仮想通貨から暗号資産へ、ビットコインと金の共通点
ファイナンシャルフィールド / 2019年4月28日 10時15分
3月15日、政府は仮想通貨のルール明確化と制度整備を目的とした資金決済法と金融商品取引法の改正案を閣議決定しました。 この改正案の中で「仮想通貨」の名称を法令上は「暗号資産」と呼ぶこととしています。 もともと海外では暗号通貨(Crypto-currency)と呼ぶのが一般的でしたが、20カ国・地域(G20)会議などでは暗号資産(Crypto-asset)を国際標準の表現として使い始めていることから、それに合わせた形となったようです。 インターネット上での価値保存のための資産としてビットコインを考えるとき、同じく価値保存としてのための実物資産である金との共通点を改めて見ていきたいと思います。
法定通貨との違い
円やドルなどの法定通貨は各国の中央銀行が発行する通貨です。それらは発行する国や中央銀行の信用の上に成り立って管理されています。したがって、法定通貨の価値はその国の信用と結びついているといえます。
これに対し、ビットコインも金も特定の国や組織に依存していません。人々がそれ自体に価値があると思うことによりその価値が決定されています。
そのため世界共通の資産といえます。また、金が「有事の金」といわれるのは、戦争などで国への信頼が揺らいだときの資産の逃避先として考えられているからですが、金と同じく特定の国や組織に依存しないビットコインも法定通貨の信用が揺らいだ際の逃避先となりえます。
実際、2013年にユーロ圏のキプロス共和国で「キプロスショック」と呼ばれる預金封鎖などの金融危機が発生した際には、預金封鎖前にビットコインに資産を移し替えた人たちが資産を守ることができたようです。
ビットコインと金の共通点
金がこれまでに採掘された総量は約16万トンといわれています。そして残りの埋蔵量は約5万トンと見込まれていることから、その総量は約21万トンとみられています。
このことが金の希少性を生み出しています。ビットコインもマイニングという手段を使ってインターネット上で採掘されています。
その発行総量は2100万枚と上限が決められています。そして現在約1700万枚(総量の約80%)が採掘済みとなっています。このように、ビットコインと金は総量が決まっているという共通点があります。
インフレが発生し物価が上がる国などでは自国通貨の価値が下がります。しかし、金もビットコインもその総量に限りがあることからインフレしないといわれています。
実際、ベネズエラは、経済政策の失敗によって通貨ボリバルの信用がなくなって物価が高騰(ハイパーインフレ)し、経済危機に見舞われていますが、ビットコインの取引量が増えているそうです。
その他の共通点として、「世界中で取引が可能で換金性が高い」「偽造ができない」「劣化しない」「分割してもその価値が変わらない」などがあげられます。
一方、金とビットコインにはいくつか違いもあります。金は宝飾や産業用貴金属として利用できますが、ビットコインはそのような利用ができないことや、ビットコインは資産を瞬時に移すことができて送金コストは安いが、金は運送コストや時間がかかるといった点です。
金の代替えにビットコインはなりうるか?
仮想通貨元年とも呼ばれた2017年、年初に約1000ドルでスタートしたビットコインは約2万ドル(約220万円)の最高値をつけましたが、その翌年には一転暴落し現在は約5000ドルとなっています。
このように短期で価格変動が大きいとまだまだ投機対象としてみなされ、資産としての投資対象とはなりにくいかもしれません。
しかし、金も過去には1980年に旧ソ連のアフガニスタン侵攻や冷戦の緊張により円価格で6495円の最高値をつけた後、2000年には円高もあり1000円台まで下げた歴史もあります。
その後、金価格は、米国同時多発テロが発生して米国と米ドルへの信頼が揺らいだことやITバブルが崩壊したことなどが、ドル建て資産から金への逃避が生まれ上昇トレンドに転換したといわれています。
そして、その上昇トレンドに弾みをつけたのが2004年に金ETFがニューヨーク市場に初めて上場したことがきっかけともいわれています。現在は5000円近い価格を推移しています。
2017年初頭までは個人間での話題が主だった仮想通貨ですが、下落に転じた2018年では企業や機関投資家の仮想通貨に関する話題は逆に増え続けているようです。今後さらに企業や機関投資家が参入していき法整備も進んでいく中、ビットコインETFの上場も期待されています。
金との共通性がいわれるビットコインも、金がたどった歴史を同じようにたどるのか注視していく価値はありそうです。
執筆者:小山英斗(こやま ひでと)
CFP(日本FP協会認定会員)
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