医療保険の加入率は約88%。でも本当に加入したほうがいいの?
ファイナンシャルフィールド / 2019年8月7日 23時15分
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公益財団法人生命保険文化センター「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」(平成30年12月発行)によると、医療保険の加入率は88.5%となっています。 多くの方が医療保険は必要と考えているわけですが、ファイナンシャル・プランナーの中には医療保険は不要と考える方が少なくありません。医療保険への加入はどのように考えたら良いのでしょうか?
そもそも保険とは?
そもそも保険とは何か、どのような機能があるのか最初に確認しておきましょう。
保険は「1人は万人のために、万人は1人のために」という相互扶助の精神で成り立っています。多くの人が少しずつお金を出し合って資金プールを作り、その中の誰かが病気や事故などで経済的損失を被ったときに、資金プールから損失を補償する仕組みです。
病気や事故などは、いつ起こるかわからないので、「お金が貯まるまで待ってもらう」というわけにはいきません。また、死亡事故を起こし多額の賠償責任を負ったときなどは、貯蓄では間に合いません。
つまり、いつか起こるかもしれない事故や病気などによる多額の経済的損失に備えるには、貯蓄では不十分といわざるを得ません。
保険は保険料を1回でも支払えば大きな保障が得られるので、これらのリスクに備える手段として最適な方法であり、私たちが安心して生活を送る上で欠かせないものになっています。
高額の医療費は高額療養費制度でカバーできる
大きな病気やケガで手術や入院をしたとき、高額な医療費を払うことができるか不安になる方は多いのではないでしょうか?医療機関の窓口で支払う自己負担の割合は、年齢に応じて1~3割です。例えば、100万円かかる治療を受けた場合、自己負担割合が3割の方は30万円を負担することになります。
しかし、健康保険等には高額療養費制度がありますので、1ヶ月当たりの自己負担額の上限が年齢や所得によって決まっていて、限度額を超えて支払った分が申請により後から戻ってきます。
例えば、月収28万円~50万円の会社員の方(70歳未満)の自己負担の上限額は「8万100円+(総医療費-26万7000円)×1%」ですので、これ以上負担することはありません。
また、70歳未満の場合、あらかじめ保険者に申請して「限度額適用認定証」の発行を受ければ、窓口での支払いは最初から限度額が上限になります。
さらに「多数該当」といって、診療を受けた月を含めて直近12ヶ月間の高額療養費制度の適用が4回目以上になる場合、限度額が通常より低くなる(4万4400円など)仕組みもあります。
なお、入院した場合の食事療養費の自己負担分や差額ベッド代など、保険対象外の費用は高額療養費制度の対象になりませんので、貯蓄などで備える必要があります。
このように、日本の公的医療保険は高額な医療費を負担しなくて済む仕組みになっています。民間の保険は、公的保険を補完するものですので、公的保険が充実していれば民間の保険に加入する必要性は低いといえます。医療費の備えは貯蓄が基本といえるでしょう。
先進医療特約は必要?
先進医療は、厚生労働省が認めた高度な医療技術を用いた治療法や医療技術です。公的医療保険の対象になっていないので、先進医療の技術料は全額自己負担です。先進医療の技術料は高額だと思っているのではないでしょうか。実際はどうでしょうか?
平成30年度実績報告(厚生労働省)によると、先進医療(A)の実施件数で最も多いのが、「多焦点内レンズを用いた水晶体再建術」(2万3859件)、次いで、「陽子線治療」(1663件)、「重粒子線治療」(1008件)、「MRI撮影及び超音波検査融合画像に基づく前立腺針生検法」(366件)、「ウイルスに起因する難治性の眼感染疾患に対する迅速診断(PCR法)」(198件)と続いています。
1件あたりの先進医療費用は、「多焦点内レンズを用いた水晶体再建術」が約65.6万円、「陽子線治療」が約271.6万円、「重粒子線治療」が約313.4万円、「MRI撮影及び超音波検査融合画像に基づく前立腺針生検法」が約10.8万円、「ウイルスに起因する難治性の眼感染疾患に対する迅速診断(PCR法)」が約2.4万円です。
実績報告書を見ると、何百万も治療費が掛かるものは、陽子線治療や重粒子線治療ぐらいで、数十万円で受けられるものや、中には数万程度で受けられる先進医療も多くあります。重粒子線や陽子線治療は、治療できるがんの種類が限られており、また、全国でも限られた病院や機関のみで受けられる治療となっています。
先進医療を受ける確率は低いので、先進医療をカバーする特約の保険料も月数百円程度と低くなっています。先進医療保険は通常、医療保険やがん保険に「特約」として加入します。
医療保険に加入している方は別ですが、先進医療特約に入るために必要のない医療保険やがん保険に入るという考え方はあまり合理的ではないでしょう。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー
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