家族が認知症になる前に。親子で始める終活のススメ
ファイナンシャルフィールド / 2019年8月29日 8時30分
内閣府の高齢者白書によると、65歳以上の高齢者の認知症罹患者は、平成24年、65歳以上の高齢者の約7人に1人と言われています。数にして、約462万人に上っております。 2025年には、さらにこの数は増え、約5人に1人が認知症になるとの推計があります。認知症は、決してひとごとではなく、身近な問題として、捉えなければならない問題です。 ご本人だけでなく、親や配偶者などが、認知症に罹患する前にどのような対策をしておけばいいのでしょうか?
遠方の母が、認知症(要介護1)と診断されたケース
「遠方で暮らす一人暮らしの母(80代)が、認知症と診断されました。遠方のため、年に2回ほどしか会うことができません。最近、会った際に、家の散らかり方や会話などから、様子が変だと感じたことが認知症の外来を受診したきっかけです。母は、認知症と診断され、要介護1と診断されました。
今回、特別養護老人ホームの入所は、要介護3以上のため、利用できません。有料老人ホームは、金銭的に余裕がなく、要介護1からでも利用できる定期巡回・随時対応型訪問介護看護を利用することにしました。」
認知症と診断された場合、ご親族の方は、どのような対策が取れるのでしょうか?
認知症と診断された場合、まず最初に成年後見を検討
認知症と診断された場合、成年後見が有効な手段です。成年後見は、認知症などの理由で判断能力が不十分な人に代わって、後見人が不動産や預貯金などの管理、介護サービスの契約、遺産分割の協議などをすることができます。
一方で、成年後見のデメリットもあります。後見人は、現在1年に1回家庭裁判所へ定期報告が義務づけられています。後見人は、親族である子供が候補者として申し立てることはできますが、必ずしも選任されるとは限りません。
また、後見人が親族になった場合、遺産分割協議など利益相反行為は、別途、特別代理人を立てる必要があります。以上のように、成年後見は、制約や負担を強いられる場合があります。
認知症になる前に、民事信託を検討しよう
認知症は、ひとごとではなく、身近に起こるものだと捉えておくことが大切です。認知症の事前対策として、有効なのが民事信託です。民事信託は、不動産や金銭などを信頼できる家族等に託し、管理や処分を任せることができます。
民事信託のメリットは、家族・親族に託すため、高額な報酬が発生しないことです。遺言や後見では、実現できない柔軟な財産管理・処分の実現が挙げられます。民事信託は、「信じて託す」という文字通り、有価証券や不動産の売買など、取り決めの範囲内で自由に取引することができます。
親子で終活を考えてみよう
認知症になる前の段階で、親族間のコミュニケーションを十分とっておくとことは大切です。ただ、高齢者は、積極的に資産や相続のことを話さない傾向にあるようです。このような場合、親族間のコミュニケーションをどうとればいいのでしょうか?
・冒頭の統計データより、認知症は、ひとごとでないこと。
・認知症と診断された後では、負担や制約が多いこと
・民事信託を活用することで、資産の管理や処分に自分の意思を反映できること
終活は、高齢者が行うというイメージがあります。しかし、認知症など罹患したケースは、親族に大きな影響を及ぼします。よって、親子間で終活のスケジュールを立て、万一に備えることが必要だと言えるでしょう。
出典
内閣府「平成29年版高齢社会白書」
※2019/09/02 タイトルを一部修正させていただきました
執筆者:廣重啓二郎
ファイナンシャルプランナー、DCアドバイザー、相続支援士
関連記事
親の認知症を疑い始めたら、確認しておきたい仕組み
もし親が認知症になったらどうする? 最低限知っておきたいお金のこと
5人に1人が高齢者?親が認知症になる前に知っておかないと損する制度
この記事に関連するニュース
-
「家族信託」の相談をしましたが、わが家は「利用できない」とのこと。母の認知症が心配だから相談したのに……。家族信託は「認知症対策」なのではないのですか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年5月10日 1時40分
-
親が認知症に→口座が凍結された!“唯一の解決策”は「成年後見人制度」だが…日本で一向に普及しないワケ【司法書士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月1日 11時30分
-
親の認知症「お金を守る」ためにすぐやること 「親のお金はあるのに使えない」事態は避けたい
東洋経済オンライン / 2024年4月26日 20時30分
-
親が認知症になったあと「資産凍結」になっていることを知りました。いつごろ解除されるのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年4月15日 9時40分
-
「誰に頼んだらいいか…」おひとりさまの高齢女性が終活に抱いた不安、悩みを打ち明けた相手とは
Finasee / 2024年4月12日 11時0分
ランキング
-
1「日本国債」の紙くず化がとまらない…雪だるま式「借金地獄」から日本が抜け出せない根本原因【経済のプロが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月11日 11時15分
-
2コーヒー豆高騰の背景に…中国でブーム“悪魔のフルーツ”、ピザや火鍋にも【Nスタ解説】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月10日 21時10分
-
3朝ドラ登場の食堂モデル、岐阜の五平餅店が閉店へ…「寂しい」全国から名残惜しむファン足運ぶ
読売新聞 / 2024年5月10日 15時8分
-
4ヨーカドーの跡地が「世界最大級の無印良品」に…過疎地の商業モールを復活させた「社会的品揃え」の魅力
プレジデントオンライン / 2024年5月11日 9時15分
-
5【閉園騒動から再出発】「ラブライブ!聖地」水族館、新社長が語った苦悩「従業員は大量解雇」「マイナスからのスタートです」
NEWSポストセブン / 2024年5月10日 19時20分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください