給与明細を通して、会社の「フリンジ・ベネフィット」を考える
ファイナンシャルフィールド / 2019年4月24日 9時15分
新年度が始まりました。新入社員の方々は社会人への第一歩。何もかも学生時代とは異なります。その一つとして、「給与をもらうこと」があります。働いて報酬をもらうこと自体は、学生アルバイトで経験済みと思います。 しかし、毎月コンスタントに給与や各種手当をもらい、税金や社会保険が引き去られ、有給休暇の権利が与えられ、本格的に社会のサイクルに組み込まれることになります。 それを端的に表しているのが、皆さんが毎月もらう給与明細です。これを見ると、社会のサイクルに巻き込まれるということが、どういうことか見えてきます。 休暇制度、各種手当、補助金、給付金などの、企業が従業員に提供する給与以外の経済的便益を「フリンジベネフィット」と言います。今回は給与明細を通じて、会社のフリンジ・ベネフィットについて考えてみます。
給与明細表の構成
給与明細は次の構成になっています。下の給与明細サンプルをご覧ください。
1.勤怠
2.給与
支給額
控除額(引去額)
精算・給付金
「勤怠」「手当」「給付金」を見ると企業の従業員への待遇が見えてくる。
勤怠には次の項目があります。
労働日数―契約上、その月に出勤すべき日数
出勤日数―上記うち、実際に出勤した日数
有給休暇日数―有給休暇を使用した日数
慶弔休暇日数―慶弔休暇を使用した日数
欠勤日数―欠勤した日数
遅刻回数―遅刻した回数
早退回数―早退した回数
それ以外に時間外労働時間が記載されます。企業には法定の「年次有給休暇制度」があります。すなわち企業は、労働者に対して、給与を支払いながら年間に一定の日数の休暇を与えることを義務でづけられています。
いわゆる正社員(雇用主と契約した労働日数が週5日以上、または契約した労働時間が1週間30時間以上)として働く労働者に対しては、以下の通り最低10日の年次有給休暇が与えられ、勤続年数が増すごとに日数がふえる仕組みになっています。
継続勤務年数 法定最低付与日数
0.5年 10日
1.5年 11日
2.5年 12日
3.5年 14日
4.5年 16日
5.5年 18日
6.5年以上 20日
これに対し、慶弔休暇は法定休暇ではないので、企業によって、あったりなかったりします。慶弔休暇は本人の結婚、二親等以内の親族が亡くなったときに休暇が取れる制度です。1日から5日程度で設定している企業が多いようです。
これに対し、欠勤日数は、有給休暇や慶弔休暇を使わずに欠勤した日数です。これは、遅刻日数や早退日数と同様、給与の減額の対象になります。
企業によっては病気休暇を与えているところもありますが、そうでなくても病気で休む場合は有給休暇を使うことができるので、通常は、給与が減ることはありません。
時間外労働時間は、勤務時間以外の労働(通常日の残業および休日出勤)です。働いた時間数に応じて、時間当たり割り増しの賃金が支払われます。
手当とは何か
手当とは基本給に加えて、支払われる追加の給与です。具体的には、扶養手当、単身赴任手当(別居手当)、役職手当、その他手当があります。これらは企業の就業規則によるので、どの企業でも支給されるとは限りません。
扶養手当―扶養親族(専業主婦・子供など)の人数に応じて支給されます。
単身赴任手当(別居手当)―社員が転勤により単身赴任をせざるを得ない場合に支払われます。
役職手当―課長、部長等役職について場合に支払われる手当です。役職者になると基本給が上がるだけでなく、手当もつくので、給与は二重に上がることになります。
その他手当には、例えば、海外駐在員手当があります。駐在員になった場合、海外勤務でいろいろな負担がふえるために支給される手当です。
各種補助金・各種給付金とは?
休暇・手当以外にも、会社には各種補助金・給付金があります。これも項目も補助の度合いも企業によって異なります。
住宅関連
住宅補給金 転勤などにより、本来の住居地域以外に住む場合に家賃の補助として支給されます。
利子補給金 住宅ローンで住宅を購入した場合、住宅ローンの利子を一部補填する制度です
独身寮・社宅使用料 独身寮や社宅に住む場合に会社に支払う費用です。その費用は個人で賃借する場合より安く設定されているので、実質的に会社の補助を受けることになります。
財産形成
社内持株会 自社の株を市場価格より安い価格で、かつ小さい単位で購入することができる制度です、毎月一定額を購入するので株価が下がり続けない限り利益が出るチャンスがふえます。
見舞金等 結婚祝金、出産祝金、傷病見舞金、親・配偶者などが亡くなった場合の死亡見舞金があります。
レクリエーション・自己啓発
会社専属の福利厚生代行会社を通じて、旅行の際のホテル代、スポーツジム費用、自己啓発のための各種講座費用の一部を補助する制度です。
提案褒章
会社のために役に立つ提案をした従業員に対し支給される褒章金です。
まとめ
企業は、従業員に快適に働いてもらう、または、その家族に快適に生活してもらうことで、彼らの勤労意欲を向上させ、会社の業績の向上を図るために従業員に各種のフリンジベネフィットを提供しています。
働く側から見れば、フリンジ・ベネフィットは第二の給与というべきものです。そのため、給与だけでなく、フリンジ・ベネフィットのいい企業に勤めることを目指すべきでしょう。
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
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