金融庁の「2000万円不足」報告書を巡る騒動について振り返る
ファイナンシャルフィールド / 2019年6月19日 10時30分
金融庁の金融審議会がまとめた長寿化による人生100年時代に備えた報告書について、連日メディアでは大きく取り上げられています。95歳まで生きるには年金では不足分が発生し、夫婦で2,000万円の蓄えが必要になると試算されています。 具体的には、男性が65歳以上、女性が60歳以上の夫婦の場合、年金収入だけでは月に5万円の赤字になるということですが、この報告書について今一度客観的に振り返ってみたいと思います。
今の年金制度が成立しないことはみんな認識している
報告書によれば、少子高齢化で年金の給付額の維持が困難だと政府自ら認め、国民の自助努力を求めているわけですが、「今さら感」を抱かれた人も少なからずいると思います。
筆者がかつてFP協会主催のプレゼンテーションで引用した数字は、平成22年の生命保険文化センターによる調査報告(「生活保障に関する調査」)でしたが、その当時でも夫婦二人を仮定した場合、ゆとりある生活と標準的な老後生活の月額不足分は約12万円でした。
その場に参加された一般の皆様は、この不足額については当然のこととしてとらえ、「ではどうやってその不足分を埋めるか」に対して熱心に情報収集をされていたことを記憶しています。
また、今の学生たちも「今ですら、年金受給額は不十分だが、将来の年金も自分たちは全く頼りにならないと覚悟しなければならない」と口にしています。
筆者の周りの人たちだけが特別ではないでしょう。むしろ不足額は金融庁の資産額よりも大きいのではないかという「意外感」を抱かれた人の方が多かったのではないでしょうか。
危機感を持つことと行動を起こすことは別
危機感を持つだけでは何の意味もなく、危機感を払しょくするために行動を起こさなければならないということです。老後の生活は、始まりはわかっていても、終わり(臨終)はわからないために不足額を埋める金額は老後の期間によって変わります。
だからでしょうか。漠然としたもやもやと、周りを見渡して「他人の具体的な行動がわからない」ために、「誰も具体的な行動を起こしていないのではないか」「それなら大丈夫ではないか」と先送りにする理由にしているように思われます。
サザエさんが前提ではないことを強く認識するとき
「サザエさん」というタイトルは知っているが、実際に見たことはないと回答する20歳前後の学生は何人もいます。
大家族で若年層がシニア層を支える、55歳定年で平均寿命が70歳、年金受給期間が15年間、終身雇用制で一度就労すれば40年間勤めあげるのが大半、というのが1960年代の年金制度の大前提であったことを認識すれば、今は前提がすべて違っているため、制度も機能しないことは明らかです。
そう考えれば、自助努力によって資産を育てていかなければならないのは当然、という結論にたどりつかざるを得ません。議論の焦点は「どうやって不足額を埋める努力をすべきか」と思うのは筆者だけではないでしょう。
執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)
CFP(R)認定者
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
もらえる年金は平均より少ないと思います。今後どう生きていけばいいのか分からない
オールアバウト / 2024年9月16日 8時10分
-
40歳、貯金が「1000万」です。さらに増やしたいのですが、この1000万円を使って、「老後の資金」を増やす方法はありますか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年9月13日 10時0分
-
ずっと旦那の扶養に入って専業主婦をしていましたが、貯金が「800万円」しかないので老後が不安です。少しでもパートに出た方がいいでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年9月12日 2時20分
-
妻が専業主婦で夫の年収が「800万円」と、共働きで世帯年収が「800万円」では世帯年収は同じなのにもらえる年金額が違うと聞きました。本当でしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年9月1日 1時0分
-
65歳男性・月の年金6万5000円「年金だけで老後は安泰ではなかったのか。食事もままならず楽しみもない」
オールアバウト / 2024年8月23日 20時5分
ランキング
-
1ほっかほっか亭「コラボ依頼して賛否」への違和感 日清食品「10分どん兵衛」の成功例に倣えるか
東洋経済オンライン / 2024年9月20日 15時20分
-
2ミニストップ、外国籍の利用客に“不適切な張り紙” 「問題を重く受け止め」謝罪
ORICON NEWS / 2024年9月20日 15時53分
-
3血管をむしばむ「超加工食品依存症」に要注意!医師が食べてほしくないもの3選
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月20日 11時0分
-
4あの「ポーター」が人気商品を大胆に変えた裏側 価格2倍にしても素材変えた吉田カバンの挑戦
東洋経済オンライン / 2024年9月20日 13時0分
-
5漁業関係者、「ぬか喜びにならなければ」=歓迎も中国側の手のひら返し警戒
時事通信 / 2024年9月20日 20時55分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください