フィンテックは私たちの生活をどう変えるか(1)キャッシュレス決済の未来
ファイナンシャルフィールド / 2019年4月17日 9時0分
フィンテック(FinTech=「Finance(=金融)」と「Technology(=技術)」をつなぎ合わせた造語)という言葉は聞いたことがあると思います。 フィンテックはインターネットやスマートフォン、AI、ビッグデータなどを用いたお金の世界の技術革新。これまでの金融の世界を塗り替えてしまうような大変革が起きようとしています。 フィンテックによって我々の生活にどのような変化が起きようとしているのでしょうか。フィンテックの現状と今後の展開を予測するとともに、フィンテック後の未来に向けて、我々が備えなければいけないことについて考えます。 今回は第1回として、現状把握とキャッシュレス決済に焦点を当てたいと思います。
すでに始まっているフィンテック
まず、日本におけるフィンテックの状況に簡単に触れたいと思います。すでにフィンテックは我々の生活に様々な形で浸透しつつあります。フィンテックの基本的な考え方は「ITを駆使して、世の中を便利にしよう、金融を身近なものにしよう」というもの。
すでに使われ始め、比較的身近になってきたフィンテックサービスとしては、
・キャッシュレス決済
・ロボアドバイザー
・クラウド家計簿・帳簿
・仮想通貨
などがあります。
聞いたことがある、知っているという人も多いでしょう。すでにいくつかを利用しているという人もいらっしゃるのではないでしょうか
この他にも、
・スマートフォン専業証券会社
・AIファンドマネージャーによる運用
・クラウドファンディング、ソーシャルレンディング
などがすでに浸透しつつあります。
キャッシュレス決済・送金の現状
フィンテックを最も身近に感じられるのが「キャッシュレス決済」でしょう。すでになじみの深いICカードのほか、最近ではスマートフォン決済が浸透しつつあります。
ICカードで現在普及している主なものは、交通系ICカードのSUICA(JR東日本)、PASMO(関東圏私鉄系)、ICOCA(JR西日本)など。
流通系ICカードのnanaco(セブンアンドアイHD)やWAON(イオン)など。その他にiD(docomo)の様な携帯電話会社系やQUICPay(JCB)、楽天Edy(楽天)などがあります。
最近はこうしたICカードもスマートフォンアプリと連動し、カードを使わなくても利用できるものが増えてきました。使用履歴によってポイントが貯まるなど、様々な工夫がなされています。
例えば、JR東日本のSUICAはVIEWカードと連携するとオートチャージによるポイントが3倍になるなどの特典があります。
買い物や、定期券購入でもポイントが付きますので、普段通勤でJR東日本を使う方や、出張で東京と東北方面を新幹線で移動される機会の多い方などにはとても便利だと言えそうです。
さらに、最近はスマートフォン決済も増えてきました。「Apple Pay」や「Google Pay」のほか、「LINE PAY」、大型キャッシュバックキャンペーンで話題になった「Pay Pay(ソフトバンク、Yahoo)」、この4月からはauも「au Pay」携帯がサービスを開始しました。
その他にも「楽天pay」や「メルペイ(メルカリ)」「Origami Pay」などのサービスが立ち上がっています。
他国に比べ遅れているキャッシュレス化
日本では他国に比べ治安が良いことや、紙幣の印刷技術などが優れていることによって偽札が少ないこと、金融機関の店舗やATMなどの設置台数が多いことなどから、他国に比べキャッシュレス決済への移行が遅れているといえます。
普及が進んでいる中国や北欧では、ほとんどすべての店でキャッシュレス決済が可能になり、現金が使えない店も増えているといいます。
キャッシュレス決済の魅力
キャッシュレス決済に切り替えるとどんなメリットがあるのでしょうか。
これまでもクレジットカードなどを使えば現金が不要なシーンはありましたが、最近の多くのキャッシュレス決済は少額から気軽に使えます。小銭がほとんどいらなくなり、決済がスムーズになります。
また、お金の入出金について履歴を自動的に管理することができ、自分自身の消費行動の傾向などの分析にも役立つようになると考えられます。
クレジットカードはスキミングなどによって情報が流出し、悪用される恐れがありました。ICカードは相手に手渡す必要がないため、スキミングのリスクはありません。
また、紛失した際には利用を停止し、記名式のカードであれば、再発行とともに以前の残高を新しいカードに移行することも可能(手数料は必要)で、安全になっているといえます。
また、決済(支払い)機能だけでなく、送金機能が付加されているものが増えています。まだ送金に対応していないものも今後対応できるようになりそうです。送金できるようになると、個人間での立替や少額の貸し借り、割り勘などが容易になります。
ICカードやスマホ決済が普及すると、お金をおろすために銀行やATMを探す必要がなくなるのも魅力でしょう。
キャッシュレスの今後
今後、日本でもキャッシュレス決済は確実に浸透していきます。現在、大手企業からベンチャーまで様々な会社がサービスの提供を始め、各社は利用者や利用可能店舗数を増やし、主導権を取ろうと争っている状況です。
現在のサービス乱立の状態では、あまりにも数が多く、利用者は「どのサービスが使えるのか」で戸惑い気味です。数年のうちにいくつかのサービスが淘汰や統合され、最終的には数社に絞られるのではないかと私は考えています。
「財布を持ち歩かなくてよい未来」が数年後には訪れるでしょう。
日本では個人情報の管理が厳しいことが普及のハードルになっています。また、日本人の文化として、様々なシーンで現金を使います。最近は神社のお賽銭も電子決済、というところもあるようですが、やはり、キャッシュの需要はあるでしょう。
結婚式の「祝儀」や通夜・告別式での「香典」、正月に子や孫にあげる「お年玉」など、電子決済にはなじまない文化もあります。「現金を全く使わない世界」はそう簡単には実現できないと思います。
執筆者:西山広高(にしやま ひろたか)
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役
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