名義人が亡くなった!口座凍結前に急いでお金を引き出す必要がなくなる?法改正のポイントとは
ファイナンシャルフィールド / 2019年7月5日 8時30分
「口座が凍結される前に、お金を引き出さなくては」「ご臨終」を告げられたときに、このことは誰もが思うのではありませんか? 口座名義人の死亡を金融機関が知ると、口座を凍結します。どこの誰か分からない者に、勝手に引き出されないにするためです。凍結されると引き出しはおろか、口座振替も何もかもストップしてしまいます。 葬儀代や病院代等、そして同居家族がそのまま引き続き生活する生活費等、亡くなってからでも支払うものはあります。 凍結後に引き出すには、遺産分割協議がされてない、遺言書もない場合、被相続人の除籍謄本、法定相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明書等を添えて、法定相続人全員の署名・実印での捺印をした相続届けをしなければなりません。 ※十六銀行の例/相続手続きのご案内 それが、40年ぶりの法改正により、法定相続人全員でなく単独でも引き出せるようになります。
何が改正されたの?
民法及び家事事件手続き法の一部(相続関係)と、法務局における遺言書の保管等に関する法律が改正されました。
※引用:法務省 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について
以下の点が、新設・見直しされました。
第1 配偶者の居住権を保護するための方策・・・2020年4月1日施行
1、配偶者短期居住権の新設
2、配偶者居住権の新設
第2 遺産分割等に関する見直し
1、配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示推定規定)
2、遺産分割前の払戻制度の創設等
3、遺産の分割前に遺産に属する財産を処分した場合の遺産の範囲
第3 遺言制度による見直し
1、自筆証書遺言の方式緩和・・・2019年1月13日施行
2、遺言執行者の権限の明確化
3、公的機関(法務局)における自筆証書遺言の保管制度の創設※・・2020年7月10日施行
(※第3の3は法務局における遺言書の保管等に関する法律)
第4 遺留分制度による見直し
第5 相続の効力に関する見直し
第6 相続人以外の貢献を考慮するための方策
原則的な施行期日は2019年7月1日です。ただし、自筆証書遺言の方式を緩和する方策は、2019年1月13日から施行されており、配偶者居住権及び配偶者短期居住権の新設等については、2020年4月1日からになります。
期間が段階的なのは、できる限り早期に施行するため、それぞれ十分な周知に要する時間が違うためです。
遺産分割前でも預金の引き出しが単独で出来るように
第2の2 遺産分割前の払い戻しの創設等については、
・「家庭裁判所の判断を経ないで預貯金の払い戻しを認める方策」
・「家事事件手続法の保全処分の要件を緩和する方策」
の2つの内容があります。
「家庭裁判所の判断を経ないで預貯金の払い出しを認める方策」により、遺産分割前にも単独で払い戻しが出来るようになります。ただし、引き出せる金額は一定の割合で、一つの金融機関での上限が150万円です。
◎単独で払い戻しをすることが出来る額=相続開始時の預貯金債権の額×1/3×払い戻しをする人の法定相続分
また、「家事事件手続法の保全処分の要件を緩和する方策」は、家事事件手続き法代200条第2項(事件の関係人の急迫の危険の防止の必要があること)を緩和することにより、他の相続人の利益を害さない限り、申立により、遺産に関する特定の預貯金を仮に取得出来るようになります。
例えば夫を亡くした妻が、夫名義の口座に預金があるのに葬儀代や病院代の支払いが出来ない、生活費どうしようという、切羽詰まった状態は回避できます。
引き出された預金はどう処理する?
法改正第2の3「遺産の分割前に遺産に属する財産を処分した場合の遺産の範囲」では、預金を引き出した人(処分した人)以外の相続人が同意すれば、引き出した人の同意を得ることなく、引き出された預貯金を遺産分割の対象に含めて分割し、引き出されてない場合と同じ分割が出来るようになります。引き出されたことで不公平にならないようにするためです。
※引用 法務省HP/相続開始後の共同相続人による財産処分について
例えば、被相続人が父、相続人は兄弟2人、遺産は預金2000万円の場合で、兄は遺産分割前に1000万円をコッソリと引き出していました。しかも、兄はすでに、家を建てる時の頭金や個人事業の資金援助などの特別受益2000万円がありました。
相続財産は本来、預金分2000万円+兄の特別受益の元戻し2000万円で4000万円となり、
兄 4000万円×1/2-2000万円=0
弟 4000万円×1/2=2000万円
となるのですが、分割前に兄が1000万円引き出したために、弟は1000万円しか受け取れなくなってしまいます。民事訴訟でも救済が困難な状態でした。
今回の改正により、引き出した兄の同意がなくても本来の取り分を計算でき、足りない分を代償金で受け取ることが出来るようになります。
詳しくは法務省HPをご覧ください。
執筆者:林智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
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