住宅ローンの借り換えで失敗する人の特徴
ファイナンシャルフィールド / 2019年9月30日 3時48分
近年、住宅ローンは低金利状態が続いています。 住宅ローン金利はバブル経済の崩壊で下落の一途を辿っていましたが、2006年頃に底を打ち、徐々に上昇に転じていました。しかし、その直後に発生したリーマンショックにより、再び住宅ローン金利は下落に転じてしまいます。 住宅ローン金利が上昇に転じる気配を見せていた頃に住宅ローンを契約された方は、金利上昇局面に有利な固定型金利を選択したのではないでしょうか。残念ながら金利動向に対する思惑は外れてしまい、他の年よりも比較的高い金利を固定してしまうという結果となってしまいました。 住宅ローン金利の一時的な高騰から約10年が経過しました。固定期間選択型で人気の高い10年固定を選んだ方は、固定期間の満期を迎えることになります。これを機に住宅ローンの借り換えを行い、返済負担を軽減することを検討してみてはいかがでしょう。 しかし、住宅ローンを漫然と借り換えてもお得にならないばかりか、条件によってはさらなる出費を招いてしまう結果にもなりかねません。今回は住宅ローンの借り換えに失敗しないためにも、住宅ローンのさまざまな疑問について解説していきます。
借り換えをする前に確認したいポイント
いくら金利が安いからといっても、借り換えによって誰もがお得に利用できるわけではありません。借り換えを行う前にしっかりポイントをおさえないと、かえって損をしてしまうかもしれません。
そうならないためにも、以下にあげる項目は最低限確認しておきましょう。まず、借り替えにあたり今後の金利タイプは何を選択するのかが重要になります。金利タイプには大きく分けて、変動型、固定期間選択型、全期間固定型の3つがあります。
単純な金利比較だけであれば変動型が最も低いのですが、金利タイプには金利の高低以外にも大きな特徴があります。
変動型金利は、他の金利タイプと比較して最も金利が低い傾向にありますが、市中金利と連動して返済額が変化するという特徴があります。
市中金利が下落傾向、ないしは横ばいが続くと考えられるときに適した金利タイプですが、金利が上昇していくシチュエーションには弱く、返済総額に影響を受けやすいという特徴があります。
固定期間選択型金利は、2年、3年、5年、7年、10年、15年、20年、25年などの期間があり、固定期間が長くなるに従って金利が高くなる傾向があります。
契約者が養育費などの大きな支出がある場合に、この金利タイプが選ばれる傾向にあります。あまりリスクが取れない期間に合わせて固定期間を選択し、住宅ローンの返済額が金利変動によって影響を受けないようにして、他の資産形成を安定的に行うことができるためです。
しかし、固定期間満了時は金利動向によっては返済額が大きな影響を受けてしまうことがあります。変動型金利は住宅ローンの返済額が25%以上変動しないよう激変緩和措置が設定されていますが、選択期間固定型にはこうした措置がありません。
変動型も選択期間固定型も金利変動の影響を軽減するには、繰上げ返済が有効です。金利動向に応じて繰上げ返済を行えるよう、別途資金を積み立てておくことをオススメします。
フラット35で有名な全期間固定型金利は、返済期間中の金利変動などのリスクを完全に排除することができるため、長期的な返済計画を確実なものとし、養育費や老後資金など他の資産形成を安定的に行いやすくしてくれます。
その反面、他の金利タイプよりも金利が高い傾向にあります。年収に対して住宅ローンの借入比率が高くなってしまい、返済計画におけるマイナスの影響を吸収する余地が少ない方などに適しているといえます。
このように、借り換えによって住宅ローンの金利タイプを変更しようと考えている方は、最低金利のみを追い求めるのではなく、それぞれの特徴を捉えてから金利タイプの検討を行うと良いでしょう。
諸費用に負けない!借り換えがお得になる目安
残念ながら借り換えは無料で行えるものではなく、諸費用が発生してしまいます。
発生する諸費用の額は、借り換えを行う金融機関や住宅ローンの残債によって異なりますが、おおむね数十万円です。諸費用には、保証料・手数料や各種税金(印紙税・登録免許税)、司法書士手数料などがあります。
また、フラット35へ借り換えを行う場合は、フラット35の利用基準を満たしているかどうかを調査するための、物件検査手数料という費用が発生することもあります。
こうした多額の諸費用を支払ってでも借り換えを行ったほうが良い目安として、住宅ローン融資の残り期間が10年以上+借り換え後の金利低下が1%以上+住宅ローンの残債が1000万円以上であれば、借り換えによって利益を得られる可能性が高いといわれています。
借り換えで得られるメリット
借り換えで得ることができるメリットとしては、月々の返済額や返済総額を減らすことができる点がよく注目されますが、この他にも金利変動リスクを排除したりすることができます。
住宅ローンの契約時に想定していなかったリスクに対して、新たな対応を行うことができるようになります。また、住宅ローンの大きな特徴である団体信用保険(通称:団信)ですが、年々保証が充実してきており、さまざまな疾病・傷病に対応することができるようになってきています。
古い住宅ローン契約に付帯させた団信を、新しい特約付きのものに変更することで、保証内容を充実させることもできます。
借り換えのデメリット
借り換えには前述の諸費用の問題の他に、さまざまな注意点があります。
例えば、借り換えの融資実行手続きでは、基本的に金融機関の店舗まで住宅ローンの契約者本人が訪問する必要があります。
ほとんどの金融機関は平日の昼間しか営業していないため、会社員の方の多くは、休業ないしは有給休暇を利用して対応することになります。しかし、仕事をしていると多忙で出向くのがおっくうになってしまい、借り換えに支障が出てしまう恐れがありますし、休業による損失利益の問題もあります。
借り換えの手続きに訪問が必要になるのは、実店舗型を持つ金融機関に多いですが、近年は実店舗の無いネット銀行があります。
ウェブ上で手続きを完了させることができますので、自分のペースで手続きを行うことができます。時間が取れずになかなか借り換えを実行に移せないという方は、手続きが簡便なネット銀行などを検討してみてはいかがでしょうか。
また、金融機関によっては住宅ローンの金利をさらに優遇するキャンペーンを実施していることがあります。
この場合、口座開設や給与振込口座への指定などの条件が付くことがあります。キャンペーンによる優遇金利を十分に活用するために、勤め先などが給与支払口座の変更に応じてくれるのかどうかを確認しておきましょう。
諸費用の問題などをはじめとした借り換えにまつわるさまざまな問題を把握し、気をつけて対策を行うことでデメリットを生じさせないようにしましょう。
借り換えで注意したいポイント
住宅ローンの借り換えで十分な満足を得られないケースとして、住宅ローン金利に関する認識不足がまず考えられます。
当初は変動金利で借りておき、金利が上がりそうになったら固定金利に切り替えればいいと考える傾向もありますが、変動金利と固定金利は、利率決定の基となる基準金利が異なります。
変動金利は短期プライムレートという市中金利により、実際の経済状態を反映し金利が決定されます。固定金利は10年物国債の金利により、現在の経済状態を下敷きにしつつ未来の金利予想を加味して金利が決定します。
この2つの基準金利は反映のタイミングが異なり、変動金利よりも早く固定金利のほうが反応するため、変動金利が上がりそうだと感じたときには、すでに固定金利は上がってしまった状態となってしまいます。
次いで、融資額に関する懸念点があります。住宅ローンの融資額は担保となるマイホームの資産価値によっても左右されますが、築年数に対して適切な修繕が行われていなかったり、郊外や市街化調整区域内の建物などは購入時に比して資産価値が大きく下落していたりする場合があります。
マイホームの資産価値と住宅ローンの残債によっては、希望していた融資額に達せず、借り換えに際して自己資金の投入が必要となる可能性もあります。
また、団信の取り扱いについても注意が必要です。健康状態に問題の無い人ならば借り換えによって特約を追加するなどして保証を手厚くすることもできますが、健康状態が悪化している人の場合は団信に加入できなかったり、特約に加入できなかったりするといった状態に陥ることもあります。
この場合は、金利低減による返済負担の軽減を取るか、従前の住宅ローンの団信・特約を維持して保証内容を継続させるかのどちらかとなります。
住宅ローンは、万が一の際の生活を保障する側面も持っていますので、健康状態や世帯の家計状況によっては、保障を維持するために借り換えを行わないといった選択を取ることも必要になります。
金利決定の仕組みと返済額の見直しルールを理解し、金利変動によってどの程度返済額が増えるのかといったことや、住宅ローンの保険としての側面を把握して、適切な借り換えを行うようにすることが借り換えで後悔しない大切なポイントとなります。
まとめ
近年は住宅ローン金利の下落が続いていましたが、ゼロ金利の導入などもあり、金利低下の余地がほとんど無くなる水準にまで達しました。住宅ローンの金利見通しでも80%以上の人が今後1年間で金利は上昇ないしは横ばいと推測しています。
この状態では固定金利を選ぶのが得策なのですが、実際に選ばれている金利タイプは変動型が約57%、固定期間選択型は約25%で、全期間固定型に至っては約18%に過ぎません。
金利の動向の予想と、実際に選択している金利タイプにやや乖離が見られています。金利の低さのみにとらわれず、それぞれの特徴を把握して金利タイプを決定すると良いでしょう。
また、新たな諸費用の発生や契約者の健康状態によっては、借り換えが必ずしもお得とは限りません。借り換えの目安となる数字や住宅ローンの保険としての価値なども加味して、借り換えを検討しましょう。
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表
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