【クーリングオフの境界線】(1)良いと思って契約したけど、考えてみたらいらない時ありませんか?
ファイナンシャルフィールド / 2019年8月6日 10時30分
商品説明を聞いているときはなんとなく良さそうに思えて契約したけれど、よく考えてみたら、何かがおかしい。契約してしまったし、どうにもならない?それ、クーリングオフ(無条件解約)ができるかもしれません。
クーリングオフとは
事業者と消費者では、情報の質・量・交渉力に格差があります。事業者と消費者の取引において、事業者の悪質な勧誘行為等を防止し消費者の利益を守るために、特定商取引法があります。
特定商取引法では、事業者の不適切な勧誘や取引を取り締まるための「行為規制」や、トラブル防止・解決のための「民事ルール」(クーリングオフ等)を定めています。
クーリングオフは、契約をしてしまった後でも、一定の期間であれば『書面によって』『無条件』で契約の申し込みを撤回・契約解除ができる制度です。
クーリングオフを行った場合、すでに消費者が商品や権利を受け取っている場合には、事業者の負担によってその商品を引き取ってもらうことや、権利を返還することができます。クーリングオフができる期間は取引によって違いますが、法定書面(特定商取引法で定められた書面)を受け取ってから8日間もしくは20日間です。
ただし、法定書面に不備があれば、期間に関係なくクーリングオフができますし、事業者が事実と違うことを告げたり、威迫してきたりしたために消費者が誤認・困惑してクーリングオフしなかった場合は、期間を過ぎてもクーリングオフができます。
特定商取引の対象となる取引
特定商取引では、契約トラブルが生じやすい7種類の取引を対象に、トラブルを防止するためのルールを定めています。
★クーリングオフ期間が8日間のもの
【訪問販売】・・事業者が、営業所以外の場所(消費者の自宅等)を訪問して、商品や権利の販売または役務の提供を行う契約をする取引。公民館やホテルを一時的に借りる展示会など、店舗とは認められないものも訪問販売に該当します。
また、路上で呼び止めて営業所に連れて行き契約させるキャッチセールスや、電話や郵便、SNSで「特別に選ばれました!」などと営業所に呼び出しての契約も、訪問販売に該当します。
【電話勧誘販売】・・事業者が電話で勧誘し、申し込みを受け付ける取引。いったん電話を切って、その後郵便や電話で申し込む場合も該当します。
また、(1)契約の締結に勧誘するためのものであることを告げずに電話を掛けることを要請することや、(2)他の人より有利な条件で契約できると告げ、電話を掛けることを要請することも、電話勧誘販売に該当します。
【特定継続役務提供】・・一定期間を超える長期・継続的な役務の提供と、これに対する高額(5万円以上)な対価の取引のことで、エステティック(1ヶ月超)、美容医療(1カ月超)、語学教室(2ヶ月超)、家庭教師(2ヶ月超)、学習塾(2ヶ月超)、結婚相手紹介サービス(2ヶ月超)、パソコン教室(2ヶ月超)が対象になっています(2019年7月現在)。
役務は対面での提供だけでなく、FAX、電話、インターネット、郵便等の場合も含まれます。役務提供を受ける「権利(特定権利販売)」も対象になり、店頭契約も規制対象になります。
【訪問購入】・・購入業者が消費者の自宅等で物品の購入をすることを言います。
★クーリングオフ期間が20日間のもの
【連鎖販売取引】・・特定商取引法では、以下のように規定しています。
1、物品の販売(または役務の提供など)の事業であって、
2、再販売、受託販売もしくは販売の斡旋(または役務の提供もしくは斡旋)をする者を、
3、特定利益が得られると誘引し、
4、特定負担を伴う取引(取引条件の変更を含む)をするもの
他の人を入会させると紹介料がもらえる(特定利益)と言って人々を勧誘し、取引をするための条件に1円以上の負担(特定負担)をさせる場合であれば、連鎖販売取引に該当します。
入会金、保証金、サンプル商品、商品などの名目を問わず、何らかの金銭負担があれば該当します。マルチ商法といわれるもののひとつです。
【業務提供誘引販売取引】・・仕事を提供すると消費者を勧誘し、その仕事をするためにこの商品を買う必要があると言って、先に金銭的な負担を負わせる取引のことを言います。いわゆる内職商法のひとつです。
例えば、
・ホームページ制作の在宅ワークを募集し、仕事に必要と指定のパソコンやソフトを購入させる
・着物の展示会の仕事で募集し、仕事に必須だからと購入させる
・入力の在宅ワークを募集し、費用を払って指定の研修を受けなければならないとする
等があります。
★クーリングオフはないが返品の制度があるもの
【通信販売】・・事業者が、新聞・雑誌・インターネット等で広告を出して、消費者が郵便・電話やインターネット等で購入する取引。例えば、テレビショッピング等が該当します(※電話勧誘に該当する場合は除きます)。
通信販売にはクーリングオフ制度はありませんが、広告に返品特約があれば特約に従い、ない場合は8日間以内であれば返品が可能です。
こんな場合はクーリングオフができない
通信販売だけでなく、クーリングオフができない場合があります。
例えば、
・消耗品(化粧品や健康食品等)などの、使ってしまうと商品価値がなくなる物を使ってしまった場合
・現金取引の場合で代金が3000円未満の場合
・自分の意志で店舗に出向いたり(特定継続役務を除く)、申し込みの意志を持って自宅に来てもらう場合
以上は、クーリングオフができません。
個人間の取引の場合は商取引になりませんし、個人事業主でも事業主として契約した場合はクーリング・オフ適用外です。判断に迷ったら、一人で悩まず消費者ホットライン(局番なし)188に相談しましょう。
<参照>
経済産業省HP「通信販売のルールが変わります」
消費者庁HP「特定商取引法」
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者
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