友人からの一言「95歳まで生きたら2000万円不足する!」これって本当?嘘?

ファイナンシャルフィールド / 2019年7月12日 8時30分

写真

「95歳まで生きたら2000万円不足するって本当? 」という声がちまたであふれています。ことの発端は、麻生大臣が金融庁からの金融審議会市場ワーキング・グループ報告書を受け取り拒否したことでした。   しかしこの報告書をよく読むと、本来の趣旨が別な観点にあることが分かります。老後に2000万円が本当に必要なのか、報告書を読み解きながら確かめていきましょう。  

報告書の本来の趣旨は注意喚起

この報告書は、ライフステージ別に「資産形成・管理」の留意点を述べることで、超高齢化社会に向き合うわれわれへ注意喚起をしています。以下に本報告書の趣旨をまとめてみました。
 
(1)現役期
長生きすることを見越して、早い段階からの資産形成の有効性を認識し、長期・積立・分散投資など、少額からでも資産形成を始める。そして、自らにふさわしいマネープランを検討する。
 
(2)リタイア期前後
リタイア期以降の人生を考えて、資産運用を継続する。また資産の取り崩しの計画を立てておく。就労継続や収支の改善策を実行することも重要。退職金がある場合、それを踏まえたマネープランを検討する。
 
(3)高齢期
資産を計画的に取り崩しながら、認知・判断・能力の低下や喪失に備えておく。心身の衰えを見据えて、マネープランの直しを行う。
 

おすすめ関連記事

現状、老後にお金でそれほど困っていない?

この報告書では、老後にそれほどお金の不安を感じる必要がないデータも示されています。一つずつみていきましょう。
 
(1)夫が95歳まで長生きすると夫婦で2000万円不足するは本当?
報告書の中で、「高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)」の収入・支出を表した図によると、実収入20万9198円、実支出26万3718円なので差し引き5万4520円が不足するとしています。
 
夫が95歳になるまでの30年間で計算すると、5万4520円×12ヶ月×30年=1962万7200円 となり、約2000万円不足することになります。この数字がいわゆる老後2000万円不足するとされる根拠です。
 
しかし上記は、夫が65歳から95歳になるまで高齢夫婦無職世帯の収支が変わらないとした場合の単純計算で、実態は高齢になるに従い毎年の収支の赤字額は減ってくるはずです。
 
報告書の10ページにある「高齢層の支出額の推移」のグラフでは、50代から60代、そして70代へとそれぞれ約2割ずつ支出額が減少していることが示されています。仮に、10歳年を取ると2割支出額が減るとして不足額を計算すると、概算は以下のようになります。
 
5万4520円×12ヶ月×10年+(26万3718円×0.8-20万9198円)×12ヶ月×10年+(26万3718円×0.64-20万9198円)×12ヶ月×10年=190万5350 円 となり、2000万円ではなく約191万円の不足になります。
 
(2)退職金について
報告書では、退職金給付の状況も同時に示されています。13~14ページによると、80.5%の企業が退職金を給付しており、平均退職給付額は、毎年減少しているものの、2017年では大学・大学院卒(管理・事務・技術職)で1997万円となっています。
 
つまり、厚生労働省が取り上げているような平均的な夫婦は、定年時に退職金約2000万円を受け取っていることになります。それをうまく取り崩しながら生活すれば、老後にそれほどの不足はないと言えます。
 
また仮に、退職金2000万円を年利2%で資産運用しながら30年間で取り崩すとすると、2000万円×0.0446(資本回収係数)=89.2万円を毎年使うことができます。資産運用しないで取り崩す場合は66万円/年なので、毎年約23万円余分に使うことができます
 
(3)金融資産の保有状況について
さらに報告書では、世帯主の年齢階層別貯蓄額も掲載されています。報告書16ページによると、世帯主60歳~69歳の夫婦世帯の貯蓄額は2129万円、70歳以上では2059万円となっています。また、65歳時点における金融資産の平均保有状況では、夫婦世帯で2252万円とも書かれています。
 
このようなデータをもとに考えると、夫婦で金融資産をうまく取り崩せば大丈夫と言えるかもしれません。
 

おすすめ関連記事

年金財政の悪化を考えて、早いうちから資産形成を始めておこう

「老後2000万円不足」問題についてそこまで悲観する必要はない、ということを見てきましたが、だからといって資産形成の必要はないと言いたいわけではありません。
 
少子高齢化で今後ますます年金財政は厳しくなることは明らかです。この報告書の中でも長期・積立・分散投資の手段として触れられている、「iDeCo」や「つみたてNISA」を積極的に活用して、早いうちから資産形成を始めておくことが重要です。
 
出典
金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」 
(※1)資料1
(※2)資料2
 
執筆者:村川賢
一級ファイナンシャル・プラニング技能士、CFP、相続診断士、証券外務員(2種)
 

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング