「収入は減ったのに、なかなか支出を減らせない」大きな声では言えない、シニアの本音とは?
ファイナンシャルフィールド / 2019年10月1日 23時15分
![「収入は減ったのに、なかなか支出を減らせない」大きな声では言えない、シニアの本音とは?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_59036_0-small.jpg)
皆さまはシニア世代(50歳~79歳)の生活についてどのようなイメージをお持ちでしょうか? 子供も独立し、住宅ローンの返済も完了してしまえば人生の3大支出のうち2つ(教育資金・住宅資金)までクリアしたことになります。そのため、3つ目の「老後資金」について、晩年の生活はぜいたくさえしなければさほどお金に苦労せずに過ごすことができるのではないか、そんな風に考えてはいないでしょうか? しかし、実は一度上げた生活レベルを後退させることは難しく、収入が減少しても支出額はあまり変化していないという実態があります。十分な準備をしていなければ家計が抜き差しならない状態に至ってしまうかもしれません。 今回はシニア世代の支出の特徴と年齢の変化に伴う収入・支出の変化についてひも解き、晩年の生活設計を想定するための一助としていきたいと思います。
シニア世代の支出の特徴とは?
シニア世代は人生において最もお金に関する状況が変化する時期といえます。50代では収入がピークを迎え、子供の独立により養育費が不要となったり、住宅ローンの完済によって住居費が軽減したりするなど、以前よりも自由に使えるお金が増加します。
余剰資金の使い道として、ソニー生命が発表する「シニアの生活意識調査2019」によると、シニア世代の楽しみとして「旅行」や「グルメ」が選ばれています。また、男性は「自動車」などのアクティビティへの支出も増加する傾向にあります。
シニア世代の前半は家計収支の改善により生活レベルが向上しやすい時期ですが、その後は定年退職により収入額は大きく減少します。
総務省の発表する「家計調査報告(家計収支編)2018年度版」によると2人以上の勤労者世帯の家計の収入は60歳を境に大きな変化に見舞われ、50歳~59歳の世帯の収入が平均月額64万3361円あったのに対し、60歳以上の世帯の収入は平均月額42万4429円となり22万円も減少してしまいます。
しかし、消費支出額は50歳~59歳の世帯が毎月平均35万1434円の支出となっていたのに対し、60歳以上の世帯で29万6724円の支出となっており、約5万5000円しか減少していません。
高齢夫婦無職世帯の支出の削減を阻んでいる要因として、保険医療費や交際費の増加が見受けられます。加齢による疾病や生活レベルの向上による影響によって、収入額の減少に支出削減が追いついていないことがうかがえます。
また、シニア世代特有の支出として、お孫さん関連の出費が追加されます。お小遣いやお祝い金を贈ったり、おもちゃやゲームなどをプレゼントしたりするための大切な出費のため、家計が苦しくとも削減することが難しいという特徴を持った支出です。
そんなお孫さん関連の出費ですが、2019年の調査では年間約13万円が使用されているそうです。
シニア世代の収入・支出の変化への対処法とは?
収入の減少に支出の削減が間に合わなければ、当然家計は赤字に陥ってしまいます。現役のうちから、定年退職を境に一変する収入の変化に対する備えとして、一度上げてしまった生活レベルを落とすのは難しいことを認識し、シニア世代の後半を見据えた支出を心掛けることが大切です。
また、資産寿命を延ばすことも有効な選択肢の一つです。老後資金の資産形成を預貯金のみとせず、債券投資などの比較的リスクの低い資産運用を併用・継続していくことも検討してみてはいかがでしょう?
まとめ
シニア世代は人生で最もリッチなときでもありますが、その後の年金生活に気を配らなければならないなど、お金を取り巻く環境が大きく変化する時期でもあります。このときに生活レベルを上げすぎてしまうと、収入の増加に対し支出の削減が間に合わず老後生活に大きな影響を与えてしまうそれがあります。
さらに今後は高齢化によりシニア世代が人口分布の大部分を占めるようになれば、シニア世代の購買意欲を高めるような商品展開が進められていくことは想像に難くありませんし、お孫さん関連の出費などシニア世代ならではの支出も増えていきます。ペースを守った支出を心掛けるのと同時に楽しみに備えた資産形成を行うことが大切です。
出典
ソニー生命保険会社「シニアの生活意識調査2019」
総務省 家計調査報告 2018年(平成30年)平均結果の概要
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表
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