奨学金の返済トラブルが増加。知っておきたい奨学金以外の【教育のお金】
ファイナンシャルフィールド / 2019年9月1日 3時0分
マイホーム、教育、老後資金は人生において大きな金額となる支出ですが、この中でも教育費は他の支出項目とは少々毛色が異なっています。 マイホーム資金や老後資金は自分自身で支出金額や発生時期をコントロールすることができますが、教育費はお子さんの意向も反映させる必要があり、発生時期も固定されているため、他の資金よりも融通が利きません。場合によっては想定以上の金額を支出する必要に迫られることもあります。 こうした場合によく利用されるのが日本政策金融公庫が提供している「教育一般貸付」や日本学生支援機構が提供している貸与型や給付型といった「奨学金制度」などの、国や公的機関が提供する教育ローン制度です。 教育一般貸付は固定金利で利息の支払いが必要となり、融資額は生徒一人につき最大で350万円(6ヶ月以上の留学をする場合は450万円)、返済期間は原則15年以内となっています。 奨学金制度には返済が必要なものの無利子の第一種貸与型、有利子の第二種貸与型、そして返済の必要のない給付型の3つのタイプが利用できます。近年はこの貸与型の返済を巡ってトラブルが増加しているといった背景もあることから、できることならば返済負担の小さい他の選択肢も検討したいと考える向きもあります。 そこで今回は、大学費用のサポートについて教育一般貸付をはじめ、他にどのような制度が利用できるのかをご紹介させていただきます。
日本学生支援機構の給付型奨学金について
2020年度の進学から給付型奨学金の該当要件が緩和され、以前は成績が重視されましたが、新しい基準になってからは、従来の成績要件の他に学習意欲が旺盛と認められた場合にも利用できるようになりました。
給付型奨学金は、こうした優れた学生が、大学への進学を希望しているが経済的理由により進学が困難な場合に交付される奨学金です。
返済不要というメリットと引き換えに、貸与型に比べて圧倒的に厳しい審査が存在しているだけではなく、収入要件も存在しており、仮に子どもの学力や意欲などが要件に該当していても、親の収入状況によっては利用できない場合もあります。
さらに毎年適格認定と呼ばれる審査が行われ、成績や生活態度、経済状況、健康状態といった点をチェックされます。結果によっては次年度から打ち切りや減額などの措置が執られることになるため、気を抜くこともできません。
また、進学する大学もどこでもいいというわけではなく、国または自治体が支援対象とする大学でなければならないため、進学先が限定されてしまうといったデメリットもあります。
各教育機関が独自に実施する免除・減免型奨学金について
給付型奨学金は確かに魅力的な制度ですが、支給の難易度が高いため、多くの人が利用できる制度ではありません。そこで各教育機関が実施している、給付型奨学金よりも支給要件を緩和した免除・減免型奨学金制度が注目を集めています。
免除・減免型奨学金は該当要件も多種多様となっており、成績優秀やスポーツによる特待生の他に、特定の学科への入学や兄弟姉妹がすでに入学している場合にも授業料を免除・減免を受けることができるようになっています。
この教育機関が独自に実施する支援制度は、国立大学の場合は減額措置があるものの給付型奨学金を受け取っている場合でも併用できる可能性がありますので、積極的に利用していくことをおすすめします。
まとめ ~貸与型奨学金の抱える問題について~
家計において、子どもの将来に関わる教育費は、子どもの進路の選択肢を狭めることになりかねないため、いわば聖域として取り扱われており、節約や削減からは切り離されて考えがちな支出になります。
こうした理由から想定を超える支出も許容しやすく、実質的には借金であるにもかかわらず貸与奨学金を利用する心理的ハードルも低下しがちです。
しかし、近年は賃金の伸び悩みや社会保険料の負担増加などで就職しても十分な収入が得られず、卒業後に貸与型奨学金の返済に悩むケースが問題となっています。この他にも奨学金を借りた子どもが将来住宅ローンを契約する際の足かせになるなどの問題もあります。
近年は大学の進学率も上昇しており、子どもの希望をかなえるためにも教育費の準備方法は奨学金も含めて柔軟に検討したい項目です。
奨学金制度は国の施行するものの他に、各教育機関や自治体などが独自に実施しているものもあります。子どもの将来において想定外の負担とならないためにもさまざまな制度の利用を視野にいれてみてはいかがでしょうか?
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表
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