あれ?利回りが大幅減・・マンション投資に潜む意外な落とし穴
ファイナンシャルフィールド / 2019年6月8日 10時30分
「人生100年時代」といわれる超高齢化社会。少子化が進み、年金制度の将来像も不安……。そんな情勢を見据えて、不動産投資をされている方も少なくないと思います。 その対象は、1棟丸ごとのビル・マンション・アパート、戸建、ワンルームマンションの1室などなど、規模も形態もさまざまでしょう。
「ミドルリスク/ミドルリターン」といわれますが
不動産投資の特性としてよくいわれるのが、「ミドルリスク/ミドルリターン」。
リスク(将来的な不確実性や変動要因)とリターン(投資から得られる収益)の関係は表裏一体とされ、「ロー/ロー」の代表例は定期預金、「ハイ/ハイ」はFX(外国為替証拠金取引)などがよく例示されます。
不動産投資はその中間位置で、入居していれば賃料収入によってひとケタ(物件によってはふたケタ)くらいの利回りが安定的に期待できます。
ある時点から利回りがいきなり大幅減になってしまうことも
そんな不動産投資ですが、入居も安定継続していて、固定資産税・保険料・賃貸管理委託費などの費用もほとんど変動していないのに、ある時点から利回りがいきなり大幅減になってしまうことがあります。
一体どういうことなのでしょうか。次のような例で考えてみましょう。
不動産投資の「利回り」は、分母と分子の数字の設定や、見方によってどんどん下がっていく構造になっていることを以前にもご説明しました。この例の2つの利回りの数字でも、確認ができます。
そして、「実質(ネット)利回り」をさらに大きく減らしてしまいかねないのが【修繕積立金の増額改定】です。
こんなこと、実際にあるのです
筆者の知人が保有する2室のワンルームマンション(別々の物件)の管理組合の報告資料を見てみると、総会議事で修繕積立金の改定が議決され、実施されることが記載されています。
その実際の改定金額(月額)は次のとおりです。
(あ)物件 (改定前)3100円 →(改定後)6400円
(い)物件 (改定前)2200円 →(改定後)8800円
改定月額は数千円台ですが、驚くのはそのアップ率。(あ)で2倍以上、(い)では何と4倍です。先ほどの例で、修繕積立金が仮に月額1.2万円(2倍)に改定された場合、実質(ネット)利回りは【3.66%から2.86%】に急減する計算になります。
このような状況になると、キャッシュフローや収支は厳しくなりますし、売却しようとしても(買い手が期待する利回りは変わらないでしょうから)想定される売却可能価格がかなり下がってしまいます。
どうしてこんな事態になるの
投資用マンションは、分譲売主の関係会社が建物管理業務を受託するケースも多く、月々の管理費は受託会社に利益が残る水準に設定されます。
しかし、修繕積立金の方は(当面は手をつけないこともあって)、物件販売時の利回りを高く見せるため低額に設定しているケースも見られます。一方で、建設業界は工事ブームによる資機材高騰や人手不足のために、高コスト体質となっています。新築だけでなく改修工事もそうです。
ケースバイケースですが、物件によっては新築後15年、20年が経過して大規模改修計画を実施しようとした時に、積立金不足に工事費の大幅アップも相まって、こうした困った状況が発生することがあるのです。
投資用マンションは全戸が〝不在オーナー〟ですので、管理組合総会の議案資料が届いて初めてびっくり、というケースが大半でしょう。
チェックしておきたいポイント、そしてまとめ
このような事態をできるだけ避けるためには、投資の入口(購入時)で次のような点をチェックすることが望まれます。
(1)収入(家賃)に対して、管理費・修繕積立金の占める割合が大きい(例えば1/4超)物件は要注意。
(2)管理費と修繕積立金の各金額のバランスもチェックし、修繕積立金が管理費よりもかなり低額なものは要注意。
(3)管理状況に関する調査報告書、建物管理組合の近時の総会資料、管理会社の長期修繕計画表などの資料を仲介業者から事前入手して、修繕積立金積立状況や大規模修繕計画実施予定を確認する。
不動産投資は、購入しておしまいではなく出口戦略(どんなタイミングで売却するのかどうかを考えておく)が重要です。修繕積立金の増額改定は、その出口戦略にもかなり影響を及ぼす要因のひとつなのです。
執筆者:上野慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士
関連記事
■近年、不動産を所有し、オーナーとして家賃収入を得ることで利益を出す「不動産投資」が流行!本当に儲かるの!?
■少し深堀して理解したい【不動産投資信託】の魅力
■不動産投資を考える際のポイントと失敗事例
■不動産価格が上昇 不動産投資信託に失敗する人が見落としがちな4つのリスクとは
■J-REITの利回りは年3%と高いがリスクも高い?
この記事に関連するニュース
-
なぜ海外の投資家は地震大国ニッポンのマンションを買いあさるのか? 負動産をつかまないための絶対不変のマイホーム「買い時」とは?
集英社オンライン / 2024年5月8日 11時0分
-
空き家投資で“利回り20%”を連発できる…「お宝物件」を不動産業者から値下げして購入する「具体的な交渉術」【専業大家が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月27日 10時15分
-
「不労所得のありがたさに震えました」50歳万年係長、不動産投資を志す…最低限知っておくべき不動産投資の基礎知識とは?【FPが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月26日 11時15分
-
マイホーム購入時、絶対に避けたい〈地価が下がるエリア〉とは【専門家が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月15日 12時0分
-
80代父所有の一棟アパート、相続対策のはずが「エリア不人気・空室激増」+返しきれない借入金まで…50代息子、戦々恐々【FPが助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月9日 13時15分
ランキング
-
1物価の優等生『もやし』生産者はようやく少しずつ値上げ…しかし消費減で悲鳴「このままでは生産者がみんな廃業してしまう」
MBSニュース / 2024年5月8日 19時18分
-
2損保大手、火災保険料引き上げ=10月に10%、災害激甚化で
時事通信 / 2024年5月8日 17時54分
-
3トヨタの営業利益5兆3529億円、日本企業で過去最高…最終利益も倍増し初の4兆円超
読売新聞 / 2024年5月8日 14時25分
-
4訪日客数が過去最高 インバウンド需要は?
食品新聞 / 2024年5月8日 10時41分
-
5「コカ・コーラ」や「ジョージア」…141品を20円値上げへ 10月出荷分から
日テレNEWS NNN / 2024年5月8日 19時30分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください