老後資金は早めに備える。「個人型確定拠出年金」のメリットと注意点
ファイナンシャルフィールド / 2019年5月9日 8時15分

定年まで働いて多額の退職金を受け取り、悠々自適なセカンドライフを送る。そんな夢物語は過去の話。今では退職金も自分で運用して受け取る時代です。 これからは、自分で資金を作っていかなければなりません。そのためにはしっかりとした知識を持って、自ら行動していく必要があります。
個人型確定拠出年金とは?
日本の年金制度は公的年金(いわゆる国民年金、厚生年金)が土台となり、企業や個人が任意で加入する私的年金がそれに上乗せされる形になっています。
今までであれば、企業が企業年金として独自で運用していた資金を、今後は従業員一人一人が運用していく時代となりつつあります。個人型確定拠出年金は私的年金の1つに位置づけられ、自ら掛け金を設定して運用を行い、将来の給付額は運用の結果次第というものです。
今後、公的年金だけでは十分な老後生活資金をカバーできず、60歳の時点で夫婦2人で80歳まで生きていくには、約3100万円の自己資金が必要になると言われています。そのような老後に備え、早めに自助努力を促す制度が、個人型確定拠出年金です。
個人型確定拠出年金の加入対象者範囲拡大
法改正により、これまで個人型確定拠出年金に加入できなかった専業主婦や公務員、そして企業年金のある会社員についても、2017年1月から加入できるようになりました。
企業型確定拠出年金実施企業の会社員は、企業型確定拠出年金規約で認められる場合で、マッチング拠出(企業型確定拠出年金において、加入者も一定範囲内で任意に、事業主の掛け金に上乗せ拠出すること)未実施の場合に限り、企業型確定拠出年金とあわせて個人型確定拠出年金に加入することも可能となり、この法改正によって、加入対象者は基本的に60歳未満全ての人となりました。
税制上のメリット
個人型確定拠出年金においては、掛け金の全額が所得から差し引かれるため、その分税負担が軽くなります。また、本来なら20%の課税となる分配金や金利等の運用益が非課税となります。
受け取りは原則60歳からで、一時金として受け取る方法と、年金として分割で受け取る方法、もしくはその組み合わせを選ぶ形があります。
一時金として受け取る方法を選んだ場合は、退職金とみなされ退職所得控除が適用されます。
この退職所得控除の計算式は、勤続年数が20年超の場合については「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」、20年以下の場合は「40万円×勤続年数」で計算されます。80万円に満たない場合は80万円です。
年金として分割で受け取る場合にも、公的年金等控除の適用があります。
これは、公的年金等の収入合計が65歳未満の場合は70万円、65歳以上であれば120万円までは非課税となる制度です。控除枠を超えると、その部分は課税対象となり、所得税や住民税および社会保険料に影響します。
勤務先の退職金や公的年金額等を考慮して、受け取り方法を決めることをお勧めします。
利用上の注意点
この確定拠出年金は、老後の資産形成を目的とした制度です。したがって、原則として60歳までは払い出しができません。これがこの制度のデメリットと言えるでしょう。
とはいえ例外はあります。例えば、あってはならないことですが、死亡した際はそれまで積み立てて運用した額が、ご遺族に一時金として支払われます。また、病気や事故などで身体障害者等級3級以上の状態になった場合は、一時金もしくは年金形式で受け取ることが可能です。
この個人型確定拠出年金を利用するには、1人につき1口座で任意に金融機関を選ぶことができますが、運用する商品のラインナップや口座管理手数料は金融機関によってさまざまです。
掛け金は月額5000円から1000円単位で決められ、年に一度変更が可能です。中断もできますが、中断しても口座管理手数料はかかり続けます。加入するのであれば、60歳まで毎月5000円以上の掛け金を継続して拠出できるかどうか、まずじっくり考えるようにしましょう。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者
一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー
住宅ローンアドバイザー
証券外務員
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