賢い住宅ローンの選び方
ファイナンシャルフィールド / 2019年6月22日 9時30分
不動産の物件広告を見ると、時々「返済例」として借入額、返済期間と金利、月々の返済額などが書かれているものを見かけます。この月々の返済例を見て「月々の家賃と同じくらいで買える」と感じ、マイホーム購入を考える人も少なくないのではないでしょうか。 しかし、大きな買い物をするためのローン。その仕組みをしっかり理解しておかないと後々大きな負担に苦しむことにもなりかねません。前回のコラムで住宅購入の予算の考え方についてお伝えしましたが、今回は特に「住宅ローンの選び方」に焦点を当ててお伝えします。
金利タイプについて
冒頭でお話しした広告表示をよく見ると「変動金利」や「3年固定金利」などと(小さな字で)書かれているはずです。今は空前の低金利時代。3年や5年といった短期間の間に急に金利が上昇するとは考えにくいと判断できるので短い期間の借入金利は非常に低く設定されています。
しかし、今後も同じ金利水準が続く保証はありません。しばらく低金利が続くとは思いますが、住宅ローンは通常、20年以上の返済期間を設定するケースが多く、その期間内に金利が上がるリスクも考慮する必要があります。
低金利時代ですが、大きな金額を借入れる住宅ローンでは金利の額も小さくありません。住宅ローンには主に「変動金利」「固定金利」「固定金利期間選択型」といったタイプがあります。それぞれの特徴、メリットとデメリットを確認しましょう。
<変動金利の特徴>
「変動金利」は一般的に、年に2回金利見直しが行われ、5年に1度返済額が見直される金利タイプです。このため、仮に5年経過する前に金利が上がった場合でも返済額が変わらないまま、利息だけが増えることになり、結果として元本がなかなか減らない可能性があります。
また、返済額が見直される際、従前の返済額の1.25倍を超えてはいけないことになっています。もしこの期間内に大幅な金利上昇があった場合、極端な例では、返済金額がすべて利息分の支払いに充てられ、元本が全く減らない、あるいは元本が増えていくことも理論上あり得ます。
ずっと低金利のままであれば固定金利よりも安い金利に抑えられ有利ですが、金利上昇のリスクは考慮しておく必要があります。
<固定金利の特徴>
「固定金利」は、返済開始から返済終了まで金利が一定に固定されるタイプです。また、後で触れる「元利均等返済」という返済方法を選べば返済期間中の返済額も変わりません。
固定金利の一番のメリットは、変動金利のような金利上昇のリスクがないことでしょう。また、将来に渡って支払いが一定のため、教育費の準備や繰上げ返済などのために、計画的に家計管理を行い貯蓄しようと考える場合に不確定要素がなく有利です。
一方で、固定金利は変動金利よりも高めの金利が設定されています。もしずっと低金利が継続する場合には固定を選択する場合よりも総支払額は大きくなります。
<固定金利期間選択型の特徴>
「固定金利期間選択」は、当初の固定期間が終了すると変動金利に移行する金利タイプです。固定期間中の金利上昇リスクはありませんが、固定期間が終了した時点で市中金利が上昇している場合には、返済額も上がる可能性があります。
固定期間中に計画的に繰上げ返済資金を貯める、あるいは子供の教育費などの負担にめどが立てられる場合に選択するメリットがあるでしょう。「金利が上昇傾向に入った時に変動から固定に借り換えよう」とお考えになる方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、変動金利が上がり始める時には固定金利もすでに上がってしまっていると考えられます。最初に借入れるときに将来の返済計画とリスクへの許容度を元にどの金利タイプを選択するか選ぶ必要があります。
元利均等返済と元金均等返済の違い
「元利均等返済」は元本と金利を合わせた毎月の返済額が一定になる返済方式です。毎月の返済額には元本部分と金利部分があります。返済開始当初は返済金額に対する金利の割合が多いため、なかなか元本が減りません。
一方「元本均等返済」は毎月の元本返済額を固定し、当初は金利支払い分が多いため、月ごとの返済額が多いものの、元本が減るごとに金利分が減り、毎月の返済額も減少していく方式です。
総返済額では下表のように「元本均等返済」の方が少なくなりますが、返済開始当初の返済額は大きくなります。借入時の審査では「返済比率」(返済額の収入に対する割合)が重要なポイントとなりますが、審査での返済比率は当初の返済額がベースになりますので、元金均等返済を選択する場合には借入限度額が少なくなる可能性があります。
(金融機関により端数処理方法により、月々の返済額で±1円程度、総返済額で数百円程度の誤差が出ることがあります)(西山ライフデザイン㈱作成)
また、現在は住宅ローン減税が使えます。住宅ローン減税では、年末の借入金の残高の1%が基本的に所得税から控除されます(上限40万円/年、認定長期優良住宅・認定低炭素住宅の場合は50万/年)。
当初の元本の減少が早い「元金均等返済」の場合、減税額がやや少なくなります(10年間住宅ローン控除を受けた場合の控除額総額の差は9万円程度)。
まとめ
住宅購入の際、ほとんどの方が住宅ローンを利用します。その中でも6割の方が「変動金利」しているのが現状です。住宅ローンについてあまり深く考えず、「当面の支払いが安いほうが良い」と考えている人が多いように思います。
広告に掲載されている「返済例」は当初の返済額を小さく見せるため、当初の適用金利が低い住宅ローンを利用した場合の事例です。広告もモデルハウスやモデルルーム同様、住宅購入を考える人が買いたくなるような仕組みがふんだんに盛り込まれています。
どのタイプの住宅ローンを選択するかは借入額や返済期間、家計の状況や将来のライフプランなど借入れる人の状況によって変わってくるはずです。住宅購入の際には物件だけでなく、住宅ローンの選択も家計への影響などを十分に検討したうえで行う必要があります。
<参照>
住宅金融支援機構「2018年度 民間住宅ローン利用者の実態調査」
執筆者:西山広高(にしやま ひろたか)
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役
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