人工知能などの新技術が変えていく、銀行やお金の近未来 ~サンフランシスコ FINOVATE2019から最新レポート ~
ファイナンシャルフィールド / 2019年7月7日 11時0分
2019年5月7、8日、サンフランシスコで開催された「FINOVATE 2019」には、銀行やお金の分野におけるフロントランナー企業が多数集結しました。私たちには縁遠く感じるこのようなイベントが、実は我々の生活を変化させています。
Uber (ウーバー)による人工知能(AI)技術の進化
米国の代表的な配車サービスであるUber(ウーバー)やLyft(リフト)は、アプリで決済登録を済ませれば、財布を出さずにスマートに下車する(インビジブルペイメント=見えない支払いをする)ことができます。
UberのFranziska Bell氏も、FINOVATEに登壇しました。同社が最近発表した「One-Click Chat」では、運転手とユーザーが簡単に連絡を取り合うことが可能です。ここにも、AIがフル活用されています。
かつては、「I’m washington for you → I’m waiting for you、Where r u? → Where are you?」と、誤入力や省略をAIが自動修正していました。
今は出来るだけテキストを打たなくてもよいように、簡単な選択肢が用意されており、クリックするだけとなっています。さらに、これからは話しかけるだけでやり取りができる形に進化していくようです。
また、Uberでは1週間に数百万の改善要求が集まります。そのデータをいくつかのカテゴリーに自動分類して、それぞれに一番合う回答を出すことにもAIが使われています。
大手銀行の変化
銀行もかなり変わってきました。例えば、Chatbot(チャットボット)と呼ばれるAIを使った自動チャット対応システムが発展し、支店に行かなくても、ちょっとしたことはモバイルで簡単に問い合わせられるようになっております。
Bank of Americaでは、AI搭載仮想アシスタント「Erica」の開発にかなりの資金を投じたようです。また、印象的だったのは海外では日本と異なり、複数の銀行がOfficial ChatbotにFacebook Messengerを採用していることです。
US Bankも外部パートナーや外部技術の導入を積極的に行っており、程度の差はありますがAIを使ったアプリケーションは既に100以上になるそうです。
新興企業による銀行サービスの変化
変わりつつある大手銀行ですが、その一方で、ユーザー目線で簡便性を追求した新しい形の銀行が登場しています。緩和された各国の金融庁から銀行ライセンスを得る「チャレンジャーバンク」や、銀行と提携し、新しいモバイルバンキングを提供する「ネオバンク」です。
これらを利用すれば、ユーザーはモバイルだけで複数口座を管理し、自由に送金したり、自動的に投資や貯蓄ができます。また、少額ならば簡単に借りたり返したりすることも可能です。
今、日本の銀行とベンチャーが連携し、目指している近未来のサービスが、米国では先に実現しています。
例えば、クレジットカードをニーズに合わせて細かく自由に制限し、子供や家族に渡すことができる機能があります。これを銀行が顧客に提供できるよう、技術提供する「Agora」というサービスがあります。
また、「BLUERUSH」というサービスは、ありきたりな通知メールではなく、メールからワンクリックで自分向けにパーソナライズされた投資信託や年金運用の動画が立ち上がります。
他にも、「引退に必要な金額はいくらだと思いますか?」という質問に、スライダーを動かして簡単に答えるなど、インタラクティブな要素を取り入れています。
生活者を取り巻くお金の変化
「FINOVATE 2019」では、上記の他にも今までにない先進的なサービスが紹介されておりました。その一部を紹介したいと思います。
「better.com」
住宅ローンの申し込みをオンラインから受け付けることで、住宅ローンを他の銀行よりも低金利で提供しているサービス。
「Kin.」
不動産のインスペクション(建物状況調査)に航空写真などのビッグデータやAIを活用し、期間も費用も抑えてユーザーに住宅保険を提供するサービス。
「Waffle」
従来型保険から新しい「モノ保険」まで、モバイルから簡単に選んで契約できるサービス。
「CollegeBacker」
新しい学資貯金の形として、子供を将来大学に送るための費用を、両親や親戚、友人で少しずつプレゼント。きちんと学費に使われるならば、贈与ではなくtax freeになる制度を活用したサービス。
「ARIA」
Neener Analyticsという企業のAI Chatサービス。会話形式で(例:車の購入、家のローン、収入、老後など)、ユーザーの将来リスクをわかりやすく分析して、助言していきます。会話の度に画面上の複数メーターが動くのがユニークです。
アメリカをはじめ、海外では様々なお金にまつわるサービスがリリースされています。今後、日本にも様々なサービスがリリースされ、変化していくかもしれません。定期的に情報収集をして、自分にあったサービスを探してみてはいかがでしょうか。
執筆者:鈴木 陽三(Yozo Suzuki)
SV-FINTECH & SV FRONTIER
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