自分のリタイアする年を目標に、長期運用するための投資信託があるって本当?
ファイナンシャルフィールド / 2019年8月22日 9時30分
![自分のリタイアする年を目標に、長期運用するための投資信託があるって本当?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_54224_0-small.jpg)
「ファンド2030」「ファンド2040」などの西暦年がタイトルに表記された投資信託をご覧になったことがありますか? これはいわゆる「ターゲットイヤーファンド」と呼ばれるものです。 2030、2040などの西暦年は目標年次を表しています。通常は、ご自身がリタイアする年を目標年次と定め、それまでの長期的な資産運用のために設定された投資信託を指しています。
長期的な運用に適したファンド
ターゲットイヤーファンドは、もともとは1990年代にアメリカで誕生した金融商品です。比較的若い年代から始めることができる投資商品として、確定拠出年金などを通じて利用件数が拡大しました。
日本でも同様に「長期、分散、積立」という投資の鉄則を踏まえ、iDeCoやつみたてNISAでも選択できるようになっています。
各年代のリスク許容度
一般的に投資を考える場合の原則として、現役時代の若い年代、例えば20歳代の頃は「リスク許容度が高い」といわれています。つまり、平たくいえば、定期的な収入もあり、まだ若いため、たとえ失敗(ある程度の損失を負ったと)しても挽回できるということです。
そのため、ターゲットイヤーファンド内のポートフォリオ(金融資産の組み合わせ)の比率を株式などのリスク資産に多く配分します。
そして、リスク許容度は年齢が上がるにつれて低くなるといわれているため、自動的にポートフォリオを国内債券や短期資産にシフトし、その投資比率を高めていくように設定されています。
さらに、60歳代、70歳代などリタイア後の世代では、リスクの高い資産に投資すると株価の大暴落などが発生した場合に、その影響をリカバリーすることが困難となります。
そのため、ターゲットイヤーファンドは、最終的にはターゲットイヤーを迎える段階において、株式などのリスク資産の投資比率はほぼゼロとなる仕組みとなっています。
つまり、ターゲットイヤーファンドとは、リスク資産への投資配分をその方の年齢やライフサイクルなどに応じて、運用会社が自動的に調整してくれるファンドということです。
ターゲットイヤーファンドのメリット、デメリット
iDeCoの加入者として、こまめに買い替えたり、配分比率を変更したり、リバランス(バランスの再調整)に取り組んでいる方はどれ程いらっしゃるでしょうか?
これまでに記載の通り、ご自身の年齢やライフサイクル、就業環境などを考慮し、自ら対応できている方にとっては、ターゲットイヤーファンドなどは必要ないのかもしれません。
このファンドの最大のメリットは、これらの煩わしいリバランスなどの運用を長期にわたってプロである運用会社が「自動的に配分比率を変更」してくれるという点でしょう。
特に、投資初心者の方や忙しくて投資を考える時間もないという方にとっては大きなメリットといえると思われます。
その反面、この「自動的に配分比率を変更」というメリットが裏目に出ることもあります。例えば、世界的に株価が大幅に上昇した場合に、迅速な対応が困難となる点がデメリットとなることもあります。
ターゲットイヤーファンドは、年齢を重ねるにつれてリスク許容度を考慮して株式などのリスク資産への投資比率を下げていくため、目標年次に近い年齢の時期に株価の上昇時期が重なっても「自動的に変更された配分比率」による運用となり、株価の上昇を運用成績に直接反映させることが困難となります。
まとめ
投資のリスク許容度は、ゴルフに例えられることがあります。ティーショット(1打目)を打つ1W(ドライバー)は飛距離(リターン)が最も出ますが、左右に曲がる(リスク)可能性も高く、さらには曲がる幅も大きくなります。
逆に、グリーン上でカップインするためのパターは、飛距離(リターン)を出すためのものではなく、確実にカップインするための道具といえます。投資の世界において、リスクとリターンは表裏一体といえます。
長期投資に向いている金融商品としてターゲットイヤーファンドは、ひとつの優秀な道具といえるでしょう。
しかし、今日のような人生100年時代といわれる長寿社会においては、60歳代以降のステージにおいても、自らがリスクとリターンを主体的にコントロールするという考えも必要なのかもしれません。
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
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