記念貨幣の100円と毎日使っている100円 価値ってどのぐらい違うの?
ファイナンシャルフィールド / 2019年7月9日 9時15分
キャッシュレス社会の進展が話題になっている昨今ですが、日常で硬貨を使うシーンはまだまだ多いのが現状です。現在発行されている硬貨は、[500円、100円、50円、10円、5円、1円]の6種類です。 しかしこれとは別に、「・・・記念」のようなタイトルがつけられた、「10万円金貨」、「1万円金貨」、「1000円銀貨」などの硬貨を目にすることもあります。身近だけれど奥深い硬貨の世界を、少しだけのぞいてみましょう。
近年、たくさんの種類が発行されている記念貨幣とは?
財務省のホームページ(末尾※1参照)を見ると、わが国の通貨は「紙幣(日本銀行券)」と「貨幣(硬貨)」の2つに分けられています。そして貨幣には「通常貨幣」と「記念貨幣」の2種類があるようです。
【通常貨幣】
(1)現在発行されている貨幣
(2)現在発行されていないが通用力を有する貨幣
(1)は、6種類です。ちなみに1円は、初発行(昭和30年)以来同じデザインです。(2)は、旧デザインの500円・100円・50円・10円・5円があり、合計8種類です。
【記念貨幣】
財務省は、「内閣の閣議決定を経て、国家的記念事業として発行されています」と説明しています。そして、次のとおりとてもたくさんの種類が発行されています。(末尾※2参照)
実に合計203種類。都道府県別のデザインを各1種類とみなしても110種類を超えています。また、それらの多くが2008年以降に発行されたものであることがわかります。
特に最近は、改元、ラグビーワールドカップ、東京オリンピック・パラリンピックなど、イベントがめじろ押しといった背景もあるのでしょう。
記念貨幣は最初から額面以上で販売されるケースも
通常貨幣は、額面で発行されます。発行数が少ないとか、個別にエラーが見られるといった理由でプレミアがついて、市中で取り引きされる場合もないわけではありませんが、それはあくまで例外的な事象です。
それに対して記念貨幣は、金融機関の窓口で額面引き換えできるものもありますが、「貨幣セット」などとして当初から額面を大きく上回る金額で販売されるケースが多くあります。
製造・販売しているのは、2003年4月に独立行政法人化された造幣局です。
一例をあげると、2018年に販売された「明治150年記念千円銀貨幣プルーフ貨幣セット」は、9000円(消費税・送料込)でした。表面がとてもカラフルなデザインで直径40ミリメートルの純銀製でできており、立派なケースに収められています。
容器や発送にかかるコストはさておき、通貨として使う場合の価値はなんと1000円です。この例からも販売金額が、額面金額を大きく上回っていることがわかると思います。
造幣局のホームページ(末尾※3参照)では、「その素材に貴金属を含む記念貨幣のうち、製造に要する費用が額面価格を超えることから製造費用及び額面価格を下回らない範囲の価格で、造幣局が販売するプレミアム型の貨幣」として「プレミアム貨幣」を説明しています。
また、「収集用として特殊な技術を用いて製造した貨幣で、表面に光沢を持たせ、模様を鮮明に浮き出させた貨幣」として「プルーフ (Proof)貨幣)」も販売するとあります。
このほかに6種類の通常貨幣(未使用)各1枚(額面合計666円)と干支イラストと製造年文字数字を表裏にあしらったメダル1枚をケースに入れた「ミントセット」が、継続販売(平成31年銘で消費税・送料込2000円)されています。
ちなみにネットで販売中の事例を検索してみるとほんの各一例ですが、「明治150年記念千円銀貨幣プルーフ貨幣セット」2万2000円とか「平成31年銘ミントセット」7900円などの価格表示も見当たりました。
世の中にはひとつのモノに複数の価格(評価)がつく場合があります。しかし、本来はモノの価値尺度や交換手段であるはずの貨幣に、「額面」・「(当初)販売」・「取引」の3つ(さらに「取引」には幅もあるでしょう)の別価格が存在する場合があるというのは、何だか複雑な思いもします。
2024年に予定される3紙幣(一万円、五千円、千円)刷新に先行して、2021年には500円硬貨も新デザインに刷新されます。
社会のキャッシュレス化が進展するにしたがい、貨幣は今後どのような位置づけになっていくのでしょうか。もしかすると記念品としての側面をますます強めていくことになるのかもしれません。
出典:(※1)財務省「通貨(貨幣・紙幣)」
(※2)財務省「記念貨幣一覧」
(※3)造幣局「貨幣Q&A:プレミアム貨幣、プルーフ貨幣とは何ですか?」
執筆者:上野慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士
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