女性に多い乳がんの治療費について、いざという時のために知っておこう!
ファイナンシャルフィールド / 2019年8月27日 10時15分
乳がんは、女性がかかる可能性が最も高いがんです。国立がん研究センターがん情報サービスのデータによると、生涯で女性が乳がんにかかる確率は9%で、若い世代ほど他のがんよりもかかる可能性が高い傾向があることが分かります。 乳がんの治療は他のがんと違うお金のかかり方をすることがあるので、女性なら乳がんの治療について最低限のことは知っておくべきでしょう。そこで今回は、乳がんの治療費について解説します。
治療にかかる費用を、具体例をもとに試算
がんの3大治療は手術・薬物(化学)療法・放射線治療です。乳がんに限りませんが、がんの治療はこれらを患者の症状に合わせて適宜、組み合わせることによって行われます。例えば手術+薬物療法、放射線治療+薬物療法といった具合です。
日本乳癌学会のウェブサイトにはさまざまな治療の費用の例が掲載されていますので、これを用いてその治療ごとにどれくらいの費用がかかるのかを試算してみましょう。
なお、試算にあたって高額療養費制度が利用できる場合、69歳以下・所得区分ウで計算するものとします。高額療養費制度については出典として記載した厚生労働省の資料などを参照してください。計算式は図のとおりです。
・手術の場合
14日間入院し、乳房切除術と腋窩リンパ節郭清(えきかリンパせつかくせい:脇の下のリンパ節を切除すること)をするケース:総額およそ100万円
(※「郭清」も切除という意味です)
総額ではかなりの金額ですが、高額療養費制度が利用できるので、患者の自己負担額は8万100円+(100万円-26万7000円)×1%=8万7430円となります。これに差額ベッド代や食費その他の雑費が加算されたものが最終的な負担額です。
・放射線治療の場合
乳房温存手術後、通院により25回の放射線照射をするケース:総額およそ47万~70万円放射線治療は通常、通院で行われます。この例は週5回・5週間というスケジュールで行われるという前提です。
仮に総額を60万円(最初の月が40万、次の月が20万円)とすると、最初の月は高額療養費制度が利用できるので(高額療養費制度は月ごとに適用されます)、自己負担額は8万100円+(40万円-26万7000円)×1%=8万1430円となります。
2ヶ月目は高額療養費制度を利用できない(医療費が26万7000円未満のため)ので、自己負担額は20万円×3割=6万円となり、総額では14万1430円となります。
・ホルモン療法をする場合
リュープリンというLH-RHアゴニスト製剤を皮下注射(12週ごと1年間)するケース:総額およそ29万円(※「リュープリン」は商品名で、一般名称は「リュープロレリン」です。)
12週ごと(=約3ヶ月)で1年間という条件なのでトータルで4回、通院で治療を受けることになると考えられます。単純計算で1回あたりの医療費を7万2500円とすると、そのうち3割にあたる2万1750円が1回あたりの自己負担額です。総額では8万7000円となります。
ただし、ホルモン受容体が陽性であると診断された場合に行われるホルモン療法は、最長で10年ほどかかることがあります。
仮にホルモン療法が10年続いた場合、薬が変わる可能性なども考慮すると、自己負担額が単純に10倍になるかどうかは分かりませんが、総額ではそれなりの負担になる可能性があります。
・抗がん剤治療をする場合
パクリタキセルという抗がん剤を毎週、合計で12回投与するケース:総額およそ68万円
総額が68万円なので、単純計算で1回あたり約5万6000円(計算の簡便化のため端数は切り捨てています)です。毎週なので月に4回、3ヶ月間通院するという前提で計算すると、ひと月あたりの医療費は5万6000円×4=22万4000円です。
これも高額療養費制度が利用できませんので、ひと月あたりの自己負担額はそのうち3割にあたる6万7200円で、3ヶ月で20万1600円になります。
なお、以上は治療の種類ごとに自己負担額を計算していますが、同じ月に2つ以上の種類の治療が行われれば医療費は合算される点に注意してください。
乳房再建やウィッグで思わぬ費用がかかることも
以上のほか、乳房切除を行った場合に、切除とは別の日程で再建を行う(「二次再建」や「二期(的)再建」と言います)と別途、費用がかかります。今は保険診療で再建ができるようになったので高額療養費制度が使えますが、負担があることは想定しておくべきです。
また、抗がん剤の使用で毛髪が抜けた場合、周囲の目が気にならないようにするため本格的なウィッグを利用する可能性があります。ウィッグは、既成品ではなくフルオーダータイプの商品を選ぶと高額になることもあります。
乳がんの治療では標準治療を基本として治療を行う場合でも、こうした特徴があることを知っておいてください。
出典:日本乳癌学会ウェブサイト
厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
国立がん研究センターがん情報サービス「最新がん統計」
執筆者:横山琢哉
ファイナンシャルプランナー(日本FP協会 AFP認定者)
フリーランスライター
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