高齢者は平均で2252万円保有?若い人が自分の老後のために知っておきたい公的年金の仕組み
ファイナンシャルフィールド / 2019年7月28日 23時0分
金融審議会の報告書が物議を醸しています。人生100年時代、公的年金以外に30年間で平均2000万円が必要だと指摘。「老後資金2000万円必要」の部分がクローズアップされ、年金不安が広がっています。 この金額はあくまで平均の不足額から導かれたものであり、不足額は各々の収入・支出の状況や働き方等によって大きく異なるのはいうまでもありません。大切なのは、公的年金のしくみを知り、自らの不足額を導き出し、対策を立てることではないでしょうか。
老後資金2000万円必要の根拠
金融審議会の報告書によると、夫65歳以上、妻60歳以上、夫婦のみの無職世帯の1ヵ月の支出は、平均で約26万4000円。これに対して収入(ほとんどが公的年金)が約20万9000円。
したがって、毎月の不足額の平均は約5万円となり、まだ20年~30年の人生があるとすれば、単純計算で不足額の総額は1300万円~2000万円になると指摘しています。
なお、支出には、老人ホームなどの介護費用や住宅リフォーム費用などの特別な支出は含まれていない点は留意する必要があります。
一方、この金額はあくまで平均の不足額から導き出したものなので、不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイル等によっても大きく異なるとも指摘しています。
なお、不足額は保有する金融資産から取り崩していくことになりますが、65歳時点における金融資産の平均保有状況は、夫婦世帯、単身男性、単身女性のそれぞれで、2252万円、1552万円、1506万円となっています。
公的年金のしくみを理解する
金融審議会の報告書が指摘するように、不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイル等によっても大きく異なります。老後の収入の柱である公的年金の受給額は自営業者か、会社員・公務員かなど働き方で大きく異なります。
なぜ、大きく異なるのか公的年金のしくみを理解しましょう。日本に住む20歳以上60歳未満の人は国籍を問わず全員が国民年金に加入します。さらに、会社員や公務員は厚生年金保険にも加入します。その分、自営業者等に比べ年金額が増えます。
受給額(平成31年度価額)は、原則65歳から、自営業者の場合、国民年金(基礎年金)が満額で月額約6.5万円、会社員(平均収入月42.8万円で40年加入)は平均で月額15.6万円(基礎年金+厚生年金)となっています。
このように、公的年金だけで老後十分な生活を送ることはできません。特に、自営業者等は会社員等に比べ年金の受給額が低いので、早くから自分で貯める必要があります。
公的年金は「保険」であることを理解する
公的年金は自営業者、会社員などの現役世代が保険料を支払い、その保険料で高齢者世代の年金を給付するという「世代間扶養」のしくみとなっています(賦課方式)。
つまり、自分が積み立てた保険料が将来、年金として戻ってくるしくみ(積立方式)ではありません。積立方式と違い賦課方式ではインフレリスクにある程度対応できます。
年金給付の財源は、その年の保険料収入と国庫負担で9割程度が賄われていて、積立金(GPIFが運用)から得られる財源は1割程度です。
公的年金は長生きリスクに対する老齢年金だけではありません。一定の障害状態になり働けなくなったら障害年金が、万一のときの遺族の生活保障として遺族年金が給付されます。
このように、公的年金は、「老齢」「障害」「死亡」といったリスクに備えるために、みんながお金を出し合って助ける「保険」なのです。ですから、「払った保険料の何倍年金をもらえるか」といったように金融商品と同じように考えがちですが、これ自体おかしなことです。
収支をシミュレーションし、不足額の対策を考える
老後の生活の柱は公的年金です。自分が将来もらえる年金は毎年誕生月に日本年金機構から送られてくる「ねんきん定期便」で予測できます。
50歳以上の方は今と同じ条件で60歳までは働いた場合の年金見込み額がわかります。50歳未満の方は、これまでの納付実績に応じた年金額が載っているだけですので、今後増える年金を自分で計算する必要があります。
老齢年金は40年間納めてもらえる金額が年額約80万円ですので、1年あたりの納付で約2万円年金が増えます。収入に応じて決まる厚生年金は、(退職予定年齢−今の年齢)×現時点から退職までの平均年収×0.005481で簡易的に計算できます。
なお、日本年金機構が運営するインターネットサービス「ねんきんネット」を利用すれば、より詳細に自分の年金見込み額がわかります。
支出は一般的に現役世代の7割程度と言われています。不足額は、収入を増やすか、支出を減らすか、資産運用で賄うのかのいずれかの方法で行います。自分にあった方法で老後資金の準備を始めましょう。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー
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