友人に「義父母の介護をしても、遺産相続できないよ」と言われたけれど、本当?
ファイナンシャルフィールド / 2019年10月26日 10時30分
高齢化の進展により、今後、実親だけでなく義理の父母の介護が必要になるケースが増えていくと思われます。実際に介護をしている人は、世話になった義理の父母に対してできる限りのことはしてあげたいという気持ちと、介護による肉体的、精神的負担の大きさの間で悩むことが多いのが現実です。 義父母の介護に対する貢献に対して、相続時に金銭的に報われることはあるのでしょうか。
寄与分対象者の見直し
以前から民法(相続法)においては「寄与分」の制度が定められていました。共同相続人の中に、被相続人の療養看護その他の方法により、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした人がいる場合は、その寄与分を相続分に加えることができます。
しかし、この寄与分はあくまで相続人が対象です。被相続人の長男の嫁など相続人以外の人が特別の寄与を行ったとしても、寄与分に相当する相続財産を取得することはできません。
嫁が義父母のために尽くしたとしても、遺言がない限り、金銭的に報われることはないのです。これについては公平感に欠けるといった意見が以前からありました。
このような声を背景として、相続法が改正され実質的な公平を図る規定が設けられました。2019年7月1日以降に開始した相続については、相続人以外の親族が被相続人の療養看護などで貢献した場合、一定の条件のもとで相続人に対して「特別寄与料」として、金銭の請求ができるようになっています。
「特別寄与料」を請求できる人は?
それでは、具体的にどのような人が特別寄与者として、特別寄与料を請求できるのでしょうか。改正後の相続法において定められている条件は以下のとおりです。
(1) 被相続人の親族であって、相続人以外であること
親族の範囲については民法で定められており、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族が親族にあたります。例えば、長男の嫁については1親等の姻族であり、相続人ではないため、この条件を満たしています。
なお、請求権者が親族に限定されているため、内縁の配偶者や親族にあたらない事実上の養子などは対象外となります。
(2) 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたこと
「療養看護」としては、どの程度の介護が必要かは個別の判断になりますが、例えば、本来は介護施設などへの入所が必要な状態であるのに、自宅において無償で介護したような場合などは、これに該当すると思われます。
簡単なお世話をした、お見舞いをしたといった場合は「療養看護」にあたりません。なお、「その他の労務提供」とは、例えば被相続人の事業に無償で従事していたような場合が想定されます。
(3) (2)の結果として被相続人の財産の維持または増加につながったこと
「療養看護」や「その他の労務提供」の結果として、被相続人の財産の維持または増加につながったことが必要です。
「特別寄与料」の金額の算定方法は?
それでは、特別寄与料の金額はどのように算定するのでしょうか。明確な算定基準は定められておらず、基本は当事者間で協議を行って決めることとされています。客観的な額の算定は難しいところですが、療養看護であれば以下の算式が参考になると考えられます。
第三者による介護の日当(介護報酬基準額)×療養介護日数×裁量割合(0.5~0.8程度)
もし、当事者間で協議が調わないとき、または協議ができないときは、家庭裁判所に対して、協議に代わる処分として審判の申立をすることができます。
ただし、特別寄与者が相続の開始および相続人を知ったときから6ヶ月を経過したとき、または相続開始から1年を経過したときは、この請求ができなくなりますので注意が必要です。
なお、特別寄与者は、算定した特別寄与料を相続人に対して請求することになります。相続人が複数いる場合、相続人は法定相続分に応じて特別寄与料を負担します。
例えば特別寄与料が100万円、相続人が子2人の場合は、各相続人は法定相続分の2分の1ずつ、つまり50万円ずつ特別寄与料を負担する格好になります。
まとめ
相続法の改正により、義父母の介護に対する金銭的請求について、法律的な根拠が与えられることとなりました。
一方で、遺産分割時には相続財産を期待する相続人との間での調整が必要になることには、留意しておく必要があります。できるだけ円滑に相続人との協議を進めるためにも、無償で療養看護を行ったという事実が分かる資料を整理して残しておくことが重要です。
執筆者:廣岡伸昌
ファイナンシャルプランナー(日本FP協会認定)
宅地建物取引士 ※試験合格
貸金業務取扱主任者 ※試験合格
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