会社を辞めて起業!会社で加入した企業型確定拠出年金ってどうすればいいの?
ファイナンシャルフィールド / 2019年10月8日 10時0分
先進国のなかでも労働者の起業意欲が極端に低く、起業したいと考えない人が多いといわれている国、日本。とはいえ、周囲を見渡せば、起業したばかり、起業したいという方は少なくないでしょう。 前職で加入していた企業型確定拠出年金(企業型DC)をどうするかについては、スタートアップ起業家にとって、特に関心が高くはないかもしれません。しかしながら最近では個人型DC(iDeCo)の普及もあって、少しずつ関心を持つ起業家や起業予備軍も増えてきているように感じています。 一人社長として起業・法人設立をした場合、前職の企業型DCの年金資産(個人別管理資産)の処理について、意外な選択肢もあり得ることをご紹介します。
企業型DC加入者の退職手続きや資格喪失日はどうなっているの?
企業型DCの加入者が会社を60歳未満で退職すると、その加入者資格を喪失しますので、年金資産の移換が必要です。
資格喪失時には「加入者資格喪失手続完了通知書」が送付され、移換手続きの期限の案内が記載されています。移換手続きの期限は「資格を喪失した月の翌月から起算して6ヶ月以内」です。
図表1:2019年3月末日が退職日の場合
このような方が、2019年3月に会社を設立して30代で独立したとしましょう。
在職中から企業型DCについてその有効性を知っていたので、一人社長となっても継続したいと思いつつ、起業後はそれどころではなくしばらく放置していました。ようやく落ち着いてきた8月に、ふと確定拠出年金の残高が気になったようです。
そのまま放置せず、自動移換されないように手続きが必要!?
企業型DC加入者が退職すると、加入者資格を喪失しますので手続きが必要です。その際の選択肢は下記となります。
1、再加入する ※転職先が企業型確定拠出年金を導入している場合
2、iDeCoへ移換する ※転職先が企業型確定拠出年金を導入していない場合
3、放置する ※国民年金基金連合会(国基連)へ自動移換される
4、脱退する
今回のケースでは、独立した会社の経営者として企業型DC加入を検討されています。そのため「1、再加入する」としたいところですが、会社で企業型DC制度を導入するには、最短でも約半年ほどかかります。
そのため「2、iDeCoへ移換する」「3、放置する」が選択肢の候補となってきますが、どちらにしても手数料が発生し、手続きが必要な場合もでてきます。
※企業型DCは、社会保険料の納付実績がなくても、厚生年金適用事業所の適用届が受理された証明となる「適用通知書」があれば、制度導入申請が可能です。
図表2:iDeCoへの移換手数料(消費税8%の税込)
図表3:国基連への自動移換手数料(消費税8%の税込)
※1 特定運営管理機関は、自動移換された方の記録を管理する機関。国民年金基金連合会は、特定運営管理機関として、日本インベスター・ソリューション・アンド・テクノロジー株式会社に、次の業務を委託
●自動移換者の方の氏名・住所等の記録管理
●脱退一時金・死亡一時金等の請求にかかる事務
●個人型確定拠出年金・企業型確定拠出年金への資産移換にかかる事務
●自動移換者の方からのお問い合わせの窓口
※2 自動移換された日の属する月の4ヶ月後からの負担。3月末に当年度分をまとめ、4月に資産から徴収
※3 移換先の機関で手数料がかかる場合があり
また最近では、自動移換者を極力減らしていく試みとして、新たに企業型DCやiDeCoの口座を開設し、本人情報(基礎年金番号・性別・生年月日・カナ氏名)が一致する場合、自動的に新しい口座に移換されることがあります。
企業型DCを導入したいという方は、あえて自動移換もあり!?
上記のように、企業型DC加入者がその企業を退職すると、iDeCoの加入者となっても、放置したままで自動移換となっても、手数料などがかかります。
iDeCoの新規加入にかかる時間は2~3ヶ月程度ですし、企業型DC制度の新規導入には約半年かかります。スタートアップの起業家は、ビジネスを軌道に乗せることや拡大していくことに集中したい時期でもあるでしょう。
加入にかかる書類のやり取りなどの手間を考えると、多少コストが多めにかかったり、拠出(積立)金額が減ったり、あるいは数カ月分の拠出について機会損失となったとしても、なるべく手間のかからない方法を選ばれるケースのほうがむしろ多いように感じます。
そこで、あえてわざわざ自動移換を選択されるというケースもありえるのです。
このように、一般的なセオリーとしては確かにそうだけれども、ケースバイケースで対応が変わることもあります。
どの方法が最適なのか正解はないものの、選択肢をそろえること。どの方法が一番納得感があるのか、その選択肢の中から選ぶこと。
これらは自分では気づかないことも多々あるかと思います。ウェブ上で検索するだけでなく、より自分にあった方法を発見できるように、アドバイザーを活用しておくことも有効でしょう。
また、DC制度全体としては、転退職に伴う年金資産の持ち運び(ポータビリティ)のさらなる簡素化と透明性の向上が進展していくことを望んでいます。
執筆者:野原亮
確定拠出年金相談ねっと認定FP
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