
一方、お勤めではない人、つまり学生や無職の方などは、20歳になった時点で国民年金に加入しなければなりません。アルバイターなど、勤めていても勤務先の社会保険に加入していない人も同様です。そして、原則として毎月、国民年金保険料の支払いが必要になります。
収入がなくて支払いが難しい人には、保険料を支払わなくても済む制度があります。学生であれば「学生納付特例」、それ以外の人であれば「免除」や「納付猶予」が適用されます。いずれも申請の手続きが必要です。
たいていは手続きさえしておけば保険料を払わなくても済むのに、それをしていない人が多くいます。20歳前後の人が、「老後に年金をもらうための手続き」と言われても、ピンとこないのでしょう。
20歳の誕生月に、自宅に書類が届いても、そのまま放置してしまったり、ダイレクトメールと思って捨ててしまったりする人は少なくありません。役所から書類が届くという経験すら初めてのことですので、無理もありません。振り返れば、私もそうでした。
ところが、それが大きな悲劇を招くのです。
2ヶ月間放置しただけで…
「年金額が少なくなり、老後の生活に影響がある」という問題ではありません。障害年金の受給ができなくなる可能性があるのです。
事故などで障害を負い、働けなくなった際に生活を支えてくれるのが障害年金です。年額約78万円、障害が重い場合は約98万円が、障害状態が続く限り受け取れます。この年金を受け取るには、障害の状態以外に、国民年金の保険料を払っていた、という条件があります。
具体的には、次のどちらかを満たす必要があります。
(1)20歳から、事故や病気で初めて医師の診察を受けた日の前々月までの期間の2/3以上の月で保険料を払っていた。
(2)事故や病気で初めて医師の診察を受けた日の前々月までの1年間に保険料の滞納(未納)がない。
いずれも、学生納付特例や免除などの申請手続きをして、適用されれば保険料を払ったのと同じ扱いになります。20歳の誕生日が過ぎて2ヶ月ほど、保険料を払わずに、学生納付特例や免除などの手続きもしていなかったとしましょう。
すると、「事故や病気で初めて医師の診察を受けた日の前々月までの期間」のすべてにおいて保険料を払っていないので、(1)に該当しません。「事故や病気で初めて医師の診察を受けた日の前々月までの1年間」に滞納(未納)があるので、(2)にも該当しません。
よって、障害年金は支給されないということになります。「事故や病気で初めて医師の診察を受けた日の前々月まで」としているのは、事故や病気になってから取り繕うことができないようにするためです。
年金制度は、実は冷たい
年金制度は国の社会保障のひとつですが、極めて冷酷です。いくら悪意はなかったとしても、手続きもせずに保険料を滞納している人には情け容赦がありません。
20歳から65歳までの45年間、障害年金を受け取ると、3500~4300万円にもなります。それがいっさい手にできないことになります。
ほんの数ヶ月の「ついうっかり」など誰にでもあることで、それだけで「手続きをしていないあなたが悪い」と情状酌量の余地すらないのは、国の制度としてどうなのか、と私などは疑問に思います。しかし、現状では見直しの議論すらありません。
今までは20歳になったら、「国民年金の加入手続き」と「保険料の支払い、または支払えないという申請の手続き」の2段階の手続きが必要でした。
2019年10月からは「加入手続き」が廃止される予定です。ただ、「保険料の支払い、または支払えないという申請の手続き」をしていないと、悲劇が起きかねないことには変わりありません。
20歳の若者が年金の手続きの重要性を理解できないのは、無理もありません。ここは、「もう大人になったのだから」と本人任せにせず、手続きをするように親がサポートしたいものです。
執筆者:村井英一(むらい えいいち)
国際公認投資アナリスト
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