保険に入る前に知っておきたい「健康保険制度」どんな給付を受けられる?
ファイナンシャルフィールド / 2019年8月6日 9時30分
前回、民間の保険に入るときは、公的保障を前提に組み立てていきましょうというお話をしました。今回からは、どの保険商品に対して、どのような公的保障があるかという視点で、ポイントを整理していきたいと思います。
ポイントは自己負担割合!健康保険制度について理解しておこう
まずは「健康保険制度」です。民間の医療保険に入る際は、必ず健康保険制度について意識するようにしてください。なぜなら、健康保険制度の上乗せ保障として、民間の医療保険があるからです。
それでは、健康保険制度について見ていきましょう。大きく3つに分けられます。
(1)国民健康保険(国保)
(2)組合健保
(3)全国健康保険協会(協会けんぽ)
細部まで理解しようとすると、かなり複雑なので、簡単に説明します。(1)は自営業者など、(2)は主に大企業の会社員など、(3)は中小企業の会社員などが入る健康保険制度です。ちなみに、公務員は共済組合のもと健康保険制度に入っています。
健康保険制度は、病気やケガをした場合に治療費などの給付が受けられるといったイメージがありますが、民間の医療保険との兼ね合いで考えると、知っておいた方がいいポイントは、やはり「自己負担割合」でしょう。
小学校就学前までは2割、それ以降70歳未満は3割、70歳以上は低所得者・一般・現役並みといった所得の違いによって、1割、2割、3割となっています。
もう少し細かく見ると、平成26年4月以降で70歳になる人は、低所得者と一般の所得水準の場合、自己負担割合は2割、現役並みの所得の場合は3割(※)となっています。
そして、75歳になると、後期高齢者医療保険制度のもと、低所得者と一般の所得の場合は、自己負担割合は1割、現役並みの所得の場合では、自己負担割合は3割となっています。
理解の仕方としては、一般的に、70歳未満が3割、70歳から74歳までが2割、75歳以上が1割と考えて差し支えありませんが、今後進むであろう超高齢化社会においては、医療費の増加が懸念されるため、特に、70歳から74歳までの自己負担割合が3割に引き上げられる可能性がないとはいえません。
このようなことも見越し、民間の医療保険とのバランスを考えておくことも必要でしょう。
健康保険制度は、どのような給付を受けられるのか?
それでは、健康保険制度では、どのような保障を受けられるのでしょうか。国民健康保険(国保)と、組合健保・協会けんぽでは、多少内容が異なるため、ここでは、加入者数の多い協会けんぽにおける保障について簡単にまとめてみます。
基本的な保障としては、「病気やケガをしたとき」の「治療や療養のため」の給付ですが、被保険者に対しては次のような給付があります。
・療養の給付
・入院時食事療養費
・入院時生活療養費
・保険外併用療養費
・訪問看護療養費
・療養費
・高額療養費
・高額介護合算療養費
・移送費
・傷病手当金
一方、被扶養者に対しては、次のような給付となっています。
・家族療養費
・家族訪問看護療養費
・家族療養費
・高額療養費
・家族移送費
すべて説明するとかなりの紙面を割く必要があるので割愛しますが、一般的な医療保険との兼ね合いで考える場合、傷病手当金以外は医療保険との関連性が高いため、給付の内容を確認したほうがよいといえます。
ちなみに傷病手当金は、働けなくなった場合の収入をカバーするための給付であるため、民間の保険でいうと、収入保障保険や就労不能保険、所得補償保険などのベースとして考えるといいでしょう。
ただし、国民健康保険には、傷病手当金がないことから、自営業などの方の場合、これらの民間の保険を検討する際は会社員世帯と異なる保障設計になるため注意が必要です。
他の給付についても見ていきましょう。
出産、退職、死亡時について、被保険者・被扶養者ごとに見ていきます。出産したときは、被保険者に対し、出産育児一時金と出産手当金が給付されます。出産育児一時金は、いわゆる分娩費の補助を目的にしています。これに対し出産手当金は、産休期間中の収入補填が目的です。
言葉がややこしいので、一時金が分娩費、手当金が収入保障というような覚え方をしてみてください。被扶養者に対しては、家族出産育児一時金が給付されます。これも分娩費の補助ですね。
これらについては、正常分娩の場合、病気ではないため民間の医療保険ではカバーされませんが、例えば帝王切開などの手術を行って出産した場合、民間の医療保険から手術給付金が支払われます。
また、雇用保険制度における育児休業給付金とも関連してくるため、妊娠した後は、国の産休・育休制度とあわせ確認するようにしましょう。
次に退職したときですが、被保険者に対しては、それぞれに給付の条件はあるものの、傷病手当金・出産育児一時金・出産手当金・埋葬料(費)が受けられるようになっています。被扶養者は対象外です。
ここでのポイントは、退職した後でも給付されるという点です。民間の保険でいうと、先ほどの傷病手当金や出産育児一時金、出産手当金と重なるため説明は省きますが、埋葬料(費)については、いわゆる死亡保険と関わってくる公的保障と言えます。
そして、死亡したときですが、被保険者に対しては埋葬料(費)が、被扶養者に対しては家族埋葬料が給付されます。家族埋葬料については、5万円の範囲内で埋葬にかかった費用が給付されます。
いかがでしょうか。ざっと見渡しても、結構たくさんの給付が用意されています。民間の保険に入る際は、これらの給付で足りない部分を補うという目的で加入や見直しの検討をしていくようにしましょう。
健康保険制度については、この辺で締めくくりますが、次回は、特に知っておく必要のある「高額療養費制度」について見ていきたいと思います。
出典
※厚生労働省「70歳から74歳の方の医療費の窓口負担についてのお知らせ」
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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