長年連れ添った夫が「全財産は愛人へ」と遺言。そんな時に妻を守る、遺留分って?
ファイナンシャルフィールド / 2019年10月9日 9時0分
法改正により、遺留分を侵害された人は、遺贈や贈与を受けた人に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の請求ができるようになりました(2019年7月1日施行)。 遺贈や贈与を受けた人が、金銭を直ちに準備することができない場合には、裁判所に対し支払期限の猶予を求めることができます。しかし生命保険を活用すれば、金銭の請求に対して簡単に解決できます。
遺留分は相続人の最低限の取り分
遺留分とは、一定の相続人(遺留分権利者)について、被相続人(亡くなった方)の財産から法律上取得することが保障されている最低限の取り分のことです。被相続人の生前の贈与または遺贈によっても奪われることはありません。
故人の意思は最大限尊重されなければなりませんので、自分の財産をどのように処分するかは、原則、自由です。
しかし、「全財産を愛人に相続させる」という内容の遺言を認めてしまうと、遺された家族の生活が立ち行かなくなります。したがって、法律で、相続人に対し、最低限の財産を遺すように定めているのです。これが、遺留分制度です。
遺留分が認められるのは誰? 割合は?
遺留分を有する法定相続人は配偶者、子(またはその代襲相続人)、直系尊属(父母、祖父母など)に限定されています。被相続人の兄弟姉妹には、遺留分は認められないことを知っておきましょう。
遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人である場合は被相続人の財産の3分の1、これ以外は、被相続人の財産の2分の1です。例えば、被相続人が「全財産3000万円を愛人に相続させる」という遺言を残した場合の遺留分について考えてみましょう。相続人は、配偶者と子ども3人とします。
■配偶者の遺留分=3000万円×1/2(遺留分)×1/2(法定相続分)=750万円
■子どもの遺留分=それぞれ、3000万円×1/2(遺留分)×1/6(法定相続分)=250万円
遺留分を侵害された人は,遺贈や贈与を受けた人に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の請求できます。ただし、支払いは現金に限定されます。これを遺留分侵害額の請求といいます。
遺留分侵害額の請求権には請求期限があります。遺留分を侵害された人が、相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年間以内に行わないときは、時効によって消滅します。また、相続開始の時から10年を経過したときも消滅します。請求期限に留意しましょう。
なお、遺留分侵害額の請求について当事者間で話し合いがつかない場合や話し合いができない場合には、家庭裁判所の調停手続を利用することができます。
生命保険は、遺留分侵害額の請求の解決策として効果的
契約者(保険料負担者)および被保険者=被相続人、受取人=相続人という契約形態で生命保険に加入し、生命保険金を遺留分の代償金としてわたすことで、遺留分侵害額請求に対して簡単に対応できます。
上記の契約形態の場合、生命保険金には非課税枠(500万円×法定相続人の数)が活用できます。この非課税限度の範囲内であれば、生命保険金をまるまる利用できます。
また、生命保険金は、民法上「相続財産」ではなく、受取人固有の財産ですので、原則、遺産分割の対象になりません。遺留分の計算基礎の対象にも原則なりません。
このようなことから、遺留分侵害額の請求の解決策として生命保険は効果的といえます。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー
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