海外不動産投資は安全か?
ファイナンシャルフィールド / 2019年7月23日 10時0分
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ここ数年、主に高額所得者の間で「海外不動産投資」が注目されています。 先日、筆者の事務所にも「海外不動産投資」に関するご相談があり、これを機会に海外の不動産への投資に関して国内の不動産への投資との違いについて考えてみました。「海外不動産投資」のメリットとデメリットについて考えてみます。
相談事例:海外不動産への投資
これまでも東南アジア方面などの不動産に対する投資が注目されていましたが、ご相談いただいたのは「アメリカ」の不動産に対する投資のお話しでした。
筆者の事務所は「不動産業」と「ファイナンシャル・プランニング事務所」を兼ねていることもあり、こうしたご相談をお受けすることがあります。ご相談をお受けするとき「もし自分だったらその投資案件に取り組むかどうか」という観点で相談者様の立場と重ね合わせ、検討させていただいています。
今回、その会社の説明にちょっと引っかかるところがあり、海外不動産投資の現状を調べてみました。ご相談の内容は「海外不動産」への投資に関するもの。投資対象は「アメリカの一戸建て中古賃貸住宅」です。
アメリカと日本の不動産の違い
日本と比べ、アメリカの戸建て住宅は土地よりも建物の評価が高く、また、中古住宅の再販市場が成熟しており、経年での価格変化も小さいという特徴があります。
日本の税制では、海外不動産についても日本の税制を適用し、木造住宅であれば建物部分は22年で償却され、税制上の価値はほぼゼロになります。
償却期間の22年が経過した木造住宅を中古で取得した場合、簡便法という評価方法により、購入してから4年間で減価償却できるため、この分を経費算入でき、家賃収入に対して経費が大きくなることから、結果として大きな所得税の節税効果が見込めます。
こうしたメリットを享受できる人は、現在比較的所得が大きく、支払っている所得税も多い人ということになります。表面的にはメリットが出る方もいるでしょう。実際、海外不動産を購入している人は高収入の人が多いようです。
融資は?担保は?
また、通常、海外不動産投資について、日本国内の金融機関は物件に対して抵当権設定ができない(=物件の担保評価ができない)ため、融資を行わないか、国内の抵当がついていない別の物件を担保に融資を行うしかありません。
しかし、今回の場合、物件をあっせんする会社のグループにファイナンス会社を抱えており、その会社が海外不動産を担保に融資するというスキームを提案していました。
この方法であれば、確かに国内不動産同様、当初の必要資金を抑えることも可能になります。しかし、記憶に新しい最近の不祥事で金融機関が融資書類を改ざんしたように、金融機関のチェック機能が働かなくなる恐れも否定できません。
金融機関が融資することは、その物件が投資対象として適しているということにはなりませんが、その物件に根本的な問題がないかどうかというチェックには一定の効果はあるはずです。しかし、今回のようなスキーム(仕組み)の場合、その効果は期待できません。
投資対象としての判断基準
FP(ファイナンシャルプランナー)であり不動産業者でもある弊社では、その物件が投資対象として適しているかどうかについて、その立地や物件の現状なども当然確認したうえで判断すべきだと考えます。
最近はアメリカだけでなく、東南アジアなどでの不動産投資を促す会社も少なくありません。さすがに海外まで現地調査に行くことはできないため、お客様に自信をもって「この物件、案件は投資対象として適しています」とお伝えすることができません。
最終的に投資の責任は各投資家が負うものではありますが、弊社にご相談いただくお客様は、投資を行う際にどこにどんなリスクがあるかを把握し、どの程度のリスクまでを許容するかを判断するためのポイントについてアドバイスを求めていらっしゃるのだと思います。
不動産投資を行う際、物件確認は必須です。ところが、海外不動産はもちろんですが、ここ数年の間に不動産投資を始められた方の中には、国内の不動産でも現地を一度も見ることなく投資されている方が少なくありません。
すでに賃貸物件として稼働している物件の場合、居住者がおり、専有部を確認できないことが多いのは仕方ないとしても、もし空室があれば必ず中を確認しますし、満室稼働中で中を見ることができない場合でも建物の外観や共用部、駅からのアクセスや周辺環境などは必ず確認します。
自分が住む物件ならば必ず行うであろう確認は、たとえ賃貸物件でも欠かすわけにはいきません。
不動産投資では、こうした確認をしていても購入後に何らかのトラブルが発生する可能性はあります。しかし、事前にトラブルのもとになりそうな芽は摘んでおかなければ、不動産業者として適しているとは言えないと思います。
今後の税制変更にも注意
海外不動産で大きな減価償却費を経費処理して節税するスキームは、最近、会計検査院や国税庁でも目を付けていると言われており、今後課税方法の変更もあり得ます。
不動産はその名の通り「動かせない資産」「流動性の低い資産」であるため、長期にわたっての事業性がポイントですし、投資用資産の場合には売却時のこと、すなわち「出口戦略」も重要です。
日本の不動産であれば、事情の分かる不動産業者もたくさんいるので、売却時にも「競争の原理」を働かせることもできますが、海外の不動産では売却時にも買った業者に相談するしかなくなる可能性もあります。
投資判断は慎重に
繰り返しになりますが、投資の責任は投資家自身が負うものです。すべてがそうというわけではありませんが、中には「詐欺まがい」のものもあるかもしれません。
もちろん、現地やその周辺の状況に精通し、言語等のコミュニケーションも問題なく、信頼できるルートがあり、自分自身も目利きができるのであれば海外不動産も投資対象として活用できるでしょう。
今回のような物件や紹介する会社の営業に「なるほど、いい投資案件だ」と思う人もいるかもしれません。しかし、必ず「当たり、ハズレ」が出てくると思います。
海外不動産はもちろんですが、国内不動産でも投資対象の選択は重要です。また、不動産も現物資産ですから、単純に節税だけでなく、物件の価値などを冷静に見極め、判断することを忘れてはいけません。
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役
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