80歳でも加入できる死亡保険?シニア向け保険は本当に「終活」に向いているの?
ファイナンシャルフィールド / 2019年8月24日 9時30分
新聞の広告や折込チラシなどで「〇〇歳まで申し込める死亡保険」といったシニア向け保険商品を見かけます。 会社や商品によって異なりますが、80~89歳といった高齢でも新規に申し込みできるものもあります……。
一段と延びた日本人の平均寿命
「人生100年時代」がすっかり流行語となった昨今です。日本人の平均寿命は一段と延びて、男性81.25歳、女性87.32歳(厚生労働省 2019年7月30日公表、末尾※参照)です。
しかもこれは、正確には現在0歳の人の平均余命。同時に発表されている平均余命表を見ると、例えば60歳での数値は、男性23.84年(60歳に足すと83.84歳)、女性29.04年(同89.04歳)、65歳では、男性19.70年(65歳に足すと84.70歳)、女性24.50年(同89.50歳)なのです。
身の回りにあふれている保険
保険は身の回りにあふれています。自動車保険、火災・地震保険、旅行保険、傷害保険、医療保険、介護保険、年金保険などなど。そして、本人の死亡に備えたものが死亡(生命)保険です。
このうち、定期保険(一定の期間は数千万円規模の保障をしてくれる)や収入保障保険は、万が一の時に残された家族の生活支援などが主な目的です。また、一生涯の保障が続く終身保険は、若いときに加入して長期的に貯蓄をするようなイメージもあります。
葬儀費用は、どのくらい?
シニア向け保険について、いくつか具体的な資料を見て印象に残ったのが商品名。「終活保険」とか「葬儀保険」と表示されるものがあったのです。シニア層にはよりイメージが明確かもしれません。では、葬儀にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。
『第11回「葬儀についてのアンケート調査」報告書』(一般財団法人日本消費者協会 2017年1月刊行)によれば、葬儀費用の全国平均は【195.7万円】。多くに引用される数値で、葬儀一式費用(全国平均121.4万円)に寺院への費用、通夜からの飲食接待費用を加えたものです。
こうした支出は、香典があれば一部は補填されます。また昨今では、家族葬として少人数で執り行うなど、形式や費用の簡素化の流れも徐々に広がっています。それでも、葬儀には一定のおカネが必要です。
「終活保険」いくらくらい払い込むの?
それでは、「終活保険」や「葬儀保険」の具体的な事例を見てみましょう。次の保険料試算の前提条件は、【新規加入時期等:60歳・男性、保険金額:200万円】としてみました。
3つの商品例だけなのでシニア向け保険商品の全容はイメージできないかもしれません。また、加入時年齢や性別、そして何歳まで生きるかによっても保険料の負担状況はさまざまです。とはいえ、仮に90歳まで生きるとした場合、わずか3例だけで払込保険料総額に【216万円台~774万円】と3倍以上もの差があるのは驚きでした。
そして、若い頃に加入した終身保険であれば払込保険料総額よりも死亡保険金額が大きいこともありますが、3例では死亡時に200万円の保険金を受け取るためにそれ以上(場合によっては何倍もの)の総額の保険料を払い込むことになるわけです。
まとめ
保険商品を巡る現状として思い浮かぶのは、【長引く低金利で資金運用が難しい】、【ネットやIT技術などを駆使して省力化・コスト圧縮をはかったとしても、保険金支払いには回らない一定の経費が保険料には含まれる】などです。そして、今回の3例はいずれも【持病等があっても加入しやすい分だけ保険料が割高に設定されている】ともいえます。
葬儀費用をこれから毎月徐々に準備するのであれば、(これも何歳まで生きるかによって状況は変わりますが)保険ではなく預貯金の積立などの方がおトクに資金確保できる場合もあるでしょう。
預貯金や有価証券は、本人死亡時に一旦凍結されて遺産分割協議を経ないと引出しや換金ができない問題があります。しかし、預貯金の一部は仮払いできるよう今年7月から制度改正されました。
また、もしも葬儀費用に見合う資金を既に持っている場合には、一時払い終身保険(健康状態の告知なしに加入できるタイプもあり)を利用する選択肢もあるでしょう。シニア向け保険について、目的や本人の健康状態別に各種商品を比較できるサイトや相談窓口も色々用意されています。
「何歳まで生きるのか」は予測不能でしょうが、それ以外の変数のイメージを固めながら、葬儀費用に代表されるおカネ面での「終活」にも時間的余裕をもって備えていきたいものです。
出典:(※)厚生労働省「平成30年簡易生命表の概況」
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士
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