介護保険制度はもう限界?すすむ軽度者への生活援助の利用制限
ファイナンシャルフィールド / 2019年5月19日 10時30分
日本の高齢化は急速なスピードで進んでいます。それに伴って、病気になる人や介護が必要になる人も増え、医療費や介護費も右肩上がりで増えています。その費用は毎年1兆円のペースで増えています。もちろん、国も何の対策も立ててない訳ではありませんが、対処療法的で抜本的な解決には至っていません。 介護に関して見ると、ここ数年、介護保険は軽度の要介護者を介護保険から外し、重度の要介護者に対象を絞り込む方向が顕著になっています。 介護保険料は40歳から徴収が始まりますが、自分たちが要介護になった時には介護保険が使えないといったことが十分予想されます。対策を考えておきましょう。
軽度者の生活援助の利用制限
介護保険の大きな流れとしては、まず、要介護度が高い方へのサービスの集中をあげられます。
要介護認定は、要支援1~2、要介護1~5と7段階あります。数字が大きいほど要介護度が高くなっています。要支援は要介護になる前の状態で、介護予防段階にあります。
要支援者向けのサービスのうち訪問介護(ホームヘルプサービス)と通所介護(デイサービス)が全国一律のサービスから、市区町村の事業に移管されました。予算の関係から、市区町村によっては、国のサービスのレベルより劣るサービスを受ける可能性があります。
将来的には、要介護1~2も同様に介護保険から外され、市区町村の事業に移管される可能性が高いと言われています。
すでに、この兆候は表れています。訪問介護には食事、着替え、入浴の介助などを行う「身体介護」と調理、洗濯、掃除などを行う「生活援助」があります。このうち、要介護1~2の場合、身体介護よりも生活援助の占める割合が高くなります。
2018年10月からは、訪問介護の生活援助の回数を多く位置付けたケアプランは、市区町村へ届け出なければならなくなりました。届け出が義務化される生活援助の1か月の回数は、要介護1が27回以上、要介護2が34回以上、要介護3が43回以上、要介護4が38回以上、要介護5が31回以上となっています。
施設も軽度者外し
介護保険施設のひとつである特別養護老人ホームの入所基準は、以前、要介護1から入所可能でしたが現在では、原則、要介護3以上となっています。
介護保険施設には、特養のほか、介護老人保健施設や介護医療院がありますが、これらの入所者も今後、対象者が絞られていくかもしれませんね。
また、通所介護(デイサービス)の要支援の単価が低くなったため、デイサービスセンターは要支援の方の受け入れを事実上制限しています。
このように、在宅でも施設でも、介護保険のサービスの対象者を重度の要介護者に絞りつつあります。
地域包括ケアシステムの強化
介護保険の大きな流れとしては、次に、地域包括ケアシステムの強化があげられます。地域包括ケアシステムとは、高齢者が住み慣れた地域(自宅から30分以内の日常生活圏域)で、住まい、介護、医療、予防、生活支援といった、高齢者を支えるサービスを一体的に提供するシステムをいいます。
強化の背景には、高齢化に伴い要介護者が増えている一方、要介護者を支える介護職の不足や家族の介護力の低下などから既存の介護保険のサービスでは、要介護者の生活を支えることが難しくなった点があります。これからは、地域の行政やボランティア団体などの地域の力を活用して高齢者の生活を支えて行くようになるでしょう。
要介護にならないのが一番
これまで見たように、要介護度の軽い方は、介護保険のサービスが利用しづらくなっています。
要介護になる確率が高くなるのは75歳以上です。団塊の世代が75歳以上になるのは2025年ですので、介護保険のサービスの縮小化は当分続くでしょう。
介護保険が利用できない場合は、介護保険外のサービスを上手く活用する必要があります。しかし、介護保険外のサービスは全額自費です。経済的に余裕のない高齢者には大きな負担です。
自治体の高齢者向け福祉サービスや地域のボランティア団体などのサービスを利用すれば、民間のサービスに比べ費用を抑えることができますので調べておきましょう。また、現役時代から貯蓄や保険で備えておくというのも一つの方法です。
ただ、一番良い方法は健康寿命を延ばすことです。誰でも介護が必要になるわけではありません。普段から健康に気を付けることによって、要介護にならずに済むかもしれませんし、仮に介護が必要になっても介護期間を短くできるでしょう。
介護が必要となる主な原因は、認知症、脳血管疾患、骨折などです。生活習慣病対策が重要になってきます。普段から適度な運動をすることとバランスの良い食事を摂ることを心がけましょう。女性は、閉経後に骨粗しょう症になりやすく、骨折につながりますので、若い時から骨密度を高めておくと予防になります。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
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