円建ての学資保険に入るメリットよりもデメリットの方が多いって本当?
ファイナンシャルフィールド / 2019年9月14日 9時50分
子どもが生まれるとすぐに考え出す「教育費」のこと。子どもを持つ家計のご相談に乗っていると、教育費という言葉を聞かないことはほぼ無いと言っていいほど悩みのタネかもしれません。 教育費を貯めるというと、昔から「学資保険」がよくいわれます。払込金額以上に増えることを期待して加入しているご家庭も多いのではないでしょうか? とはいえ最近は、学資保険はほとんど増えない商品が多いです。それでもただ貯金するのではなく、今から円建ての学資保険に加入するメリットはあるのか考えてみます。
貯金より「強制力」がある
学資保険に加入している方の多くは、増えることと同時に「使ってしまわないため」に学資保険を利用していることが多いようです。
貯金は給料天引きなどで自動化しておかないと、余ったら貯める・余裕があるときに貯めるというのは難しいものです。その点、保険として契約していれば決められた期日に口座引き落としになるため、その強制力はかなり高いです。
ただし、自動化して積み立てた貯金の場合は、引き出しにペナルティが課されることはほとんどありませんが、学資保険では一定期間は解約返戻金が払込金額を下回る「元本割れ」が生じます。
損したくないという気持ちが余計に確実な継続に効果を発するため『強制力』を重視する場合はメリットがあるといえるでしょう。
万が一の場合、払い込みせずお金が受け取れる
学資保険が「保険」である最たる理由は、契約者が保険料を払えない万一の状態になった場合にも、教育費として満期金が受け取れることです。貯金の場合は、収入の担い手である親に万一の場合があった場合は通常貯蓄はストップしてしまいます。
いくらわが子の教育のためといっても、目先の生活のお金が優先されるはずだからです。そういう意味で、学資保険はただの教育費貯蓄の制度ではなく、契約者の「保険」です。保険として使いたい場合は、返礼率がさほど高くなくても充分価値があるはずです。
ただし、気をつけていただきたいのは、そもそも学資保険以外の保険、例えば終身保険や定期保険・収入保障保険などに加入するときに「教育費」を踏まえて保険設計をしていないか、ということです。
教育費も含めて死亡保険を計算しているのなら、学資保険にわざわざ保険としての価値をつける必要はありません。教育費単体で考えるのではなく、家計全体の中での位置づけをよく考えて、過剰に保障をつけることのないようにしましょう。
預金よりは多少は増えるものもある
今の円建ての学資保険は、契約期間の割には増える率は高くありません。生まれてすぐに加入し18年近く払い込んだとしても、商品によっては1%~3%程度しか増えないものもあります。
確かに普通預金などではせいぜい年0.01%程度。18年積み立て続けても数千円程度しか増えないことを考えると、わずかとはいえまだ学資保険に分がある商品もあるかもしれません(元本割れするものもありますので、契約時によく確認すること!)。
また、払込期間を10年など短い期間にし、据え置き期間が長くなると受け取り直前まで払い込む契約よりは多少増えることが多いです。
例えば、300万円を18年間で払い込みし、それが103%(309万円)に増えるとしたら、年間の増え率は0.3%程度です。ここにもし「運用」という選択肢があるのならそれがいかに低いかわかるはずです。
教育費という比較的時期が決まっているお金を運用して良いかどうかはさておき、「学資保険=元本以上に増える」というイメージはすでに疑ってかかる必要があるでしょう。
元本以上に増やしたいからと、勧められるままに外貨建てのものを選ぶのには注意が必要。為替リスクなどの仕組みをわかっていないと、かえって損をしてしまうかもしれません。
生命保険料控除で節税になる場合も
貯金になくて学資保険にあるもののひとつとして「生命保険料控除」もあげられます。保険会社から送られてくる証明書を年末調整や確定申告の時に申告すると、一定額までは生命保険料控除が受けられ節税になる場合もあります。
気をつけていただきたいのは、そもそも生命保険料控除には上限があり、学資保険以外の保険で満額まで使い切ってしまっている場合も多いということです。
また、子育て世帯は住宅ローンがある方も比較的多く、いわゆる住宅ローン減税ですでに所得税が0になっている方もよく見かけます。「節税になるから」といっても、一概にすべての人が当てはまるわけではないことは注意しておきたいですね。
昨今、学資保険は不要論もよく耳にします。「増える」ことに重きを置くならば筆者も同様に考えています。ですが、そもそもどんなお金の使い方も「どのように考えているか」「全体の中でどんな位置づけか」が何より大事です。
専門家の意見は大いに参考にしていただきたいですが、なんでも鵜呑みにするのではなく「わが家の場合」について考えたうえで適切な選択ができるといいですね。
執筆者:塚越菜々子
CFP(R)認定者
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