子供や孫への贈与を活用して、相続税を抑えるコツとは?
ファイナンシャルフィールド / 2019年6月23日 10時15分
平成27年の税制改正により、相続税の基礎控除が変更になりました。変更後の相続税の基礎控除額は、3000万円+600万円×法定相続人です。以前よりも多くの人が、相続税の対象になる可能性があります。 「うちには数千万円もの財産はない」と思っていても、相続財産には現預金や有価証券だけでなく、住宅や土地などの不動産も含まれます。そのため、思ったよりも簡単に基礎控除の額を超えてしまう恐れがあります。 このように、相続税は身近な税金になりつつありますが、改正から時間も経っていないため、まだ有効な対策を立てられていない方も多いのではないでしょうか?今回は、子どもや孫などへの贈与を活用した相続税の対策について説明させていただきます。
一般贈与を利用して相続税を節税しよう
一般贈与は暦年贈与とも呼ばれ、年間110万円までの贈与を非課税で受け取ることができる制度です。相続発生前に財産を引き渡し、相続発生時に課税対象となる財産を減少させるというのが、本制度を利用した相続税対策の概観です。
本制度で贈与を受ける人には制限がないため、相続権がない人にも引き渡すことが可能といった、相続にはないメリットがあります。しかし、一般贈与の非課税枠が110万円と小さいことや、非課税枠を超えた際の税率が10%~55%と高いなどのデメリットもあります。
また、一般贈与の場合、短期間に多額の財産を引き渡すには不向きなため、相続開始前のなるべく早い時期から計画的に財産を贈与していく必要があります。
さらに、子どもへの一般贈与を行った場合、相続開始前の3年以内に贈与を受けた財産に関しては、相続財産として相続税の対象になります。
本制度を利用するうえで特に気を付けたいのは「名義預金」です。子どもが無駄遣いしないように預金の存在を秘密にして、子ども名義で積み立てを行う場合などが名義預金に該当します。
贈与はもらう側と、渡す側の認識の一致が重要になります。名義預金の場合は子どもの名義は形だけのもので、真の所有者は積み立てている本人であるとされるため、贈与を否認されてしまいます。
名義預金を避けるには、金融機関への届出の印鑑は贈与を受ける側のものを使い、キャッシュカード・通帳は贈与を受ける人が管理するなどの守るべきルールがあります。一般贈与の際は、名義預金とならないかについて特に注意を払いましょう。
一気に財産を渡したいなら「相続時清算課税制度」を利用しよう
「相続時清算課税制度」は60歳以上の父母や祖父母から、20歳以上の子ども・孫に対する贈与にのみ適用できる制度です。
非課税枠が累計で最大2500万円と大きく、一度にまとまった財産を渡すことができます。また、2500万円を超える場合は、超えた額に対して20%の税金を仮納付し、相続発生時に他の相続財産と合算し、相続税の税率で清算されることになっています。
この性質から、資産額が相続税の課税額に届かない場合の、資産の前渡しに最適です。
ただし、一度本制度を選択してしまうと、一般贈与に戻すことはできません。また、相続税を減らす効果もないので、相続時清算課税制度を利用する場合は所有する財産の額をしっかりと把握してから行う必要があります。
まとめ
子どもや孫への財産の移動は、年間110万円までが非課税となる一般贈与を利用して計画的に進めていくのがおすすめです。
相続と異なり、渡す人や金額の配分に制約がありません。渡したい人に重点的に贈与を行うことも可能です。ただし、もらう側が認識していない名義預金となってしまわないように注意しましょう。
また、孫の場合は対象外ですが、子どもへの贈与は相続開始前3年以内に行うと相続財産とされてしまうので、なるべく早く計画的に進めるようにしましょう。
資産額が相続税の課税額に届かない場合で、一気に財産を渡したいときは「相続時清算課税制度」を利用することもできます。しかし、相続税を抑える効果がなく、一度選択してしまうと一般贈与には戻せないので、財産額をよく把握することが大切です。
相続人のために相続税を抑えることは大切ですが、老後の資金計画に支障がでてしまう恐れがあるので、渡しすぎにも気を付けましょう。
執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)
FPオフィス Conserve&Investment代表
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