遺産相続を巡る争いが2020年7月10日以降なくなるかもしれないワケ
ファイナンシャルフィールド / 2019年7月10日 9時30分
資産家が亡くなった。相続人の1人が遺言書を発見! コッソリ見ると、自分にとっては不利な遺言。びりびりと破り、クシャクシャ、ポイッ・・遺産相続を巡る争いのドラマによくあるシーンですが、2020年7月10日以降、これが見られなくなるかもしれません。
遺言書は3種類
遺言書には、自筆証書遺言と公正証書遺言、秘密証書遺言があります。
公正証書遺言は公証人が遺言者の言うことを文書にまとめ作成し、原本を公証人役場で保管します。破棄されたり、改ざんされたりの心配はありません。しかし、費用が掛かります(財産の金額により費用が異なります)。
自筆証書遺言は、費用も掛からず、自分の思ったときに作成できますが、全文、日付、署名と全て自筆で作成しなければなりません。
そして、いざ相続が発生し、遺言書の保管者や遺言書を発見した人は、家庭裁判所に検認の申し立てをして、相続人の立ち会いの上、開封をしなければなりません。勝手に開封すると5万円以下の過料です(民法 第千五条)。
秘密証書遺言は、自筆に限りません、パソコンでも、第三者でも、作成方法は何でも良いのです。封筒に入れ封をして遺言書と同じ印鑑で封印した封筒に、公証役場で公証人及び証人2人に、確かに自分の遺言であることを証明してもらいます。
公証人が日付とその旨を記入し、署名捺印。続いて証人、本人が封書に署名捺印します。費用は1万1000円と安くすみますが、公証役場では保管されませんし、手間が掛かります。
開封する場合は、自筆証書遺言と同じく家庭裁判所に検認を申し立てなければなりません。よって、費用が掛かるのに手間も公正証書遺言のごとくかかります。また、開封するまでは、無効かどうかは分かりません。
法務局における自筆証書遺言の保管制度
民法及び家事事件手続き法の一部(相続関係)を改正する法律の中に、遺言制度に関する見直しがあります。2020年7月10日から、自筆証書遺言を法務局で保管の申請が出来るようになります。
法務省で定める様式に従って自筆証書遺言を作成し、封のされていない状態で法務局に申請します。法務局において原本を保管するためです。よって、誰にも見せずに封印をしてしまう秘密証書遺言は、法務局での保管が出来ません。保管されると、生前中は遺言者以外の方の閲覧は出来ません。
しかし、自分が死亡した者の相続人や受遺者となる場合、その法務局に遺言者が保管されているかどうかを証明した「遺言書保管事実証明書」の交付を請求することが出来ます。相続人の誰かが交付や閲覧をした場合、他の相続人に遺言書があることが通知されます。
法務局で保管された遺言書は、原本が保管されているため検認の必要はありません。法務局での保管は、2020年の7月10日が施行期日です。その前に提出しても保管はされませんので、ご注意ください。
※保管の申請や遺言書の閲覧請求、遺言書情報証明書又は遺言書保管事実証明書の交付の請求には手数料が必要です。
<引用>法務省「法務局における遺言書の保管等に関する法律について」
自筆証書遺言の注意点
自筆証書遺言についての改正は、「自筆でない財産目録の添付が可能」が、2019年1月13日に施行されています。
「自筆でない財産目録の添付が可能」について、これはパソコンでも、誰かに作成してもらっても構いませんが、別紙で作成する場合に限ります。本文と同じ用紙に財産目録を書く場合は、自筆で書かなくてはなりません。
自筆ではない財産目録の作成をした場合は、それぞれのページに署名押印します。複数枚ある場合は各ページに署名押印します。この場合の印鑑は、本文に押印する印鑑とは同じものでなくても構いません。
訂正する場合は、遺言者が変更の場所を指示して、変更したことを書いて署名し、その変更の場所に印を押します。自筆の場合でも、自筆によらない場合でも同じです。そして、書式に従い、日付に吉日などは使わず、ちゃんとした日付を入れます。
遺言書は何度も書き直すことができ、日付が新しいものが有効になります。よって、日付はハッキリさせます。
<引用>法務省「自筆証書遺言に関するルールが変わります」
詳細は、法務省「民法及び家事事件手続き法の一部を改正する法律について」をご覧ください。
執筆者:林智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
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