高等教育無償化の落とし穴。入学手続時納付金には間に合わないって本当?

ファイナンシャルフィールド / 2019年11月12日 10時15分

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2020年4月から低所得世帯を対象とした高等教育無償化が始まります。例えば、夫婦と子ども2人の家庭の場合、住民税が非課税となる世帯年収270万円未満では、給付型奨学金(返済不要)が最大約91万円(年額)支給されます。   同時に、私立大では、最大、入学金約26万円と授業料約70万円が免除されます。年収380万円未満までは住民税非課税世帯の金額の3分の1または3分の2の支援があります。しかし、いずれも、実際に利用できるのは入学後ですので、入学手続時納付金には間に合いません。  

学費の納付時期

入学手続時納付金は、合格発表後1~2週間以内を納付期限とする大学等が一般的です。私立の学校では、分割して支払う場合、「入学金+前期分」を支払うパターンが多いようです。
 
例えば、私大文科系の場合、初年度納付金(入学金・授業料・施設設備費)の平均は約115万円ですが、このうち入学手続時納付金として、約70万円必要です。理科系であれば、約100万円必要です。
 
保護者の中には、奨学金を高校で申し込んだので、入学金等を奨学金でまかなえると勘違いしている方もいらっしゃいます。
 
しかし、奨学金は、給付型も貸与型も入学後に毎月振り込まれますので、入学手続時納付金の納付期限には間に合いません。また、「授業料等の減免」も入学後に手続をすることになりますので、入学前には利用できません。
 
入学前の納入金は自力で準備する必要があります。学資保険や貯蓄等で不足する場合には、「国の教育ローン」など入学前に利用できる貸付制度でまかないましょう。
 
なお、進学先の大学等が、経済的に困難な学生等の入学金や授業料について納付期限の猶予に応じる場合がありますので、まずは猶予制度があるかご確認ください(国立大学等で納付期限の猶予を行っている例は多数あります)。
 
猶予してもらえず、入学前に入学金等を支払った場合は、入学後に減免が確定した際に、還付を受けることが想定されています。
 

「国の教育ローン」をまずは検討しましょう

入学金等の不足分は、教育ローンでまかなうのが一般的です。奨学金は、入学後に振り込まれますので、入学前に必要なお金には間に合いません。
 
教育ローンには銀行等の教育ローンと日本政策金融公庫の「国の教育ローン」がありますが、まずは、金利等で有利な条件で利用できる「国の教育ローン」を検討しましょう。
 
融資限度額は生徒・学生1人あたり350万円(留学資金450万円)、返済期間15年以内、固定金利年1.71%(令和元年5月・保証料別)となっています。
 
ひとり親家庭等には、家庭の状況に応じた金利・返済期間・保証料の優遇があります。受験前も申込可能です。必要時期の2~3ヶ月前が申し込みの目安となります。申し込みから20日程度で入金されます。融資決定後のキャンセルもできますので、早めに申し込みましょう。
 
返済は元利均等返済のほか、在学期間中は、元金を据え置いて利息のみの支払いができます(元金据置)。その他詳細は「国の教育ローン」のホームぺージでご確認ください。
 

条件が合えば無利子の貸付制度も利用できます

「国の教育ローン」に比べ利用できる方が限定されますが、母子父子寡婦福祉資金貸付金制度、生活福祉資金貸付制度、自治体独自の入学一時金貸付制度は無利子で利用できます。ただし、他の貸付制度と併用できないなど条件がある場合があります。

・母子父子寡婦福祉資金貸付金制度

ひとり親向けの無利子貸付金制度です。母子家庭や父子家庭のひとり親等で、20歳未満の子ども等を扶養している場合が対象です。無利子で就学支度資金や修学資金を借りられます。
 
就学支度資金とは:入学金、制服代など、大学等の入学の際に必要な資金
修学資金とは:授業料、施設費用、通学費、教科書代など、修学するのに必要な資金
 
借入限度額は私立大学・短大等の場合、
就学支度資金=59万円
修学資金=私大の自宅外通学の場合で月額9.6万円
 
日本学生支援機構の奨学金を借りる場合、奨学金の貸与の月額と修学資金(母子節寡婦福祉資金)の貸付限度額との差額を限度として、貸付を受けることができる場合があります。20年以内に貸付金の償還を行う必要があります。
 
親が貸与を受ける場合、連帯保証人は原則不要ですが、子どもが連帯借受人となります。子どもが貸与を受ける場合、親等を連帯保証人とします。
 
ただし、自治体により内容が異なる場合もあります。借入を行う際は条件をよく確認してください。詳細は、お近くの市区町村(福祉担当窓口)におたずねください。申請から融資まで通常で1ヶ月以上かかりますので、早めに相談しましょう。

・生活福祉資金貸付制度

「教育支援資金」(生活福祉資金貸付制度)は、低所得世帯を対象とした無利子貸付制度です。福祉事務所が生活保護世帯に借入の必要性を認めた際に利用できます。
 
ただし、公的な貸付制度である母子父子寡婦福祉資金や日本学生支援機構の第一種奨学金などが優先されます。以上のような制度が利用できる方は「教育支援資金」の制度を使えません。
 
「教育支援資金」には2種類の貸付があります。
(1)教育支援費(授業料などに必要な資金)
(2)就学支度費(入学金)
です。
 
借入限度額は、大学の場合、教育支援費(月額)は9万7500円、就学支度費は50万円。最長で20年という期間で、返済する必要があります。
 
連帯保証人は原則不要です。借受人は原則として「資金使用者(修学者等)」となります。ただし、社会福祉協議会によっては内容と異なる場合もありますので、担当窓口に確認してください。また、申請から融資まで通常1ヶ月以上かかります。お早めにおたずねください。

・自治体独自の入学一時金貸付制度

市区町村では、大学等に入学する際の費用の負担を軽減する目的で、無利子の一時金貸付を実施していることがあります。地域に住んでいる人が対象となります。
 
<岡山市の場合>
貸付金額=大学・短期大学・高等専門学校・専修学校(専修課程)は、国公立で11万円、私立で13万円
 
<宇都宮市の場合>
貸付金額=大学・短期大学・専修学校(専修課程)は、国公立で20万円以内、私立で50万円以内
 

入学時必要資金融資

最後に労働金庫(ろうきん)の「入学時必要資金融資」をご案内します。
 
対象となるのは、日本学生支援機構の「入学時特別増額貸与奨学金」の採用候補者です。予約時に申し込める金額は10万円から50万円まで。つなぎ融資の相談には、労働金庫(ろうきん)が対応してくれます。利率は年1.76%(固定金利・平成30年9月)など低利です。
 
進学先には本人名義で労働金庫の融資金が振り込まれますので、奨学金の振込口座として、労働金庫に口座を作る必要があります。これは、労働金庫側が貸付金の回収も容易に行えるという理由もあります。
 
「入学時特別増額貸与奨学金」は、日本政策金融公庫の「国の教育ローン」が低所得等を理由に利用できない人に向けた貸付制度となります。
 
ただし、労働金庫へ申し込みをする前に、採用候補者決定通知書を確認してください。「国の教育ローンの申込必要」と記されている場合は、「国の教育ローン」の手続を先に済ませなくてはなりません。なぜなら、「入学時特別増額貸与奨学金」は「国の教育ローン」を利用できる人は使えないからです。
 
採用候補者には、12月下旬に決定通知書を交付予定です(2019年度)。つまり、推薦入試やAO入試の入学金等には間に合わないことが多いので留意しましょう。
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー

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