判断能力がなくなると、生前対策はできない! 知っておいてほしい“相続対策”の大切さ

ファイナンシャルフィールド / 2019年10月29日 9時30分

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筆者は、前職から含めて通算20数年間「相談業務」を行っておりますが、「相続案件」は実に“ギリギリな”内容のご相談が多く、緊急案件が当たり前です。   まず、日本では『相続対策』というと、一部の富裕層のためにあるという思い違いがあるからでしょう。そして次に「自分が死んだ後のことは、残った人が考えればよい」という考えと、「死と向き合うのは怖い、嫌だ、不吉だ」という文化が根付いているからかもしれません。   それにしても、被相続人(相続財産を遺す人)と話し合いができない状態になってからの相談では、相談される側もできることが限られてしまうのです。  

判断能力がなくなると生前対策はできない!

たびたび話題になっていると思いますが、いまだに知らない人も多い問題点、それは被相続人(相続財産を遺す人)の判断能力がなくなると、相続対策ができなくなるという事実です。
 
本人の意思を明確にする「遺言書」や、財産の流れを細かく設定する「家族信託」(民事信託)の契約をするにも、本人の意思確認が必要です。意思疎通ができないと、書類の契約はできません。
 
また、預金通帳・保険証書・証券などの金融資産についても、動かすことができなくなります。年老いた親の銀行カードの暗証番号はご存じですか? ネット証券の暗証番号は分かっていますか? これらを知らずに、認知症になった親の財産管理ができなくなった方もいます。
 
さらに、「空き家問題」も深刻です。判断能力が亡くなった方の不動産は、売却も賃貸契約もできません。「認知症になった自分の親の財産を動かすだけなのに、そんなことあるのですか!」「親のお金に頼らないと、介護ができません」と驚かれるですが、それが決まりごとなのです。
 

親が再婚している場合は要注意

親が再婚の場合、これも注意が必要です。下記の図のケース、夫と元妻の間に子どもがいる場合は、その子どもにも相続権が発生します。
 

 
例えば、上記のケースにおいての相続割合は以下のようになります。
 
<相続割合>
妻 :2分の1
長女:6分の1
長男:6分の1
次男:6分の1
 
法律で定める「法定相続」ですと、妻と子どもの場合は、妻が2分の1、子どもが2分の1ですが、ここでいう「子ども」とは、前妻の子どもを含めた子どものことです。
 
子ども全員で、2分の1の財産を分けることになるので、6分の1ずつとなります。なので、父親の前妻との間に授かった子どもと、「長女」の相続割合は等しくなるのです。
 
※愛人や内縁の妻の子どもを「非嫡出子」(婚姻関係を結んでいない男女の間に生まれた子ども)と言いますが、認知されていれば相続権は実子と同じ割合になります。
 

相続人調査が必要です!

元妻との間の子どもと長年会っていない場合、どこに住んでいるかもわからないこともあるでしょう。多くの方はそのような場合は「仕方がないのでは」と認識されるかと思います。
 
しかし、この場合は、連絡先を調べなければなりません。理由は、相続が開始される際に、遺産についての話し合いをすることが義務付けられているのです。この話し合いのことを「遺産分割協議」と言います。
 
「遺産分割協議」では原則、
●相続人全員の参加
●相続人全員の合意

 
上記の条件がそろって、初めて「遺産分割協議」が成立したことになります。ですから、例え長年会っていなくても、前妻との間の子どもにも「出席」または「合意」してもらう必要があるのです。
 
では、どうやって調べればよいのでしょうか? 時代は「個人情報」に非常にシビアです。しかしご安心ください。相続のために連絡先を知りたい場合は、「戸籍謄本」と「戸籍の附票」(現住所がわかるもの)を取り寄せることが認められています。
 
自分で取得し連絡をすることは可能ですが、いきなり連絡をするのも気が引けると思います。やはりここは、専門家に依頼するのがベストでしょう。余計なストレスもなくなります。この場合の専門家は、弁護士か司法書士です。
 

生前に対策をしておくことがより大切です

しかし、長年会っていない子どもは、どのような人になっているかわかりません。ましてや、遺産により、遺された妻や長女を守らなくてはならない場合は、天国で安らかに眠れないでしょう。ここは、生前に遺言書を作成することをオススメします。
 
遺言書の内容は「法定相続分」よりも優先されます。お子さまの立場であったら、ご両親にお願いするのも得策です。また、相続放棄などをして欲しい場合は、弁護士に依頼し併せて交渉をしてもらいましょう。
 
筆者のような相続診断士が「相続対策はお早めに」というと、営業活動に聞こえてしまうかもしれません。しかし、ギリギリの対策、または間に合わず、困った家族の事例を知っているからこそ伝えるひと言です。
 
緊急案件で十分に対策ができなかった、自分や仲間の無念な思い。そんなことがなくなりますように、一人でも多くのご家庭が笑顔相続となれますように願っております。
 
執筆者:寺門美和子
ファイナンシャルプランナー、相続診断士

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