【疑問】年金受給開始の違いでもらえる金額はどう変わるのか
ファイナンシャルフィールド / 2019年5月30日 8時30分
昨今は「人生100年時代」と言われています。それにより「いつまで働けばいいの?」「老後のためにどれだけお金を貯蓄すればいいの?」など、老後のワークライフバランスに対しての疑問が多くなってきているようです。 中でも、年金については「受給を開始する年齢によって月々もらえる金額がどう違うのか?」「何歳まで受給すれば得をするのか?」といった疑問を抱いている方は多いのではないでしょうか。そこで今回は、年金受給開始時期についてお伝えいたします。
年金受給開始年齢の繰上げとは
基本的には老齢基礎年金、老齢厚生年金ともに65歳から受給開始となります。しかし、何らかの理由で一日でも早く年金の受給を開始したい人は、申請をすれば、一番早くて60歳から受給できます。
正確には、60歳の誕生日の前日を含む月を60歳0ヶ月として、60歳0ヶ月から65歳になる直前の64歳11ヶ月までの間で受給申請ができます(月単位)。そして、請求した月の翌月分から年金を受け取ることができます。
早くから受給すれば、それだけ長く受け取ることができるので得かというと、そうではありません。では、早くから受給できるメリットと引き換えに、どんなデメリットがあるのでしょうか。
繰上げ時期による受給額の違いと減額率
繰上げ受給すると、65歳から受給するはずだった金額に減額率をかけた金額が支払われることになります。また、開始したときの減額率は一生変更できません。では、どれくらいの減額率なのでしょうか。
先述のとおり、年金は1ヶ月単位で繰上げができますが、1ヶ月繰上げるごとに0.5%削減されます。例えば、60歳になってすぐに受給すると5年×12ヶ月×0.5%で、減額率は30%となります(表1参照)。
(※1)
では、65歳になる前に受給し始めた場合、65歳で受給開始するより、受給総額が少なくなるのはいつからでしょう。
ここでは平均的な受給額(老齢厚生年金、老齢基礎年金の合計を月額22万2500円)で試算しました(表2参照)。※万単位の計算上、誤差が生じています。
60歳から受給し始めた人の場合、65歳から受給し始めた人より総支給額が少なくなるのは76歳(受給後17年)からです。
何歳まで受給できるかは人それぞれ違うため、繰上げが得か損かは受給開始時点では分かりません(76歳より長く生きれば繰上げ受給をしなかった場合に比べて総受給額では損をすることになります)。
繰下げ時期による受給額の違いと増額率
逆に繰下げ受給した場合の、受給額と増額率はどうなるのでしょうか。遅くから受給すれば増額されます。減額の場合は月0.5%の減額率でしたが、繰下げの場合は月0.7%の増額率になります。国としては年金をなるべく遅くから受給して欲しいからです。
では、65歳より遅く受給し始めた場合、受給総額が65歳で受給開始するより多くなるのはいつからでしょう。老齢年金繰下げの増減率(表3参照)と平均的な受給額(老齢厚生年金、老齢基礎年金の合計を月額22万2500円)で試算しました(表4)。
(※2)
70歳から受給した人の総支給額が65歳から受給した人より多くなるのは、81歳からという計算になります。
厚生労働省によると、平成29年度の65歳の平均余命は男性19.57歳、女性24.43歳です。65歳まで生きている男性は平均84.57歳、女性は平均89.43歳まで生きるということです。ということは、受給可能年齢になった人の多くは85~90歳までは生きる可能性が高いと言えます。
90歳を超えて受給した場合はどれくらいもらえるのか
平均寿命、平均余命が過去最高を更新する中、90歳を超える人も増えています。90歳よりも長く生きるとして、60歳から70歳までの各年齢で受給を開始した場合に受給金額にはどれくらいの違いが出るのでしょう。
老齢年金繰上げ・繰下げの増減率(表1・3参照)と平均的な受給額(老齢厚生年金、老齢基礎年金の合計を月額22万2500円)で90歳から100歳までの受給金額を試算しました(表5)。
受給開始が60歳からの人と70歳からの人がいずれも100歳まで生きたとすると、60歳からの人は41年間で7663万円の受給、70歳からの人は31年間で1億1753万円受給することとなり、その差はなんと4090万円になります。
※差額や総受給額は個人の受給額によります。
まとめ
上記の表で記した金額はあくまでも一例です。ご自分の正確な受給金額は、日本年金機構のねんきんネットよりご確認ください。人生の長さは誰にも決められません。人生100年時代に必要なことの1つに「少しでも長く働く」が挙げられます。
平均寿命、平均余命が伸び続ける中、老後資金を増やすことはとても大切です。年金に手をつけ始める時期を少しでも遅くするために、無形の資産である「健康」を保ち、少しでも長く働くことを目標にしましょう。
出典
(※1)日本年金機構「老齢基礎年金の繰上げ受給」
(※2)日本年金機構「老齢基礎年金の繰下げ受給」
厚生労働省「平成29年簡易生命表の概況 1主な年齢の平均余命」
執筆者:西川誠司(にしかわ せいじ)
2級ファイナンシャルプランンニング技能士・AFP認定者、終活ライフケアプランナー、住宅ローンアドバイザー(一般社団法人住宅金融普及協会)
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