【どうして?】人口は減っているのに増え続ける住宅(前編)
ファイナンシャルフィールド / 2019年6月25日 9時10分
日本は人口減少時代に突入しており、必要な住宅の数も減ってきています。しかし、現実では住宅の数が今も増え続けています。 2019年4月に発表された住宅・土地統計の調査結果から住宅の現状について確認し、将来の問題点を考えてみました。
住宅の数が世帯の数を大きく上回っている
総務省の住宅・土地統計調査は住宅や居住している世帯の居住状況等の実態をあきらかにする基幹的な調査で、1948年(昭和23年)から5年ごとに実施されてきた歴史ある調査です。2019年4月に「平成30年住宅・土地統計調査」の結果が一部公表されました。その内容から、まずは住宅数の推移と、世帯数との関係についてグラフにまとめてみました。
資料:総務省「住宅・土地統計調査(平成25年・平成30年)」
日本全国にある総住宅数は6242万戸(2018年10月1日現在)で、グラフを一目見てわかる通り増え続けています。2013年と比べて5年間で179万戸増加しており、平成時代の30年間でみると2041万戸(1988年に対する2018年の数)も増加しています。不動産バブルの平成初期から今日まで経済は大して成長していないように感じますが、住宅の数は約1.5倍にもなり、大きく成長してきました。
1958年(昭和33年)以降の総住宅数を世帯数と比べてみると、1958年当時は総世帯数が総住宅数を上回っていました。住宅の数が世帯の数より少ないということは、住宅不足が深刻だった可能性があります。しかし、1963年以降は一貫して住宅数が世帯数を上回っており、差が広がってきています。住宅数が世帯数を上回ることで、昨今問題になっている空き家が増え続けています。
東京都は20年間で200万戸も住宅が増えている
次に総住宅数がどのくらい増減したか都道府県別に確認してみました。下記の表では住宅数の多い10の都道府県について、20年前の1998年(平成10年)と比べています。割合は全国の総住宅数に占めるその都道府県の割合、増減数と増減率は1998年の住宅数に対する2018年の住宅数と増減割合です。
資料:総務省「住宅・土地統計調査(平成10年・平成30年)」単位:戸
全国で住宅は6242万戸ありますが、そのうち東京都に767万戸あります。20年前の1998年と比べると、住宅数は200万戸増え、35.2%も増加しています。1998年度の福岡県が201万戸なので、この20年間で福岡県の住宅数とほぼ同じだけ増えていることになります。物凄い増加数であり増加率で、全国に占める割合も11.3%から12.3%へ1%上昇しました。表の各都道府県では、東京都と同じようにどこも住宅数が大きく増えています。神奈川県でも100万戸以上増加しており、東京都に隣接する神奈川県・埼玉県・千葉県で増加率が30%を超えています。
住宅の少ない都道府県でも数は増え続けている
今度は住宅数の少ない10の県について、20年前の1998年(平成10年)と比べています。
資料:総務省「住宅・土地統計調査(平成10年・平成30年)」単位:戸
全国で最も住宅数が少ないのは鳥取県の26万戸で、全国に占める割合は僅か0.4%しかなく、東京都の30分の1程度となっています。住宅数の少ない10県は20年前も同様に少ないですが、それでも10県全てで住宅数が増えています。鳥取県は19.6%増、富山県や山梨県でも20%近く増えています。
日本はすでに人口が減り始めており、都道府県別にみても多くは人口が減っていますが、住宅の数はどこも増え続けています。核家族化により世帯当たりの人数が減っていることで必要とする住宅数は増えていますが、最初のグラフを見ての通り増えすぎてしまい、昨今は空き家が社会的な問題となっています。
後編では都道府県別の住宅数を人口と絡めてさらに掘り下げています。
執筆者:松浦建二(まつうら けんじ)
CFP(R)認定者
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