2019年7月から遺産相続が変わる!改正のポイントとは(前編)
ファイナンシャルフィールド / 2019年7月11日 8時30分
民法(相続法)が昭和55年以来約40年ぶりに大幅に見直され、改正法が2018年7月に成立しました。 改正法の規定は2019年1月より段階的に施行され、1月には「自筆証書遺言の方式を緩和する方策」が、7月には「預貯金の払戻制度」「遺留分制度の見直し」「特別寄与等」の規定が施行されました。 2020年4月には「配偶者居住権」の新設等が施行されます。本稿では7月に施行された規定について2回に分けてポイントをお伝えします。
預貯金の払戻制度が創設された
預貯金が遺産分割の対象となる場合、各相続人は、遺産分割の終わる前に、一定範囲の預貯金の払戻しを受けることができるようになりました。施行日は、2019年7月1日です。
改正前、相続された預貯金は遺産分割の対象財産に含まれるので、共同相続人による単独での払戻はできませんでした(平成28年12月19日最高裁大法廷決定)。
しかし、葬儀費用などの支払のためであったとしても、遺産分割が終了するまで、被相続人(亡くなった方)の預貯金の払戻ができないというのは不都合です。
そこで、改正法では、遺産分割における公平性を図りつつ、相続人の資金需要(葬式費用の支払いなど)に対応できるように、預貯金の払戻をできるようにしました。
具体的には、仮払いの必要性があると認められる場合は、他の共同相続人の利益を害しない限り、家庭裁判所の判断で仮払いが認められるようになりました(家事事件手続法の改正)。
また、遺産に属する預貯金債権のうち、一定額については、家庭裁判所の判断を経ずに、単独で払戻を受けることができるようになりました。
ちなみに、単独での払戻を受けることができる額は、「相続開始時の預貯金債権の額×1/3×当該払戻を行う共同祖族人の法定相続分」となります。ただし、1つの金融機関から払戻を受けることができるのは150万円までです。
例えば、被相続人の預貯金が600万円で、相続人が長男と次男の場合、長男が単独で払戻を受けることができる額は100万円ということになります。
遺留分制度の見直し
遺留分とは、相続人の生活保障を図るための最低限相続できる取り分をいいます。ただし、遺留分を有するのは兄弟姉妹以外の相続人です。父母や祖父母などの直系尊属だけが相続人である場合は、被相続人の財産の1/3、それ以外の場合は1/2が遺留分になります。
遺留分を主張できる権利(遺留分減殺請求権)は、遺留分権利者が、相続の開始と被相続人が遺留分を侵害する贈与などを行ったことの両方を知った時から1年以内、相続開始の時から10年以内に行使する必要があります。
今回の改正により、遺留分を侵害された相続人は、被相続人から贈与などを受けた者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭を請求することができるようになりました。
なお、贈与などを受けた者が金銭を直ちに準備することができない場合には、裁判所に対し、支払期限の猶予を求めることができます。施行日は、2019年7月1日です。
この改正により、遺留分減殺請求権の行使による共有関係が当然に生ずることが回避できるようになります。不動産の共有トラブルは結構多いです。また、遺贈や贈与の目的財産を受遺者等に与えたいという遺言者の意思を尊重することもできます。
遺留分侵害額は、「遺留分−遺留分権利者の特別受益の額−遺留分権利者が相続によって得た積極財産の額+遺留分権利者が相続によって負担する債務の額」で計算した額になります。
その他、遺留分を算定するための財産の価額として、生前贈与の額は相続開始前、原則10年以内のものなど、といった期間制限も定められました。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー
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