「財形貯蓄制度」は役割を終えた? サラリーマンの資産形成の変化
ファイナンシャルフィールド / 2019年4月29日 9時15分
サラリーマンにとって、給与から天引きされて貯蓄形成ができる「財形貯蓄制度」は、使い勝手がよく認知度の高い制度であります。私自身、サラリーマン時代には、財形貯蓄制度を利用して住宅取得の頭金にしたり、年金の足しにすべく積立てを行ったりしていました。 しかしながら、昨年に財形年金をすべて途中解約し、投資信託での運用に変更しました。その理由は、財形貯蓄制度はその役割を終えたと考えたからです。 今回は、長きにわたってサラリーマンの資産形成に役立ってきた「財形貯蓄制度」が、なぜその役割を終えたと考えられるのかについて紹介してまいります。
財形貯蓄制度とは
財形貯蓄制度とは、「勤労者財産形成促進法」に基づいて導入された、勤労者が財産を形成するための制度です。
「一般財形貯蓄」「財形年金貯蓄」「財形住宅貯蓄」の3種類があり、勤労者のライフイベント(結婚、マイホーム購入、教育、老後など)で必要となる資金づくりを支援しています。
財形貯蓄制度のメリットは
財形貯蓄制度のメリットは、主に下記の3つがあります。
(1)「財形年金貯蓄」「財形住宅貯蓄」は、使途が限定されるために税金面で優偶措置があり、両方合わせて元本550万円までの利子が非課税になる。
(2)給与天引きであるために、知らず知らずのうちに長期積立て貯蓄を行うことができる。
(3)住宅取得の際に、融資を受けられる。
メリットではなくなった
私が、財形貯蓄制度が役割を終えたと考える理由は次の3つです。
(1)非課税メリットがなくなった
一番大きなメリットであった利子の非課税制度ですが、低金利の現在ではそのメリットを享受することができなくなりました。1990年代までは、預金金利は1%以上ありましたし、公社債投資信託はさらに高い利回りを享受することができました。
しかしながら、日本銀行が2016年2月から取っているマイナス金利政策、そして同年9月からは10年物国債利回りをゼロ%程度で推移させる金融政策が取られているため、預金金利はほぼゼロとなるばかりでなく、公社債投資信託は元本割れする異常な状況となってしまいました。
すなわち、預金での利子収入はなく、公社債投資信託は貯蓄額が目減りするという状況下で、利子非課税はまったく無意味なものとなってしまったのです。
(2)収益非課税の長期積立て貯蓄の手段は他にもある
つみたてNISA制度が、平成30年から開始されました。この制度は、少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度です。勤労者でなくても日本に住んでいる20歳以上の方なら誰でも利用することができ、着実に普及が進んでおります。
財形貯蓄制度と同様に、収益に対しては非課税であり、毎月指定銀行口座からの自動引き落としとなるので、知らず知らずのうちに長期積立て貯蓄を行うことができます。
運用商品は元本が確保されていない投資信託となりますが、財形貯蓄制度で利用できる投資信託よりは、投資信託保有にかかるコストがかなり低く設定されています。また、勤務先によっては個人型確定拠出年金に加入することも可能で、給与天引きを利用できます。
(3)住宅融資は他にもある
財形制度を利用した融資の平成31年4月1日現在の融資金利は0.64%で当初5年間固定、その後は5年経過ごとに見直されます。同様の住宅ローンはさらに低い金利を提示しているネット銀行など多くの金融機関があり、その優位性は失われています。
財形貯蓄制度の利用をどうすべきか
投資経験のない会社員が、会社を通じてほぼ自動的に天引きで積立ができる点は、財形貯蓄制度のメリットです。しかし、これから財形貯蓄制度を利用しようと考えている方は、自分にとって利用するメリットがあるかどうかを確認する必要があります。
一番難しいのは、私のように500万円を超えるほどの貯蓄残高があり、積立てを休止、あるいは最低積立額で利用している方です。
投資経験のある方は、解約して投資信託などで資産運用すればよいのですが、ない方は資産運用に詳しいファイナンシャルプランナーに相談して資産運用を始めるか、そのまま財形貯蓄を塩漬けするなどの選択を迫られると思います。
財形貯蓄制度にメリットを感じない方は、他の手段での長期積立て貯蓄を検討しましょう。
執筆者:加藤啓之 (かとう しげゆき)
FP横浜オフィス加藤 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、1級DCプランナー
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