一戸建て住宅の資産価値を維持するために考えたいこと
ファイナンシャルフィールド / 2019年8月24日 1時0分
![一戸建て住宅の資産価値を維持するために考えたいこと](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_54412_0-small.jpg)
自分や家族が住む一戸建て住宅を購入しようとするとき、皆さんはどんなことを重視して購入を考えますか? デザインや間取りにこだわってみたり、立地にこだわってみたり、ハウスメーカーで建てたいと思う人もいれば、建築家に頼みたい人もいるかと思います。 マンションと違い、一戸建ては建てる上での選択の自由度が高い一方で、自分で維持管理していく必要もあります。木造戸建て住宅の耐用年数は22年ですが、これは税務上減価償却する場合の年数です。 しかし、この数字を基に戸建ての建物部分は22年経過したら価値がゼロと考えてしまう人もいるようです。空き家問題も増えている昨今、不動産を「負動産」とやゆする言葉もあるようです。そこで一戸建て住宅の資産価値を維持するためには、どんなことを考えたらよいでしょうか?
一戸建て住宅にも通信簿がある?
平成12年度に「住宅性能表示制度」が実施されました。これは国が定める性能評価項目・性能評価基準に基づき、公正中立な第三者機関が設計や施工・完成の段階で評価を行い、等級や数値で各分野の性能を表示するものです。これにより客観的に住宅の良しあしが測れるようになりました。
新築住宅に対する評価対象の性能分野は以下の10分野です。
★1.地震などに対する強さ(構造の安定)
2.火災に対する安全性(火災時の安全)
★3.柱や土台の耐久性(劣化の軽減)
★4.配管の清掃や補修のしやすさ、更新対策(維持管理・更新への配慮)
★5.省エネルギー対策(温熱環境・エネルギー消費量)
6.シックハウス対策・換気(空気環境)
7.窓の面積(光・視環境)
8.遮音対策(音環境)
☆9.高齢者や障害者への配慮(高齢者等への配慮)
10.防犯対策
上記10分野のうち★印のあるものは住宅取得者等の関心の高い項目で、建設後では調査しにくい項目として必須分野となっていて、「長期優良住宅」認定における準用項目にもなっています。また、★印と☆印の分野は次世代住宅ポイント制度における「一定の性能を有する住宅」の対象となっています。
次世代住宅ポイント制度では認定長期優良住宅や一定の性能を有する住宅の購入に対して、さまざまな商品と交換できるポイントが与えられます。
また、住宅取得資金に係る贈与税についても「良質な住宅」の場合には非課税枠が拡大されます。良質な住宅とは「省エネ性能」「耐震性能」「バリアフリー性能」のいずれかの基準を満たしている住宅です。
このように住宅性能表示はさまざまな制度においても対象となるかどうかの物差しとして利用されていますが、長く住み続けられるための基本機能としては特に以下の4つの性能が重要といえます。
●耐震性能
●メンテナンス性能
●省エネ性能
●バリアフリー性能
以下の表にあるように、近年大きな地震が増加傾向にある日本では「耐震性能」は特に重要かもしれません。自宅の価値を客観的に評価できる物差しの一つとして住宅性能表示制度は活用したい制度です。
![](https://financial-field.com/wp/wp-content/uploads/2019/08/75e53d4448e1e2458319d198b7c42715-27.jpg)
気象庁の「地震データベース検索」より作成
※2010年代は2019年4月30日までの発生件数
メンテナンスをしっかり行う
一戸建てを購入後、何もメンテナンスしなければそれこそ耐用年数が経過する辺りでその価値はかなり下がっているかもしれません。一般に木造住宅の寿命は30年ともいわれているようですが、この数字には寿命以外の理由で取り壊された住宅の年数も含まれているようです。
実際には50年経過しても問題ない住宅もあり、その寿命年数は30年~80年ともいわれています。かなりの幅があります。
これは日々のメンテナンス次第で長い寿命の木造住宅にすることは可能ということです。そのため、住宅購入においては購入計画時に将来のメンテナンス(リフォーム)費用もしっかり計画しましょう。以下はメンテナンス時期の一例になります。
![](https://financial-field.com/wp/wp-content/uploads/2019/08/b21aa6e7a5229bdbdbdb6524b66d20f0-18.jpg)
住む地域・場所から見た資産価値
これは一戸建て住宅に限らずマンション等にもいえますが、住宅が建っている土地も不動産価値の一つです。その地域の不動産価値が高いかどうかについては、地価公示などで価格変動の推移も見るようにしましょう。
地価公示は、地価公示法に基づいて、毎年1月1日における標準地を選定して「正常な価格」を判定し公示するものです。一般の土地の取引価格に対して指標になるため、おおむね実勢価格(相場)に近い価格になるはずですが、例外もあります。
以下の表は神奈川県の例です。県全体では若干の上昇で、市町村で見ると川崎市や相模原市、横浜市が上昇しています。一方で他の地域では下落傾向が続いているようです。
![](https://financial-field.com/wp/wp-content/uploads/2019/08/476be8e45b7adbf739e617808e27fe26-6.jpg)
(出典)平成 31 年3月 神奈川県政策局 地価公示の概要
また、同じ地域においても住宅の場所が急斜面のそばだと「土砂災害警戒区域」に指定されている場所だったり、接道道路が私道だったりした場合にもその価値に影響があります。個々の土地の状況を調べることも重要です。
不動産価値を維持する上での方程式
不動産の価値を維持するためには大小さまざまな要素があるかと思いますが、これまで見てきたようにその基本となる公式は以下のようになるかと筆者は考えます。
「住宅性能」×「メンテナンス」+「地域」 = 「資産価値」
大手ハウスメーカーの「ブランド」や建築家による「デザイン」も価値要素としてはあるかもしれません。ただ、大手ハウスメーカーであっても大きな問題がニュースになったりしています。
また、建築家と共に設計した住宅は、そこに住む人の好みが色濃く反映されていることがあり、万人に対して住みやすい家かどうかは分かりません。
土地神話が崩れ、所有していれば価値が上がっていくような時代は過去のものとなってしまいました。それでも大きな買い物である住宅の不動産価値を維持する方法はしっかり考えていきましょう。
出典
気象庁 地震データベース検索
平成 31 年3月 神奈川県政策局 地価公示の概要
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)
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