遺言書がない! 全員が納得する「遺産分割」をどう進めるか
ファイナンシャルフィールド / 2019年11月3日 11時30分
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親が突然亡くなった、相続人が多いのに遺言書が見つからない、といったケースはしばしばあります。 相続税の申告と納税の期限は10ヶ月以内と決まっており、相続人全員による遺産の分割方法に関する協議は進めなければなりません。その際に、どんな点に気をつければいいでしょうか?
分割内容に全員が納得できるか
遺産相続が発生した場合、遺産を相続する権利を持つ法定相続人で、誰がどのくらいの割合を相続するかを決める必要があります。相続人全員が合意すれば、分割の方法はかなり自由なのですが、争いを避けるために、通常は法律上の「法定相続分」に沿った分割・相続が主流です。
例えば、相続人が配偶者と子どもであれば、相続割合は、配偶者が全体に2分の1、子どもは何人いても遺産全体で2分の1です。
子どもだけなら、人数分の等分になります。遺産をどう分割・相続するかを、相続人全員が納得する必要があります。法定相続人のうち1人でも同意しない人がいると、解決には時間がかかります。
ところが、遺産の中身が単純には分割しにくい、家族関係が複雑(先妻と後妻がいる、認知した子がいる)、兄弟姉妹の仲が悪くあまり付き合いがない、といったケースでは、利害調整に手間がかかります。法定相続人同士が妥協点を探り、全員が同意した後に「遺産分割協議書」をつくり、始めて相続が実行できます。
遺産分割の具体的な方法
遺産分割の進め方にはいくつかの方法があります。それぞれの事情に応じて、分割方法を検討しながら、結果として相続人全員が納得する形で決着すればよいわけです。
<複数ある現物資産を配分>
不動産等の実物資産を各相続人が各々選択して相続する方法で「現物分割」といいます。例えば、遺産として、自宅、賃貸アパート、別荘の3つの実物資産と、2億円の金融資産があり、それを子ども3人で相続すると仮定します。
父親はすでに亡くなり、母親からの相続です。長男が最も高額な自宅を、弟と妹が賃貸アパートと別荘を別々に相続し、法定相続分に満たない2人が、長男よりも多くの金融資産を受け取ることで相続額を均等にすれば、法定相続に沿って相続を実現できます。
この方法は、それなりの不動産と金融資産を持っているケースでないと実行できないかもしれません。相続財産が限られると難しいかもしれません。
<多く相続する人は金銭を準備>
相続不動産が自宅だけで、金融資産も現金が1000万円程度、均等に分割することが難しいケースでは「代襲分割」という方法が取られます。親の遺産を2人の兄妹だけで相続するケースです。
兄が自宅を相続してしまうと、妹には金融資産の1000万円しか残りません。2人が同額分を相続できるためには、同額に満たない分を、兄から妹へ金銭で支払うことで解決する方法です。
今回の相続法の改正でも、遺留分の補償の際も原則金銭で、という方針が決まっています。限られた不動産等を他の相続人よりも多く相続する人は、その差額を補償するために金銭を準備する必要があります。
<全てを現金化して配分>
遺産をすべて売却して現金化、その換金分を分配し相続する方法で「換価分割」といいます。
前項で述べた自宅と金融資産を、2人の兄妹で相続するケースで考えると、まず親の住んでいた自宅を売却、それと金融資産を合わせた遺産額を、相続人が等分する方法です。相続人が親の家に住むことにこだわらなければ実行できます。
ただし、評価額どおりに売却できるかは、その土地の形状や社会環境によります。例えば、地方の不動産は簡単に売却できないケースもあります。
また、譲渡所得税などの税金も考慮する必要があります。さらに、父親が亡くなり母親がその住宅に居住を続けるケースでは、この方法は適用できません。とくに今回の相続法の改正で、配偶者居住権が権利として確立され、売却は難しいからです。
<相続人同士で共有する>
分割しにくい不動産などが多く、相続人の合意形成ができないときには、複数の相続人で「共有分割」という方法をとります。相続不動産が限られている、1人が相続するとほかの相続人の法定相続に見合った金銭を準備できない、といったときに用いられてきました。
相続人同士の意見がまとまらない場合に、とりあえず法定相続に応じて配分し「共有」名義にする方法です。最終解決は後回しにして、という形で採用されてきました。
この方法を選択すると、共有者全員の合意がないと財産を処分できない、共有が放置されたままで新たな相続人増えてしまう、誰か1人でも売却を希望した場合にトラブルになる、といった不合理な点が多く出てきます。新たな相続争いの火種にもなるため、この方法はなるべく避けたほうがいいといわれています。
遺産分割協議書を作成する
どういう形であれ相続人全員が合意すれば、遺産分割協議書を作成し、相続人全員が同じ内容の書面を所有しておく段取りになります。書面自体にとくに決められた書式はありません。書式も、手書きであってもパソコンを利用しても構いません。
また、税理士、司法書士など第三者の専門家に書類作成段階で入ってもらい、書類上の不備がないかをチェックしてもらいましょう。申告期限内に提出することも大切です。遺産分割協議書には、少なくても次の項目の記載が必要です。
(1)非相続人(死亡した人)の氏名、本籍地、現住所、死亡年月日
(2)相続人が遺産相続に合意した旨の文書
(3)相続財産の明細とそれぞれの相続人の氏名
(4)相続人全員の住所・氏名・非相続人との続柄
などを記載し全員が捺印します。その後何かトラブルが起こったときも、この遺産分割協議書の内容に沿って解決を図ります。
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
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