住宅ローンの繰り上げ返済で後悔しないために注意すべき3つのポイント
ファイナンシャルフィールド / 2019年5月11日 3時0分
![住宅ローンの繰り上げ返済で後悔しないために注意すべき3つのポイント](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_43095_0-small.jpg)
借金は、少しでも早く返済を終わらせたい、残債を少なくしたい、毎月の返済から解放されたい、利息を減らしたい…等々。日常生活の中でお金を借りることに慣れていない多くの人が、住宅ローンに対してこのような考えを持つことは、至って健康的な思考かもしれません。 住宅ローンを返済と並行して毎月コツコツ貯金をし、毎年数十万円ずつ繰り上げ返済に励んでいるという方もいらっしゃるでしょう。 また、貯蓄額が1000万円というひとつの大台を超えたタイミングで、そろそろガツンと繰り上げ返済を検討なさっている方もいらっしゃるかもしれません。 しかし、じつはこの『繰り上げ返済』、住宅ローンの早期返済や毎月の負担額軽減にとても効果的な一方、貯金が貯まったからという安易な状況判断での実行は非常に危険なことなのです。繰り上げ返済したことを後々後悔しないために、注意すべきポイントを見てみましょう。
ポイント(1) 緊急予備資金の確保はできていますか?
毎月の給料で住宅費や生活費、その他必要な支出をやりくりして、さらに貯金をする。その毎月のリズムの積み重ねの結果、貯まったお金が貯金です。だから、その貯金は余裕資金として繰り上げ返済に充てることは、一見間違ってはいません。
しかし、日常生活では何が起こるかわかりません。健康に気を付けながら一生懸命働いていても、何かの事態で毎月の収入が途絶える、減少するというリスクは、常に、誰にでも、あります。
そのような緊急事態時に支えになるのは、加入している保険でもなく、家族の愛情でもなく、現金、つまり『貯金』です。
このような緊急事態に備えて、毎月の生活費の最低半年分、できれば1年分は現金(=普通預金)で確保しておきましょう。ここで言う生活費とは、住居費(住宅ローン返済月額)、食費や日用品、保険料、携帯代、教育費など、月々の生活に必要な支出すべてを示します。
ポイント(2) 子の教育資金の確保はできていますか?
「はい、我が家はすべての子供の大学卒業までの学費、全額が確保できています」主に中学生以下のお子様がいらっしゃるご家庭で、このような家庭はごくわずかではないでしょうか。
子供がどのような進路に進みたいと言い出すか、どのような進路に進むことができるのか、そのためにはどれくらいの資金が必要なのか…ドキドキ・ビクビクしている家庭が多数派です。
私達ファイナンシャルプランナーにご相談にいらっしゃる方のほとんど全員が、将来必要となる教育資金にドキドキ・ビクビクしていらっしゃいます。
公立・私立、文系・理系・医歯学系など、特に大学はその進路の選択によって学費に大きな差があります。大学4年で就職するだろう(してほしい)との親の思いとは裏腹に、子供が「大学院に進みたい」と言ってくるかもしれません。
残念ながら(結果的に喜ばしいことかもしれませんが)、浪人や留年、留学という想定外の出費も絶対ないとは言えません。大学入学以降の学費総額は、選択する進路によってその差は数百万円、数千万円にもなります。
繰り上げ返済で住宅ローンの負担はなくなったものの、教育ローンや奨学金を借りなければならないという事態になってしまったら、それこそ本末転倒ですよね。
まだ中学生以下のお子様がいらっしゃるご家庭は、繰り上げ返済の実行は最大限慎重になったほうがよいでしょう。そのタイミングは『今』ではないかもしれません。
ポイント(3) 住宅購入後、10年以上経っていますか?
住宅購入して未だ10年以内という方は、住宅ローン控除の恩恵を受けている最中だと思われます。
住宅ローン控除は、毎年12月末時点の住宅ローン元本の残債額を基に算出された額について、その住宅ローン契約者の所得税や住民税が減税されるという制度です(※適用には要件があり、10年間という控除期間は現在の税制での適用期間です)。
繰り上げ返済は、住宅ローンの元本部分を減らす効果があります。
つまり、住宅ローン控除の適用期間中に繰り上げ返済を実施してしまったら、控除額の算出の基となる住宅ローン残債(残りの元本額)が減り、住宅ローン控除のメリットを自ら減少させてしまうという状況になってしまいます。
なお、控除適用の住宅ローン残債の上限額は現在の税制で4000万円です。
もちろん、住宅ローン控除額より、住宅ローンの繰り上げ返済を実行することによる支払利息軽減額の方がメリットがある場合もありますので、住宅購入後10年以内の繰り上げ返済が必ずしもNGというわけではありません。
いずれにせよ、双方のケースで詳細のシミュレーション結果を比較した上で、繰り上げ返済の実行すべきかすべきでないかについて判断することをお勧めします。
以上、住宅ローンの繰り上げ返済の検討について、注意すべき大きなポイントを3つ挙げました。
住宅ローン地獄(!?)から一日でも早く脱出するために、『繰り上げ返済』へとはやる気持ちはとても健康的なものですが、その実行に当たっては、ぜひ、今後のライフイベントを見据えた手元資金の推移(ライフプラン)を作成・分析した上で、慎重に検討することをアドバイスいたします。
なぜなら現金は、一度手放してしまったら、二度と手元には返ってきませんから…。
執筆者:平田純子(ひらた じゅんこ)
CFP(R)認定者
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