時代のニーズに合わせた注目の保険「就業不能保険」の必要性とは
ファイナンシャルフィールド / 2019年6月28日 8時15分
病気や怪我で働けなくなった場合に保障される保険商品が続々と登場しています。かつては「所得補償保険」と呼ばれていましたが、今は「就業不能保険」と呼ばれています。 医療技術の進歩などにより、かつては助からなかった病気や怪我でも命が救われるケースが増えているとともに、命が助かっても働けなくて収入が得られない状態で長期間生き続けるリスクも増した、時代のニーズに合わせた注目の保険です。 とはいえ、自分に必要な保険かどうかはしっかりと考えましょう。
就業不能保険は公的保障の不足分の補填
働けなくなった場合の保障には、公的保障があります。
会社員の場合、健康保険の傷病手当金があります。就業不能状態になって、給料が支払われない休業扱いとなった場合に最大約1年6ヶ月の間、働いていた頃の標準報酬月額の3分の2が支払われます。例えば標準報酬月額が30万円の場合、20万円です。
30万円で生活していた場合には月額10万円が不足しますので、その分を就業不能保険という民間の保障やそれまでの貯蓄でまかなうこととなります。しかし、自営業の場合は傷病手当金がありませんので、30万円全額をまかなう必要があります。
また、公的保障には障害年金(障害厚生年金、障害基礎年金)もあります。障害年金を受給できる場合には、その分を考慮することができます。
就業不能保険の保険金支払期間と免責期間
働いている方それぞれ、就業不能保険の必要保障金額は変わります。保障金額が高額なほど、また保険金の支払期間が長いほど、保険料は高くなります。30歳の方が加入する場合に保険期間を5年や10年といった短期間にすれば安く、60歳や65歳までといった長期間にすれば高くなります。
また、免責期間の違いもあります。所定の就業不能状態になってから保険金の支払開始まで0日、60日、180日は支払対象外の免責期間であり、免責期間が長いほうが保険料は安くなる傾向です。
精神疾患を対象としているかどうか
就業不能に陥る原因としては精神疾患、メンタルヘルスの不調があります。過度なストレスや過労によって精神疾患を患って働くことが困難となるケースも珍しくありません。しかし、就業不能保険では精神疾患による就業不能状態は保険金の支払対象外としている場合が多いのです。
精神疾患を支払対象としていても長期間支払われず、一時金で対応したり、長期間入院している場合のみとしたりしています。また、特約で精神疾患を保障範囲に含めるような保険商品もあります。
就業不能状態の認定基準は保険商品によって違う
保険金が支払われる就業不能状態(または就業困難状態)とは、どういった状態を指すのでしょうか。先ほど紹介した公的保障の傷病手当金は、病気や怪我で休業し、勤務先から給与が支払われない状態になると支払われます(例外はあります)。
一方、就業不能保険の支払い対象となる所定の就業不能状態とは、入院している状態と在宅療養の状態の大きく2つです。入院している状態はわかりやすく、医療保険の入院給付金が医療費分に加え、生活費の分もカバーできている金額で加入していれば、就業不能保険に頼らずに済みます。
就業不能保険が役に立つのは、在宅療養の場合です。在宅療養中は医療保険の入院給付金は支払われません。しかも、長期化する可能性があります。長期間収入が無いのは大変です。
在宅療養中は働けないのだから、必ず保険金が支払われると思うかもしれませんが、そうではありません。
約款所定の就業不能状態に該当しているかを保険金の請求に基づいて保険会社が審査します。審査の結果、就業不能状態に該当しないとなれば保険金は支払われません。約款の文言はそれぞれですが、多くの場合「職種を問わず業務に従事できない状態」を指します。
また、保険会社の審査ではなく公的な認定を適用する商品もあります。国民年金法や身体障害者福祉法で、ある程度の障害等級の認定を受けた場合、就業不能状態であるとして保険金を支払います。
保険金の支払い認定基準がどうなっているのかは就業不能保険を選ぶ重要なポイントです。保険料と保障内容をしっかり検討しましょう。
世界的にだれもが働ける社会を目指す時代
日本の公的機関の障害者雇用率水増し問題が2018年に発覚し、世間から障害者の雇用について注目されました。
障害者も働けるように社会を変えていこうという動きが起こりつつあります。政府や大企業から中小企業までが、持続可能な開発目標「SDGs(エスディージーズ)」を推進しています。SDGsには17の目標があり、その中に「働きがいも経済成長も」という目標があります。
そこにはこう記されています。「2030年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。」
障害を負った方も働くことが一時的にできなくなった方もいずれ働ける社会に、世界全体で変えていこうとしています。
科学技術の進歩によりスマートフォンやタブレットの操作でできる仕事が増え、働く場所を選ばなくなってきています。AIやロボットが、ハンディキャップを持つ方の業務をサポートしてくれる時代も目の前です。これからの時代の変化を捉えながら、就業不能保険を選ぶ視点が大切です。
出典
外務省「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ 仮訳」
執筆者:西村和敏(にしむらかずとし)
ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者
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