「遺産分割前に、勝手に財産を使いこみやがって…」こういう場合、弟は兄から遺産を取り戻せる?

ファイナンシャルフィールド / 2019年9月26日 23時20分

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被相続人が亡くなり、相続人が複数いる場合、相続が開始してから遺産分割がまとまるまでの遺産はどのような状態なのでしょうか?   いわゆる、「共同相続人による法定相続分での共有の状態」となり、「共同相続人がそれぞれの相続分に応じて持ち分を共有」することとなります。そして、遺産分割協議により、各財産をそれぞれの相続人の所有とすると、初めて相続人個々の財産となるわけです。   しかしながら、現実の世界では遺産(お金)に関わるさまざまなトラブルが発生します。   例えば、被相続人の父の預金や財産を実質的に管理(キャッシュカードを保有し、パスワードも知っていた)していた同居する長男が、相続開始直後に父の預金口座から自分の口座に全額移して消費してしまったらそのお金はどうなるのでしょうか?  

これまではどうだったか?

これまでは原則として、相続開始後に処分された財産は、遺産分割の対象から除外するものとされていました。つまり、勝手にお金を引き出した長男を含めた相続人全員の同意がない限り、その処分された財産は、遺産分割の対象に含めることができないのです。
 
そして、上記の事例において、もし相続人である次男がいた場合、長男の不法行為を知り、勝手に処分されたお金を取り返そうとするためには、訴訟(損害賠償請求など)による方法をとる必要がありました。
 
例えば、相続人が長男と次男の2人の時に、遺産である被相続人(父)の死亡時の預金5千万円のうち4千万円を父と同居していた長男が父の死亡直後に無断で自分の預金口座に移してしまいました。
 
この後に、相続人である次男が長男の不法行為を知り、訴訟により請求が認められた場合には、無断で長男が使い込んだ4千万円のうち次男の法定相続分である2分の1の2千万円のみを取り返すことができました。
 
訴訟による労力(時間とお金)はもちろんですが、長男が多額の遺産の贈与を受けていた場合などでは、最終的な遺産分割の結果でも不公平が生じてしまうことも予想されます。
 

民法の相続法改正による対応

上記のような不公平を是正するため、民法の相続法について法改正がなされました。
 
1.遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人全員の同意により、当該処分された財産を遺産分割の対象に含めることができる。
2.共同相続人の一人または数人が遺産の分割前に遺産に属する財産の処分をした場合には、当該処分をした共同相続人については、1の同意を得ることを要しない。
 
つまり、上記の事例では使い込みを行った長男を除く相続人の同意があれば、勝手に引き出したお金も遺産分割時に遺産として存在したものとみなし、遺産分割の対象の範囲に含めることができるようになりました。
 
これによって、共同相続人の一人または一部の人が勝手に使い込んだ預貯金を遺産分割の対象に含めることができるようになるため、使い込みがなかった場合と同じ遺産総額を基に遺産分割が行えることとなりました。
 

まとめ

今回の事例のような「遺産の使い込み」は預貯金の場合が最も多いですが、不動産や株式などを勝手に処分してしまったり、不動産収入である賃料を横領したり、生命保険を無断解約したりする事例も発生しています。
 
記載の通り、訴訟を起こすためには、多くの時間や労力、弁護士費用などを要することも覚悟する必要があるでしょう。おそらく、相続が「争族」となることを自ら望む方はそう多くはいません。相続に関して気になることがあれば、早めに専門家に相談されることをお勧めいたします。
 
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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