加入者が100万人突破したiDeCoのこれからの役割とは
ファイナンシャルフィールド / 2019年5月27日 10時0分
![加入者が100万人突破したiDeCoのこれからの役割とは](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_44098_0-small.jpg)
個人型確定拠出年金(以下iDeCo)の加入対象者が2016年の法改正により拡大され、加入者はすでに100万人を突破しました。老後の生活資金準備の方策として、認知度も徐々に広がりつつあります。 しかし、法改正により創出された確定拠出年金制度では、期待されていた役割を十分に果たしていないとされ、今後の制度変更が本格的に議論され始めました。 厚生労働省の社会保障審議会(企業年金・個人年金部会)が本年2月より開催されています。そのなかで、今後の規制の変化の方向として注目される2点をご紹介します。
期待されていた役割とは
2016年の法改正は、iDeCoの加入者対象の拡大よりも、中小企業向けの企業年金制度の普及・拡大に目が向けられていました。
事実、従業員100人以下の中小企業に限り、設立手続きを大幅に緩和した「簡易型確定拠出年金制度」。iDeCoに加入する従業員の拠出に追加して、事業主拠出を可能とする「中小事業主掛金納付制度」が創設されました。
しかしながら、両制度ともにほとんど利用されることなく、中小企業向けの企業年金制度は普及するどころか、厚生年金基金の解散ラッシュとともに縮小してしまいました。
そこで、新しい制度に頼らずに既存のiDeCoを含む確定拠出年金制度をより普及させ、国民の老後の所得確保の充実を図る方向に、議論は変わりつつあるようです。
加入可能年齢の引き上げ
60歳を超えても働き続ける人が増えていることや、人生100年時代が叫ばれている現状を考慮し、確定拠出年金の掛金を拠出できる年齢を引き上げる要望が出ております。
老後の支えとなる厚生年金は、段階的に65歳まで受給開始年齢が引き上げられています。そのため、確定拠出年金も厚生年金と同じく、65歳まで引き上げられる案になると思われます。
現在でも企業型は同じ事業所で勤め続ける場合に限り、規約で定めれば65歳まで加入期間を延長できることになっています。したがって、今後検討される65歳までの加入可能年齢の引き上げはiDeCo加入者が対象の中心となり、就労形態による不公平感がなくなるでしょう。
掛金の拠出限度額の引き上げ
現在、加入者区分によって、月額1万2000円から6万8000円までとされている掛金の上限額を引き上げる要望も出ております。
上限そのものをなくして欲しいという要望もあり、大幅な引き上げを期待してしまいがちです。しかしながら、掛金上限引き上げには、加入者の所得税と住民税の節税効果がある反面、税収の減少につながるため、厚生労働省だけでは決定できません。そのため、引き上げがあったとしても数千円程度にしかならないと考えられます。
以上、今後のiDeCoの規制緩和については、「加入可能年齢の引き上げ」と「掛金の拠出限度額の引き上げ」を中心に議論されることが想定されるというお話でした。
この2点の他にも、「受給開始可能年齢」や「中途引き出し」、「脱退要件」などの規制緩和が期待できます。これらの規制緩和をふまえて、すでに加入されているiDeCoの掛金額や運用の方法について、今一度見つめ直してみてはいかがでしょうか。
出典:厚生労働省「iDeCoの加入者数が100万人を突破しました!」
厚生労働省「第3回社会保障審議会企業年金・個人年金部会 資料」
厚生労働省 企業年金国民年金基金課「確定拠出年金制度における現状と課題について平成28年11月」
執筆者:加藤啓之 (かとう しげゆき)
FP横浜オフィス加藤 代表
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