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自転車を盗んだ犯人から自転車の修理代金を請求された。これって払うべき?

ファイナンシャルフィールド / 2019年4月29日 10時40分

自転車を盗んだ犯人から自転車の修理代金を請求された。これって払うべき?

民法においては占有と所有を概念として区別し、定めています。所有している人と専有している人が異なることで、どのような問題が起きるのでしょうか。今回は、物に対する所有と占有、その違いからくるお金についてのお話です。  

自転車を盗んだ犯人から修理費用を請求された

Aさんはある日、いつも使っている自転車を盗まれてしまいました。後日自転車を返してもらうことになったのですが、その際、自転車を盗んだBさんはこう言いました。
 
「あなたの自転車はライトが壊れていたので、それを修理しました。その修理費払っていただけませんか?」
 
勝手に自転車を利用した挙げ句、断りなく修理までし、そのうえお金まで請求してくる犯人に対し、Aさんは憤慨し次のように反論しました。
 
「君は自分勝手すぎる。人の所有する自転車を勝手に使用したうえ、勝手に修理してそのお金まで請求するなんて許されないだろう」
 
それに対し、Bさんも修理費を出したのだからと一歩も引きません。この場合、どちらの主張が認められるのでしょうか。
 

所有権?占有権?

まず、結論に入る前に占有権と所有権について簡単に知っておきましょう。所有権とは、法律の範囲内において、物を自由に使ったり処分したりすることのできる権利です(民法206条)。本事例における自転車の所有権は、所有者であるAさんにあります。
 
次に、所有権とよく似た権利として占有権があります。占有権は、ある物に対する事実上の支配状態から生まれる権利であり、所有権とは別物です。占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することで発生する権利です(民法180条)。
 
所有権と占有権はそれぞれ別個の権利です。所有権と占有権は同時に、かつ、それぞれ別の人に成立することもあるのです。では、これらの前提知識をもとにして、結論をみていきましょう。
 

Aさんは修理費を払わなければならない

本事例におけるAさんは、Bさんに対し、自転車の修理費を支払わなければなりません。なぜなら、自転車の所有権は持ち主であるAさんにあるものの、自転車を盗んだBさんには占有権があるからです。
 
占有権は物を支配している事実状態から生まれる権利です。支配している状態が盗みなど不法な行為によって発生した場合であっても、占有権は発生します。
 
そして、占有者は次の条文によって、占有物を返還するとき、その物について支出した必要費(修理費など保存のために支出したお金)を請求することができると規定されています。
 
「民法196条1項 (占有者による費用の償還請求)
占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる(一部省略)」
 
上記条文を本事例に合わせて簡単に読み替えてみると、次のようになります。占有者であるBさんは、盗んだ自転車を返すとき、壊れたライトの修理費を持ち主であるAさんに請求することができる。
 
ただし、修理費を請求することができるとはいえ、自転車を盗むという行為が正当化されるわけではありません。
 
あくまで支払った修理費が請求できるというだけであり、盗んだことにより科せられる刑罰からは逃れることができません。Bさんは、窃盗罪により処罰されることとなります(刑法245条)。
 
他人の物を盗む行為は重大な犯罪行為です。民法上占有権が発生するとはいえ、それは許される行為ではありません。そのような行為は絶対にしないようにしましょう。 
 
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
 
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