夫の死後、妻の住むところと生活費が不安…生命保険による相続対策とは
ファイナンシャルフィールド / 2019年10月10日 9時10分
民法改正により、「配偶者居住権」が新設されました(2020年4月1日施行)。これにより、配偶者は自宅での居住を継続しながら、預貯金など将来の生活費も確保でき、安心して暮らせるようになることが期待されています。 しかし、相続人が後妻と先妻の子どもというようなケースで関係性が悪い場合、「配偶者居住権」を設定することによって問題が複雑化してしまうこともあるでしょう。このような場合、遺産分割対策として生命保険を活用したほうがうまくいくことがあります。
配偶者居住権とは?
例えば、相続人が妻および子、遺産が自宅2000万円および預貯金3000万円だったケースを考えてみましょう。
相続分はそれぞれ2500万円ずつになります。仮に妻が自宅を相続すると、妻は500万円の預貯金しか相続できなくなり、住む場所はあるけど、生活費が不足しそうで不安を覚えます。
かといって、自宅を子どもに相続させたのでは、妻は新たに住む場所を探さなければならなくなります。妻が高齢の場合には、入居できる賃貸住宅も限られてしまいます。
このように、妻は、子どもとの遺産分割協議を成立させるために、自宅の売却をせざるをえないケースや、自宅を相続しても少ない預貯金しか相続できず将来の生活費が不足するといった問題があります。
つまり、自宅を優先すれば生活資金に窮することになり、生活資金を優先すれば自宅は諦めなくてはなりません。
この問題を解決すべく、民法が改正され、「配偶者居住権」が新設されました。「配偶者居住権」とは、居住していた被相続人所有の建物を対象として、終身または一定期間、配偶者に建物の使用を認めることを内容とする法定の権利をいいます。
ポイントは、自宅についての権利を「負担付きの所有権」と「配偶者居住権」に分け、遺産分割の際などに、配偶者が「配偶者居住権」を取得し、配偶者以外の相続人が「負担付きの所有権」を取得できるようにしたものです。
上記のケースでは、例えば、妻は配偶者居住権1000万円を取得することにより、預貯金1500万円を取得します。一方、子どもは自宅に係る負担付所有権1000万円、預貯金1500万円を取得することが可能です。
これにより、妻は自宅に住み続けることができ、将来の生活費も確保できるようになります。
「配偶者居住権」を設定しなくても、生命保険を活用すれば、自宅と生活費の確保ができる
上記のケースで、子どもには預貯金のうち相続分(2分の1)に達するまでの金額を相続させ、妻が自宅と預貯金の残額を相続させる遺言を書きます。
これにより、妻は自宅2000万円と預貯金500万円を相続し、子どもは2500万円の預貯金を相続します。そうすると、妻は将来の生活費が不安になりますが、この不安を生命保険で解消します。
契約者(保険料負担者)および被保険者=被相続人(夫)、受取人=妻という契約形態で生命保険に加入し、妻は生命保険金で将来の生活費を確保します。
上記の契約形態の場合、生命保険金には非課税枠(500万円×法定相続人の数)が活用できます。この非課税枠の範囲内であれば、生命保険金をまるまる生活費として利用できます。
また、生命保険金は、民法上「相続財産」ではなく、受取人固有の財産ですので、原則、遺産分割の対象になりません。遺留分の計算基礎の対象にも原則なりません。
このように、「配偶者居住権」を設定しなくても、生命保険を活用すれば、自宅と生活費の確保ができます。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。
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