自分の死後、愛犬はどうなってしまうのだろう。遺言執行の義務を有する「遺言執行者」とは?
ファイナンシャルフィールド / 2019年10月9日 3時0分
内閣府の平成30年版高齢社会白書によると2015年の65歳以上の一人暮らしの割合は、男性で13.3%、女性で21.1%となっています。この数値は今後年々上昇していくことが確実と予想され、推計では2040年に男性で20.8%(5人に1人)、女性で24.5%(4人に1人)に達する見込みとなっています。 一人暮らしの高齢者の中には、ペットを飼われている方が多くいらっしゃいます。 「将来、自分が死んだ時にその後のペットの世話は誰がしてくれるんだろうか?」ペットと共生している方にとっては、人間と直接会話することができないペットの行く末が心配となることも多いでしょう。今回は信頼できる方にペットの世話をお願いするに当たり、遺言書を残す方法を紹介したいと思います。
遺言書による遺贈
まずは、生前に子ども、親、兄弟姉妹など近しい親族、または、信頼できる親友やお知り合いの中で、ご自身に万が一のことがあった時にペットの面倒を見てくれる人を探しておくことが重要となります。そして、自分が死んだ時にペットの世話をお願いすることについて、直接依頼しておくことが必要となるでしょう。
子どもなど本当に近しい親族であれば、ペットの世話代などの金銭的な心配も必要ない場合もありますが、それ以外の場合には、ペットの飼育にかかる金銭的な負担を考慮して、その方に対して一定の財産を遺贈する旨を遺言書に記載しておくことをお勧めします。
例えば、遺言書の記載例として「遺言者は、○○(世話する方)に対して、愛犬△△とA銀行B支店の預金500万円を遺贈する。」さらに「○○は、遺贈を受ける負担として、遺言者の死後、愛犬△△の世話を誠実に行い、△△が死亡の場合には□□ペット霊園に埋葬すること。」などと記載します。
記載例については他にもさまざま考えられますが、ペットの死後の埋葬をお願いするなど、遺言者の思いを具体的に記載しておくとよいでしょう。このような受遺者が負担を伴う遺贈を「負担付遺贈」といいます。
それでも心配な場合には…
遺言書により遺贈したものの、○○さんが本当にペットの世話をちゃんとやってくれるのか、どうしても心配な場合の解決方法はないでしょうか?残念ながら、遺言書の効力が生じるのは、遺言者が死亡した時のため、遺言者自身がその後の顛末を見届けることは不可能です。
そのような心配がある場合の解決方法のひとつに「遺言執行者」を指定する方法があります。遺言執行者とは、遺言書の内容を実現するために、相続財産の管理や遺言執行に必要な一切の行為をする権限と義務を有します。
遺言執行者の指名については、本当に信頼のおける親族や弁護士などの専門家にお願いするケースがあります。また、遺言執行者は、遺言書に記載する方法で指名することができます。
今回の事例の場合、愛犬△△の世話とそのための費用として金銭の遺贈を受けた○○さんが、もし、△△の世話をきちんと見ていない状況があれば、遺言執行者は○○さんに対して、きちんと世話するように催告することになります。そして、それでも世話を怠るようであれば、遺言の取り消しを裁判所に請求することもできます。
まとめ
一般社団法人ペットフード協会の平成30年全国犬猫飼育実態調査結果によると、全国の推計飼育頭数は、犬が890万3千頭、猫が964万9千頭とのことです。
飼育世帯率では、犬が12.64%、猫が9.78%です。そして、年代別には70歳代で犬が10.0%、猫が7.5%となっています。おおむね10人に1人が犬や猫を飼育していることになります。
ペットを飼育されていない方にとっては全く理解できないこともあると思いますが、実際に共生されている方にとっては、ペットは「家族」も同然、場合によっては遠くに住む実際の家族よりも大事なパートナーということもあるでしょう。
そのような「ペット=家族」が自分の死後も幸せな余生を暮らせるように配慮してあげることは、ペットを飼育する飼い主(ご主人さま)としての責務なのかもしれません。
<出典>
一般社団法人ペットフード協会「平成30年全国犬猫飼育実態調査結果」
内閣府「平成30年版高齢社会白書」
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
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