【クーリングオフの境界線】(2)良いと思って契約したけど、考えてみたらいらない時ありませんか?
ファイナンシャルフィールド / 2019年8月7日 10時30分
平成12年に、消費者の利益を守るための法律「消費者契約法」が施行されました。不当な勧誘による契約は後から取り消すことができ、消費者の利益を不当に害する契約条項は無効となります。 一般消費者と事業者では情報量や交渉力等が違うため、消費者が気付かないうちに、事業者に都合の良い条件で契約されてしまうことが多いからです。消費者が事業者とした契約であれば、あらゆる契約が対象です。 さらに、判断能力が衰えつつある高齢者や社会経験が乏しい若者を狙っての商法の被害を救済するため、平成28年、平成30年の改正で、取り消しや無効になる範囲が拡大しました。 取り消しできる期間は、平成28年の改正で、「だまされて契約したことに気づいた時から1年間」に伸長されました。5年間で時効です(取り消し期間内であっても、取り消せないケースもあります)。 何だかおかしいと思っても、クーリングオフ期間は過ぎている。でも、そもそもその契約自体、法的に無効かもしれませんよ。
不当な勧誘の契約は、後から「取り消す」ことができます
消費者が事業者とした契約が、不当な勧誘によるものの場合、後で取り消すことができます。不当な勧誘には、以下のものがあります。
■「不実告知」・・重要なことについて事実と違うことを告げる。
例:「誰でも利益が出せます。出なければ返金保障」と言われて情報商材を買ったが、言われたとおりにやっても全く利益が出ないし、言っても返金もされない。
■「断定的判断の提供」・・不確実なことを確実と告げる。
例:◯◯画伯の版画は枚数が限られているので、必ず値が上がる」と言われた。
■「不利益事実の不告知」・・不利になることをわざと告げない。わざとでなくても事業者の過失や知識不足によって告げなかった場合も対象。
例:毎月分配金型の投資信託を、毎月分配金がもらえる商品だと告げて、運用がうまくいかなかった場合は元本を削って配当金を出すことは言わない。
■「不退去」・・帰って欲しいと言ったのに帰らない。
■「退去妨害」・・帰りたいと言ったのに勧誘を続け帰さない。
■「過量契約」・・消費者にとって通常の量を著しく超えると知りながら販売する。
例:一人暮らしの高齢者に、来店の度に、とても一人では消費しきれない量の健康食品を次々に契約させる。
「取り消す」ことで●●商法の被害から身を守る
判断能力が低下してくる高齢者を狙った契約による被害や、令和4年4月から成年年齢が20歳から18歳に引下げられることにより、社会経験が浅い若者がだまされる被害を防ぐために、平成30年の法改正で取り消しができる事項に追加・新設がされました。
■「不安をあおる告知」・・将来の不安をあおって、それを解消するには契約が必要と言う。
例)就職セミナー商法等・・就活中の学生に、「このままでは一生ダメなまま。成功するにはこのセミナーが必要」と契約させる。
■「好意の感情の不当な利用」・・契約しなければ、この関係を続けられないと言う。
例)デート商法・友達商法等・・たまたまSNSで知り合い、相思相愛になった(と本人は思っている)相手に宝石の展示会に連れて行かれ、「買わないと関係は終わり」と告げられる。
■「判断力の低下の不当な利用」・・年齢や障害により判断力が低下しているために、現在の生活を維持することに大きな不安を抱いていることを知りながら、不安をあおって契約が必要と告げる。
例)「このままでは資産がどんどん減るばかり。運用をして増やしましょう」と、仕組みが分からない高齢者に、手数料が高い毎月分配型の投資信託を勧める。
■「霊感等に知見を用いた告知」・・特別な能力で、消費者にこのままでは重大な不利益が生じることを示して不安をあおって、契約が必要と告げる。
例)霊感商法等・・「貴方に●●がついているから、このままでは症状が悪化する」と不安をあおって高額な数珠を買わせる。
■「契約締結前に債務の内容を実施等」・・契約前に契約内容の一部でも実施して、損害賠償として強引に代金の請求をする。
例)隣の県のナンバーを付けた竿竹屋が通りがかり、「2本で1000円」と言っていたので呼び止めたら、勧められたのは1本5000円のもの。断ったのに、勝手に物干し台の幅に竿を加工し、戻せなくして5000円の代金を請求する。
消費者の利益を不当に害する契約は、「無効」です
事業者にとって都合が良く、消費者が一方的に損をする「不当な契約」の条項は、「無効」です。不当な契約の条項には、以下のものがあります。
■「事業者は責任を負わないとする条項」・・事業者側のみが損害賠償責任の全部を免除される、重過失や故意があっても一部が免除される契約。責任の有無を事業者が決められる条項は無効です。
■「消費者はどんな場合でもキャンセルできないとする条項」・・商品に不具合があっても消費者の解除権を放棄させる契約。
例:「当社に過失があると認めた場合を除き、キャンセルはできません」という条項。
■「成年後見制度を利用すると契約が解除されてしまう条項」・・成年後見の審判を受けたことのみを理由とした解除権の条項。
■「平均的な損害の額を超えるキャンセル料条項」・・契約の解除の時に、平均的な損害額を超える請求、遅延損害金が年利14.6%を超える場合。
解約したら、キャンセル料の支払いだけでなく、支払い済みの金銭を返さない場合なども問題になります。
■「消費者の利益を一方的に害する条項」・・信義則に反し、一方的に消費者の利益を害する。
例:掃除機を買ったら青汁が一緒に送られてきた。消費者が断らない限り承諾したとされる書類が入っており、放っておいたら掃除機の代金を決済したクレジットカードで一緒に決済され、翌月も決済された。
おかしいな……と思ったら、消費者ホットライン(局番なし)188に相談しましょう。詳しくは、消費者庁HP「消費者契約法」をご覧ください
消費者庁HP「消費者契約法」
<参照>
消費者庁HP「不当な契約は無効です!」
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者
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